日常生活において、見聞きする機会がある「身から出た錆」という言葉。なんとなくニュアンスは知っているものの、正確な意味や使い方などを理解できていない人もいるのではないでしょうか?
本記事では、「身から出た錆」の意味や語源、使い方などを例文つきで解説。また、類語や英語表現についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「身から出た錆」とは
「身から出た錆」の意味
「身から出た錆(みからでたさび)」とは、「自分の悪行の結果として自分自身が苦しむこと」を意味する言葉です。
日常会話では、災いが降りかかり苦しむのも、本をただせば本人に責任があることを示しており、「報いを受けるのは仕方ない」というニュアンスで使用されることが多いです。
「身から出た錆」の由来・語源
自分に責任があることを、なぜ「身から出た錆」と表現するようになったのでしょうか。
この言葉は、刀身の手入れをする様子から生まれたといわれています。刀に付着した錆は表面にあるものなら砥石で研いで落とせますが、手入れを怠り深いところから生じたものであれば対処することができず、刀身から生まれた錆が刀身自体を腐られて取り返しのつかない状態にしてしまいます。
そのことから転じ、刀身を自分自身にたとえて自分が犯した罪によって自分が苦しむことを「身から出た錆」で表すようになりました。
「身から出た錆」の使い方と例文
「身から出た錆」はきつい表現であるため、それなりの根拠があって批判する場面などで使われることが多いです。
誰かを戒める時や自分を省みる時などに使用されます。それぞれの場面で適切に使用するためにも、例文を確認しておきましょう。
誰かを戒める時に使う場合の例文
残業が終わらないと嘆いているが就業時間内にサボっていたのだから、身から出た錆だと反省して自分でなんとかするべきだ
それだけ毎日遊んでいれば、大学受験に失敗するのは予測できただろう。まさに身から出た錆だ
自分を省みる時に使う場合の例文
結果が伴わなかったことは悔しいが、よくよく考えると身から出た錆だと思う
最近仕事に集中できておらず、ミスが続いてしまった。上司からの評価が悪いのは身から出た錆だろう
身から出た錆には違いないが、自分の実力ではどうすることもできなかった
「身から出た錆」の類語(似た意味のことわざ)
「身から出た錆」には、状況や場面によって言い換えをすることができる類語がいくつかあります。
知っておくと日常生活などで役に立つ場合が多いため、代表的なものを確認しておきましょう。
(1)自業自得
「自業自得」は、「自分の行いの報いが自分に降りかかってくること」を意味する言葉です。
なお、本来は良い行いに対しても使われていた言葉ですが、今日では主に悪い行いをした時に使用される表現となっています。
(2)因果応報(いんがおうほう)
「過去や前世での行いなどに応じて、それ相応の報いがある」という意味の「因果応報(いんがおうほう)」。
仏教用語の一つで、いい行いをすればいい報いが、悪い行いをすれば悪い報いがあることを示す言葉です。
現代では、主に悪い行いをすると巡り巡って同じような仕打ちを受けるという意味で使われており、「身から出た錆」の類語となるでしょう。
(3)自縄自縛(じじょうじばく)
「自縄自縛(じじょうじばく)」は、「自分の心がけや言動によって身動きがとれなくなり苦しむこと」を意味しています。
「自縄自縛に陥る」や「まさに自縄自縛だ」のように使います。
(4)仇も情けも我が身より出る
「仇も情けも我が身より出る」は、「人から憎まれたり愛情を示されたりするのは、自分の気持ちが反映したものである」という意味の言葉です。
自分の心がけや行い次第で人にどう思われるかが変わることを示しており、文脈によっては「身から出た錆」の言い換え表現として使用できます。
「仇」だけでなく「情け」も加わっている分、「身から出た錆」よりも広義に解釈できます。
(5)悪因悪果(あくいんあっか)
悪い行いには必ず悪い結果や報いがあることを意味する「悪因悪果(あくいんあっか)」という四字熟語。
元々は仏教の言葉で、自分の悪事が原因で悪い結果を招くことを表しており、「身から出た錆」の言い換え表現として使いやすいでしょう。
(6)平家を滅ぼすは平家
「平家を滅ぼすは平家」も、「身から出た錆」や「自業自得」などの類語として知られている表現です。
「平家」とは平安時代末期に政権をにぎった「平清盛」の一族で、地位や財力を持っていたものの、自らの悪行と傲慢さの果てに滅亡してしまいました。
要するに「自分を滅ぼすものは自分自身」ということを意味しており、「身から出た錆」の言い換え表現として使用できます。
関連した表現に「驕る(おごる)平家は久しからず」(おごり高ぶる者はその身を長く保てない)もあるので、あわせて覚えておくといいでしょう。
「身から出た錆」と「自業自得」「因果応報」との違い
「身から出た錆」と同じようなニュアンスで使用されることわざとして、「自業自得」「因果応報」が挙げられます。それぞれの意味は下記の通りです。
身から出た錆
意味:自分の悪行の結果として自分自身が苦しむこと自業自得
意味:自分の行いの報いが自分に降りかかってくること因果応報
意味:過去や前世での行いなどに応じて、それ相応の報いがある
それぞれ意味に多少の違いはありますが、使い方の大きな違いとしては、「身から出た錆」は悪い行いのみが対象になり、「自業自得」「因果応報」は悪い行いだけでなく良い行いも対象に入ります。
「自業自得」「因果応報」も悪い意味で使用されることが多いですが、良い意味として使用することも正しい使い方です。
「身から出た錆」の英語表現
仕事で英語を使ったり外国の人と関わったりする機会が多い人の中には、「身から出た錆」の英語表現を知りたい人もいるでしょう。
「身から出た錆」を直訳した英語表現はありませんが、下記が同じ意味を持つ英語表現だといえるでしょう。
意味:恩を仇で返す・自業自得
意味:自分が犯した悪事によって悪い報いを受ける・自業自得
「consequences of one's own deeds」は直訳すると「自身の行為の結果」となり、「身から出た錆」の意味として使いやすいでしょう。
また、「つむじ風を刈り入れる」という意味の「reap the whirlwind」も、「身から出た錆」や「自業自得」の意味で使える表現となっています。
これは、旧約聖書にある「sow the wind and reap the whirlwind(風を蒔いてつむじ風を刈りとる)を短縮した形で、軽い気持ちで行った行為(風を蒔く)が重大な結果(つむじ風)を生んだことを表すことわざです。
「自分の悪事の結果苦しむ」というニュアンスで使えるフレーズなので、あわせて覚えておくといいでしょう。
「身から出た錆」の意味や使い方、類語などを理解しよう
「身から出た錆」は、「自分の悪行の結果として自分自身が苦しむこと」を意味することわざで、災いが降りかかったとしても本人に責任があることを示す言葉です。
「刀身の深いところから生じた錆は手の施しようがなく、刀身自体を腐らせてしまう」ということが由来となっており、相手や自分を戒める時に使用します。
「自業自得」などの類語や英語表現などもあわせて覚えておき、「身から出た錆」を正しく使えるようになりましょう。