「揚げ直し名人」という調理家電がじわじわ売れているらしい。これまでにもペヤング専用のホットプレートや、宅飲みが居酒屋気分になる「せんべろメーカー」など、ユニークな着想でときおりネットをざわつかせてきた大阪の家電メーカー、ライソンが手がけている。
「揚げ直し」と名乗っているが、ノンフライヤーだ。買ってきた惣菜や冷凍食品の揚げ物を、200度の熱風で、まるで“揚げたて”のように調理するという。べっちょり・くったり残念な状態になってしまった揚げ物も、厨房でジュワッと揚がったばかりのおいしさに蘇るってこと? メーカーさんに実機をお借りして、いろいろと揚げ直してみた。
まずは王道の揚げ物惣菜を揚げ直してみよう
名人とのファーストコンタクトは、王道の揚げ物がいいだろう。スーパーの惣菜コーナーを見回し、メンチカツ、唐揚げ、磯部揚げ、春巻き、海老の天ぷら、カレーパンなど、目についた揚げ物をかたっぱしから買ってきた。全体的に画面が茶色いが、揚げ物なのでオーライだ。
引き出し型のバスケットに最初の揚げ惣菜たちを入れて、調理時間と調理温度をダイヤルで設定。ブオオオオオンと音を立てて、名人が“揚げ直し”始めた。
チン! というシンプルな軽快音が、調理完了の合図だ。どれどれ……。見た感じ、衣はカリッ・サクッ・パリッ。だがビフォーとアフターの見た目にそれほど違いはない。
香ばしい匂いが漂う中、ひとつずつ取り出していく。海老の天ぷらは……あ、軽くなった気がする。箸から伝わる感触から、さっきはあったべちょ・クタ感が消えている。衣の状態はどうかというと……
海老天は、サクッ。
メンチカツは、ザクッと快音。ちなみにどれも、ものすごく熱々だ。
それでは、メンチカツをいただきまーす。熱っつ!! サクッと揚がった衣に対して、中の具はジューシーで……うん、おいしい。余分な油が抜け、カラリと香ばしくなった衣とメンチの肉感が口の中で交じり合って、うんうん、これだよ!! という感じ。ハフハフッと口から熱さを逃がしながら、ムシャッ、ジャキッと咀嚼する。
これ、揚げたての状態が100%だとして、限りなくその100%に近づいたんじゃないかな。
こちらが第1陣を調理済みのラック。油がかなり落ちていた。揚げ直し名人、やるなあ。この調子で、どんどん揚げ直してみよう。
ファーストフードの定番メニューでは?
よく利用するファーストフードの定番メニューではどうだろう。コロナ禍でテイクアウトやデリバリーの回数が増えて、店で食べる本来の実力からは、数段落ちた状態で頂いている昨今だ。
お店でテイクアウトしてから2時間ほど経った状態のものを試してみる。
ビフォーなのかアフターなのか、写真では伝わりにくいが、こちらはアフター。まるで揚げ物店の軒先にいるような香りに包まれているところだ。
では、アップルパイから。パイ生地は、アチッ、うーん、サックサクだ。トロトロにとろみを増したアップルに、あのシナモン特有の香りも引き立って、うんま~~~!! すぐにふたくち目にかぶりつきたくなるが、熱々なので、猫舌の人はフウフウしながらかかって欲しい。
ナゲットは、チキンのジューシーさを保ちつつ表面のカリカリ感がマシマシに増して、正直、店で食べる以上の味わいだ(*個人の感想です)。
ちなみに、楽しみにしていたポテトはやや硬めの仕上がり。調理時間が長すぎたのかもしれない。中身の容量に対するベストな時間を把握すれば解決するだろう。
おやつのクッキー、おかき類はどうだろう?
今までのところ、ほぼ期待値を越えてきた名人。最後に、定番おやつを試してみる。実機を貸してくれたメーカーの担当さんが、「ほぼ“窯出し”になります」と推していたカントリーマアムのほか、歌舞伎揚げ、それから封を切って数日後のポテチなども投入してみる。
結果はというと、楽しみにしていたカントリーマアムはホクホク&ジューシー、推した理由もわかるというものだ。
湿気たポテチはパリパリの揚げたて状態にリセットされ、塩の旨みがいっそう引き立つ仕上がり。油から揚がったばかりのチップスに塩をふって食べたら、こんな感じなのかもなあ。
歌舞伎揚げにいたっては、焦げ目がついて焼き上げ過ぎたかと思いきや、熱風調理で油が飛んだ分軽さが増し、甘じょっぱさは一段と濃くなってメチャ旨い。これ、食べる手が止まらなくなるやつ!!
全編を通して茶色一色となったが、時間が経った惣菜やファーストフード、スナック類が、名人によっておいしく再生される結果となった。
レンジやトースターでは、この“揚げたて”食感は出せないだろう。もとの状態から余分な油を落としてヘルシーに仕上がるのも、揚げ物好きにはありがたい。タコパならぬ「揚げパ」で、家飲みを楽しむのもよさそうだ。