三谷氏が大河ドラマを描くのは『新選組!』(04)、『真田丸』(16)に続いて3本目となったが、歴史における勝者を主人公としたのは『鎌倉殿の13人』が初となった。頼朝亡きあと、最終的に勝者となる北条義時はこれからどう変化していくのだろうか。

「主人公やその周辺の人たち、特に義時や政子など1年間通して出てくる登場人物は、あまり長期展望みたいなものは立てずに書いていくんです。だから、先読みしないで、その時々で彼らが何を考えているのか、何か事件が起こったら、その時に彼らがどう対応していくかを考えながら書いていきます。もちろん、義経など短期間だけ出てくる人たちはまた別の話ですが。義経は登場シーンから含めて全部プランを立てて書きましたが、長期間にわたる人物はあまり立てません。そうじゃないと、彼らの人生の最後から逆算して描かないといけなくなってしまうので」

それは、三谷氏がドラマを生ものとして捉えているからのようで、三谷自身も登場人物たちと共に旅をしていくらしい。

「義時に関しても、決してブラックにしよう、ダークサイドに落とそうと思って書いてるわけじゃなくて、徐々に徐々にそうなっていってるだけなんです。つまり、僕も義時と同じ人生をたどっていくわけで、そうすると次第にそっちに行ってしまう感じです。だから、25回の義時が、ホワイトとブラックのどのへんにいるのかは、僕にもわかってないですし、このあとどうなっていくのかも実はわかってないです。それはもう、この後、義時と僕と、演じている小栗さんとで見つけていく感じです」

■三谷幸喜
1961年7月8日生まれ、東京都出身の脚本家。1983年に劇団東京サンシャインボーイズを結成し、多くの舞台を手掛ける。1993年に『振り返れば奴がいる』で連続テレビドラマの脚本家としてデビュー。1994年にドラマ『古畑任三郎』シリーズで人気脚本家としての地位を確立。1997年には映画『ラヂオの時間』で映画監督デビューし、『THE 有頂天ホテル』(06)、『ザ・マジックアワー』(08)、『ステキな金縛り』(11)などを手掛けていく。映画監督作の近作は『記憶にございません!』(19)。大河ドラマの脚本は『新選組!』(04)、『真田丸』(16)に続き3本目となる。また、大河ドラマ『功名が辻』(06)、『いだてん~東京オリムピック噺~』(19)には役者として出演した。

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