「お忙しい中」という表現は、特にビジネスシーンでは多用される言葉ですが、正しい意味や適切な使用シーンを理解しているか自信がないという人も多いでしょう。
そこで「お忙しい中」という言葉の意味や正しい使い方を、例文とともに解説します。言い換えや英語表現も併せてご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
「お忙しい中」の意味とは
「お忙しい中」はビジネスシーンで多く使われますが、あまりにも頻繁に使われているので意味を深く考えたことがないという方も多いでしょう。ここでは「お忙しい中」の意味やどのような言葉なのかをご紹介します。
「お忙しい中」の意味は「忙しい最中」
「お忙しい中」の直接的な意味は「忙しい最中」です。「中」は「ある状態が続いている、進行している最中」という意味があります。ビジネスシーンで使われる場合は、相手への気遣いを表したり、角を立てないようクッションとしての意味合いがあったりします。実際に相手が忙しいかどうかは関係なく、社交辞令的に使われるケースも少なくありません。
「ありがとう」の気持ちを伝える際に使う
「お忙しい中」の使われ方は大きく分けて2種類です。1つ目が相手に対して感謝やお礼を伝える使い方。「お忙しい中ありがとうございます」といった形で、相手が時間を割いてくれたことや労力を費やしてくれたことに対して、感謝の気持ちを強調することができます。
依頼する際に使える表現
2つ目が依頼する際に使う形です。「お忙しい中申し訳ありませんが、○○の件についてご確認いただけますでしょうか」といった形で使われます。
ビジネスシーンで何かを依頼する際には相手への気遣いが不可欠です。また、シーンによってはいきなり本題に入ることが失礼にあたることもあります。そこで「お忙しい中」といった言葉でワンクッション入れるのです。
「お忙しい中」の類語・言い換え表現
「お忙しい中」は、さまざまなシーンで使える便利な言葉です。しかし、類語や言い換え表現も使いこなせれば、さらにコミュニケーションの幅を広げることができるでしょう。
お忙しいところ
「お忙しい中」に近い言葉として「お忙しいところ」というものが挙げられます。「中」を「ところ」に言い換えていますが、ほぼ同じ意味で使うことができます。
ご多忙の中
「ご多忙の中」は「お忙しい中」とほぼ同じ意味ですが、比較するとより形式的で丁寧な印象を与えるため、かしこまったシーンや、手紙・メールなどでも使いやすい言葉です。
ご多用の中
「ご多用の中」も「お忙しい中」とほぼ同じ意味を持ちます。「多用」は「多く使用すること」の他に、「用事の多いこと、つまり忙しいこと」を意味します。「ご多忙」と同じく、「お忙しい中」と比べるとよりかしこまった印象があるでしょう。
「お忙しい中」の使い方の注意点
「お忙しい中」はビジネスシーンをはじめとして、さまざまなシーンで使える便利な言葉の一つです。ただし使用する際にはいくつかの注意点があります。ここからは「お忙しい中」を使う際の注意点をピックアップしてご紹介します。
口頭でも、メールや手紙でも使える
「お忙しい中」は対面での会話や電話などの話し言葉としても、メールや手紙などの書き言葉としても、両方で使用できます。書き言葉は話し言葉よりもさらにかしこまった言葉が好まれるため、類語である「ご多忙の中」や「ご多用の中」もよく使われますが、「お忙しい中」でも十分に丁寧な印象があるでしょう。
相手に対して失礼になるケースも
先ほど、実際に忙しいかどうかは関係なく、社交辞令的に使える表現であるとご紹介しました。しかし、明らかに相手が暇で、時間を持て余しているという状況である場合には、「お忙しい中」という言葉を使うと嫌みだと取られてしまう可能性があります。病気などで療養中の人や、仕事を退職したばかりの人などに使うのも避けた方が無難でしょう。
さまざまなシーンで使える表現ではありますが、相手に対して失礼にあたったり、不快にさせてしまったりする場合もあるという点は頭に入れておくといいですね。目に見えて相手が暇な状況である場合は、別の言葉に言い換えた方が無難です。
冠婚葬祭では避けることも
