ミュージカル『THE BOY FROM OZ supported by JACCS』の公開ゲネプロが18日に東京・東急シアターオーブにて行われ、坂本昌行、紫吹淳、末澤誠也、宮川浩、今陽子、鳳蘭、フィリップ・マッキンリー(演出)が取材に応じた。

  • 坂本昌行

    坂本昌行

同作は、1970~80年代にアメリカを中心に活躍し「I Honestly Love You」「あなたしか見えない」「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」などの名曲を生み出したオーストラリア出身のエンターテイナー、ピーター・アレンを主人公に、ジュディ・ガーランドとの出会い、その娘ライザ・ミネリとの結婚、離婚、同性愛にエイズなど波乱万丈な生涯を描くミュージカル。日本では2005年に坂本昌行主演で上演され、その後2度にわたって再演された。公開ゲネプロ役にはヤングピーター役を木村咲哉、リトルピーター役を重松俊吾が務めた。

17年ぶりの再演に、坂本は「気づけば十……数年」とごまかしながら、「久々にの作品に触れて、こんなにも色褪せない、こんなにも常に新鮮にドキドキさせてくれる、楽しませてくれる作品はなかなかないんじゃないかな」と自信を見せる。紫吹は「色々な思いがあったんですけど、お稽古場でやってても、時が当時に戻ったような感じになって不思議な気持ちになって、そんな経験もさせていただけることに感謝してます」と心境を吐露した。

演出のフィリップは「まるでとっても上品なワインのように熟成されて参りました」と表し、「私にとってパンデミックとなりまして以来初の作品となりまして、2年ぶりの作品の演出となっています」と自身の状況も。坂本は「より深く考えられるようになった。僕も17年間いろいろ経験してきまして、大切な人を亡くしたり、出会いもいろいろある中、別れというものが大切で、旅立った人を心より愛していたんだなというのを改めて思うことでもあったので、それをピーターという役に投影してやってる部分はあります」と変化について表す。18日がピーター・アレンの命日ということで「ピーターは48歳でなくなった、僕も2年前は48歳だったのですが、(コロナの状況で)できなくなってしまって。今、命日でやらせてくれるというとは『やりなさい』ということなのかなと思って、心のどこかでピーター・アレンに捧げたいという思いがあります」と胸の内を明かした。

坂本と紫吹は夫婦役、そして坂本と末澤は恋人役となり、紫吹は「焼き餅を焼いちゃうくらい、ピーターとグレッグ(末澤)が素敵すぎて、ちょっとグレそうな感じです。新たな感情が芽生えてます」という。稽古場でも紫吹は「ピーターが歌うじゃないですか。末澤くんに『あなたのために歌ってるのよ、私のためには歌ってくれないのよ』とずっと言ってました」と振り返り、末澤は「申し訳ないなと思いながらも、ありがとうございますという気持ちでした」と苦笑する。

末澤は「僕自身、初ミュージカルというお所もあって、こういうすばらしい歴史のある作品に出させていただけるのは光栄なことですし、お話を聞いたときは不安も大きかったんですけど、稽古を重ねながら先輩方もアドバイスをくださったり、フィルさんもこと細かにグレッグの心情や性格を説明してくださったので、腑に落ちて臨むことができました」と明かす。「坂本くんが稽古の時から遠慮せずにとおっしゃってくださってて、やっていく中でも『悲しみや死への恐怖、悔しさを前面に出すだけじゃなくて、抑えながらという方向もあるんじゃない?』といった提案してくださったりもしたので、やりやすくやらせていただけた」と感謝した。

坂本は末澤について「弟的なかわいらしさがある」と言いつつ、「元々彼も芝居が好きと言ってたので、芝居に入って日に日に変わっていく姿を見ると、『だったら、もっとこういう風にやってみたらどう? と言っちゃって。思いながらやってるんですけど、まあ、でもそれを自分なりに吸収して、フィルの言葉をしっかりと受け止めて、自分のものにしてくれた」と頼もしさを感じている様子で、仲良くなれたのかという質問にはとぼける坂本に、末澤がすかさずツッコむ一幕も。坂本は改めて「こういう関係はできてるので、稽古中でもふざけ合いながら楽しみ合いながら、でも締めるところはお互いしっかり締めて稽古していたので、初めてという感覚はないです」と信頼を寄せる。

一方の末澤は「大先輩なので、どういう感じで接していったらいいんかなというのはあったんですけど、役柄的にも恋人ですし、なるべく近づきたいと思ったので、結構話しかけさせてもらったり、ぐいぐい行ってましたね」と振り返る。坂本も「壁がないので、僕もボケたりすると全部突っ込んでくれるて、一緒にいる時間が楽しい」と言いつつ、「まだLINEは交換してないんですけど……」とチクリ。末澤がその場で「本当に言おうと思ってたんです。そろそろお聞きしようと思ってたんですけど、いいですか?」と尋ねると、坂本は「交換だけがすべてじゃないからさ、思いが通じ合ってるので大丈夫です」と爽やかに断り、2人の空気に紫吹は「ほんと、グレますよ」とまとめていた。

東京公演は東急シアターオーブにて6月18日~7月3日、大阪公演はオリックス劇場にて7月14日~7月16日。