「万事休す」という言葉の意味をご存知でしょうか。見聞きしたことがあっても、意味はよくわからないという方も少なくないはず。
この記事では、「万事休す」の意味や由来、例文などについて解説します。日常会話での表現の幅を広げられるよう、「万事休す」をぜひマスターしてみてくださいね。
「万事休す」の意味・由来
「万事休す」の読み方は「ばんじきゅうす」です。実際にビジネスシーンで使う機会は多くはないですが、見たり聞いたりしたことがある方も多いでしょう。
ここでは、「万事休す」の意味とその由来について解説します。
「万事休す」の意味
「万事休す」は、「もう手の施しようがなく何もできない状態」「万策尽きて、何をしてもだめだという状態」を表す言葉です。「万事」は「すべてのこと・全部」、「休す」は「終わりになる」という意味があり、その2語をあわせて「何もできなくなった状態・万策尽きた状態」を表しています。
「万事」とあるように、できることをすべてし尽くした上で何も打つ手がない状態を表しており、絶望や諦めといった心情が含まれています。
また、「万事窮す」と表記するのは誤りとなるため注意しましょう。
「万事休す」の由来
「万事休す」は、中国の『宋史』という歴史書の中の故事が由来だといわれています。
900年代に荊南(けいなん)という国で王に溺愛されていた王子は、人から怒られて睨まれても笑顔でいたそうで、王子の様子を見た人々が呆れて「万事休すだ」と言ったことが、現在でも使われる「万事休す」の由来とされています。
「万事休す」の誤用
「万事休す」を「万事窮す」と表記する方は多いですが、これは誤用です。
「窮する」は「行き詰まってどうにもできなくなる」「金銭や物が底をついて苦しむ」という意味なので、「万事窮す」と誤用されてしまいがちです。しかし、「万事休す」は「施しようがなく、すべて終わりである」という意味なので、「休止する・おしまいになる・後が続かなくなる」という意味の「休す」を使用します。
「万事休す」の例文と使い方
「万事休す」は中国の『宋史』の中の一節から生まれた古い言葉ですが、現代でも使われている言葉です。ここでは、「万事休す」を使った例文を3つご紹介します。
ここまできたらもう万事休すだ
例えばスポーツの試合で、残り時間数秒で相手に大差をつけられているときは、勝てる見込みもなくなり「万事休す」状態だといえます。
万事休すと言って諦めるのはまだ早い
本人はもう打つ手がないと諦めていても、第三者から見るとまだ可能性は残っていると思える状況で、励ます際に使用できる例文です。
万事休すかと思っていたが、まだ打つ手が残っていた
諦めるしかないと思っていたところで、可能性が残っていたことに気づいたという意味の例文です。
「万事休す」の類義語・言い換え表現
「万事休す」の類義語としては、「お手上げ」や「万策尽きる」、「事ここに至る」などが挙げられます。それぞれがどのような意味を持つのかを解説します。
お手上げ
「お手上げ」は「もうこれ以上どうしようもなくなること」を意味する言葉です。降参するときに両手を上げてポーズを取ることから誕生した言葉だといわれています。
「万事休す」と同じように、「行き詰まってどうしようもなくなる状態」を表しています。「万事休す」に比べると、「お手上げ」の方が日常的によく使われるため、馴染みのある人も多いでしょう。
万策尽きる
「万策尽きる」は「ばんさくつきる」と読み、「あらゆる方法を試したが解決せず、これ以上打つ手がなくなった状態」を表す言葉です。「万策」は「あらゆる手法や手段」を表しており、それが尽きてしまう、なくなってしまうことを意味しています。「できることがない状態」という意味では、「万事休す」と同義であるといえるでしょう。
事ここに至る
「事ここに至る」の読み方は「ことここにいたる」で、すべてが完了しどうにも変更しようのない状態になることを表す言葉です。「事ここに及ぶ」もほぼ同じ意味で使われます。
「変更のきかない、何も変えることができない状態にあること」を表している点で、「万事休す」の類義語であるといえるでしょう。「この期(ご)に及んでは」とも少し似たニュアンスのある言葉ですね。
「万事休す」の対義語
「万事休す」の対義語には、「起死回生(きしかいせい)」「虎口(ここう)を脱する」「可能性がある」などがあります。それぞれの意味を見ていきましょう。
起死回生
「起死回生」は「きしかいせい」と読み、「終わりかけているものや絶望的な状態を立ち直らせること」という意味を持つ四字熟語です。回復する見込みのない状態のものを再起させることを表し、「万事休す」のようになす術がない状態とは逆の意味を持っています。
しかし、「起死回生」も、危険な状態である段階では「万事休す」と同じ状態にあるといえます。「起死回生」は、「万事休す」の状態のように絶望的な場面で何らかの発想の転換やアイデアなどで再起することを意味しています。
虎口を脱する
「虎口を脱する」の読み方は「ここうをだっする」で、「危機的な状態から抜け出す」という意味があります。「虎口」は虎の口から転じ、「非常に危険な場所・状態」を意味しています。
危機的な場所や状態から脱するという点で、「起死回生」とほぼ同義であるといえるでしょう。
可能性がある
「可能性がある」は、文字通り「何かしら見込みがある」ということを表した言葉です。まだ手の施しようがある、もしくは巻き返せる余地がある状態だと考えると、「万事休す」とは反対の意味だと考えられるでしょう。
ビジネスシーンだけでなく日常会話でも使われる表現なので、対義語としては最も使いやすい言葉であるといえます。
「万事休す」の英語表現
「万事休す」を英訳する際は、「すべてが終わった」ということを表す英文にすることが適当です。下記の英文で「万事休す」を表すことができます。
・All is up
・All is lost
・All hope is gone
「万事休す」の意味を理解し正しく使おう
「万事休す」は、「もうそれ以上はできることがない状態」「すべてが終わりになり、何をやってもだめな状態」を表した言葉です。言葉の意味や由来、類義語・対義語、例文、英語表現などを通して「万事休す」を理解できたでしょうか?
現代でも使われる表現なので、意味や由来などもぜひ覚えておいてくださいね。