「お忙しい中」という言葉は式典のスピーチなどで使われることもあります。しかし、冠婚葬祭では、この言葉を用いることを好まない人もいるので注意が必要です。
理由は、「お忙しい中」という表現そのものではなく、「忙」という字が「心を亡くす」と書くことから、縁起が悪いとする説です。明確なマナーとして決まっているわけではないのですが、そのように考える人も一定数いるため、「お忙しい中」や、「お忙しいところ」といった表現は冠婚葬祭において避けた方が無難です。同じ意味の「ご多用の中」などに言い換えるといいでしょう。
「お忙しい中」の例文
「お忙しい中」の意味はわかっても、具体的な使い方がわからないという人もいるでしょう。ここでは「お忙しい中」の例文をご紹介します。
感謝の気持ちを伝える場合の例文
・お忙しい中ご対応いただきありがとうございました
・お忙しい中にもかかわらず早速ご返信いただき、ありがとうございます
・本日は、お忙しい中お時間をいただきありがとうございます
・お忙しい中わざわざご連絡いただき、感謝申し上げます
依頼する場合の例文
・お忙しい中恐縮ですが、少しお時間いただけませんでしょうか
・お忙しい中恐れ入りますが、書類をチェックしていだけませんでしょうか
・お忙しい中申し訳ありませんが、アンケートに回答していただけませんでしょうか
・お忙しい中すみませんが、確認をお願いできますか
文末は、「~してください」などの命令形ではなく、伺いを立てるという形にするとより丁寧な印象です。なお、「すみません」は、「申し訳ありません」や「恐縮です」「恐れ入ります」よりも砕けた表現なので、同僚や部下などに使うのは問題ありませんが、目上の人への使用は控えた方が無難でしょう。
謝罪の気持ちを伝える場合の例文
・お忙しい中ご迷惑をお掛けし申し訳ありません
・お忙しい中お手数をお掛けしてすみません
・お忙しい中お手間を取らせてしまい申し訳ありませんでした
ミスをしてフォローしてもらった、自分のせいで迷惑を掛けてしまったことなどへの謝罪の文章でも使用することができます。
「お忙しい中」の英語表現
近年では業界を問わずグローバル化が進んでいることもあって、ビジネスシーンでは英語でのコミュニケーションを求められることもあるでしょう。そこで、「お忙しい中」の英語表現をご紹介します。
while you are busy
「busy」は「忙しい」の意味で、「while」は「~の間、最中」という意味です。例えば「Thank you for coming today while you are busy.(今日はお忙しい中来てくれてありがとうございます)」といった形で使用できます。
I know you are busy, but~
「I know you are busy」を直訳すると「あなたが忙しいことを知っています」となり、「お忙しい中」と同じようにクッション言葉として使用できます。「だが、しかし」を意味する「but」の後に続けて、依頼の文章を続けましょう。
I’m sorry to bother you, but~
「bother」は直訳すると「迷惑を掛ける」という意味です。謝罪を表す「sorry」とともに「I’m sorry to bother you」とすると、「忙しいのに邪魔してすみません」「お忙しい中ご迷惑をお掛けし申し訳ありません」といったニュアンスになります。こちらも「but」の後に続けて、依頼の文章を続けましょう。
I apologize for bothering you, but~
こちらも「apologize」という謝罪の言葉を組み合わせたもので、「お忙しい中ご迷惑をお掛けし申し訳ありません」といった意味です。依頼の文章のクッション言葉として使用できます。
「お忙しい中」は「ありがとう」や「すみません」、依頼文とともに使う言葉
「お忙しい中」は特にビジネスシーンにおいて日常的に使われている言葉です。主に相手への感謝の気持ちを伝える際や、何かを依頼する際のクッション言葉として使われます。
ただし、使い方を誤ると場面によっては失礼にあたるケースもあるので、本記事を参考に適切に使えるようになりましょう。