• ABEMAスポーツエンタメ局 北野雄司エグゼクティブ・プロデューサー

今回の成功を受けて、今後のABEMAの格闘技チャンネルの展望を聞くと、「今回は立ち技格闘技ですが、我々は総合格闘技もプロレスも、さらに最近はボクシングの中継回数も増やしているので、より広範なジャンルで魅力をお伝えしていきたいです」と意欲。

また、PPVというビジネスモデルでエポックメイキングな事例を作ることができたが、「個人的にはPPVがいくら成功しても、無料の生中継のほうがずっと数が多くなければいけないと思っています。無料で多くの人に見てもらうことによって、スターができるわけじゃないですか。料理でも、煮詰めすぎるとしょっぱくなってしまうので、時々水を足す必要があるように、ずっとPPVの中でコンテンツを提供し続けるとお客さんは徐々に減っていくと思います。なので大切なのは、たくさん無料の生中継もすること。いきなり『AさんとBさんが試合するんで、PPV買ってください』と言われて買うお客さんはいなくて、今回も、那須川天心選手と武尊選手の試合をこれまで多くの人が見てきて、影響を持つスターになって、長年のストーリーを皆さんが知っているから実現したと思うので、PPVについては機会に恵まれたり、ビジネス上から選択する必要があるときにやりたいと思います」と、“裾野”を広げていくことの重要性を強調した。

今後も『RISE』や『K-1』の無料生中継が控えており、「今回PPVが成功したことで、改めて無料のほうをもっと頑張らなければいけないと思いました。“お祭り”に来てくれる人が増えるように、いろいろやっていきたいですね」と気を引き締める。

格闘技と言えば大みそかというイメージがあるが、「まだどことも個別の話は進んでいないのですが、我々は毎年1月1日にプロレスの生中継をやっているので、12月31日も格闘技・プロレス・ボクシング、どれかで生中継をして忙しくしたいという思いは前々からあります」と言及。

さらに、PPVのビジネス展開は海外向けにもチャンスがあると捉えており、「今回の『THE MATCH 2022』に対し、個人的にも海外からすごく問い合わせがあったんです。今、アジアでは韓国のコンテンツが強いですが、日本から格闘コンテンツを発信していきたい。格闘技において、プロモーションや映像表現で感情移入を誘うコンテンツを作るクリエイティブは、日本はアメリカとナンバーワンを争っているレベルだと思うので、来年くらいには海外に向けての実績でも数字を出したいですね」と意気込みを示した。

■格闘技とスマホ視聴の親和性「今後も伸びていく」

2016年4月にABEMAが開局するにあたってテレビ朝日から出向し、格闘チャンネルに立ち上げから携わる北野氏。当初はスポーツ全般を担当していたが、スマホ視聴との親和性を感じ、格闘技に注力する方向に舵を切った。

「格闘技は2人が向き合って戦っているのが分かるし、顔が見えるから感情が伝わりやすいんです。そういうコンテンツが圧倒的にスマートフォンに向いていると思って、格闘技、プロレス、ボクシングは絶対に相性がいいと思いました」

まだ伸びしろは「めちゃめちゃあると思います」と断言。「チーム制のスポーツと違って、1人の影響力のある人がSNSなどで話題になれば一気にスターになれるので、インターネットの時代においてはスターが生まれやすいジャンルだと思います。この5年で那須川天心選手や武尊選手、朝倉未来選手と、こんなにたくさんのスターが生まれたジャンルはスポーツにおいて他にないと思いますし、今回はビジネスインパクトも大きく出せるという証明ができたので、今後もさらに伸びていくと思います」と期待を述べている。