日本ワイン発祥の地、山梨県。ワイン好きなら、個性豊かな山梨のワイナリーを巡ることは旅の大きな楽しみですよね!

  • ワイン初心者も大満足! 山梨の定番&穴場おすすめワイナリー3店を徹底ガイド

ワイン県やまなしには、90を超えるワイナリーが点在。日々、ポテンシャルの高いワインを作り続けています。そこで今回は、数あるワイナリーの中から、特に個性的なワイナリーを3つご紹介。

飲める、買えるだけじゃない。ワイン初心者さんからワイン通まで「あっ!」と驚く、ディープな大人のワイン旅へ出かけてみませんか?

■世界にひとつ! 120年前の石蔵発酵槽で造る「ルミエールワイナリー」

  • ゆったりとしたアプローチを進んだ先にあるショップ&レストラン

まずご紹介するのは、JR勝沼ぶどう郷駅から車で約10分の場所にある「ルミエールワイナリー」です。

創業は1885年。130年以上の歴史を誇り、皇室御用達ワインとしても重宝されるお墨付きのワイナリー。国内外のワインコンクールでも高く評価され、現在はイギリスをはじめ、アジアの国々にも輸出される、日本を代表するワインを製造しています。

そんな歴史あるワイナリーですが、ショップ&レストランは新しくてキレイ。初めてでもふらっと立ち寄りやすい、明るい雰囲気です。

  • 自社農園では、甲州やカベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルド、メルロー、などを栽培

ルミエールの歴史を堪能するなら、予約制のツアーに参加しましょう。ツアーは、毎日14時からの30分コース(500円)があります。スタッフによるガイドを受けながら、自社のブドウ畑、醸造棟、石蔵発酵槽、地下セラーを見学できます。

ブドウ畑の専有面積は4ヘクタール。「本物のワインは本物のブドウから」というコンセプト通り、できるだけ"自然のまま"に近い環境でブドウを栽培しています。

ワインの知識が豊富なガイドさんの話は、分かりやすくて楽しい! 熱の入った案内に、思わず聞き入ってしまいます。

  • ワインを醸造する醸造棟

続いて向かったのは、ブドウを発酵させてワインを作るための醸造棟。夏の収穫期には、ここに収穫されたブドウが続々と集められ、ステンレスタンクを使ってワイン作りが行われます。

冬の時期には、スパークリングワインを仕上げる作業場に。ルミエールワイナリーはスパークリングワインにも力を入れていて、シャンパンと同じ製法で自然な泡を閉じ込める「瓶内二次発酵」で醸造。ゴクリと飲めば、きめ細かい美しい泡とフルーティーで生き生きとした味わい! 暑い夏にぴったりのナチュラルなおいしいスパークリングワインです。

取材の日は、瓶内二次発酵でできた「澱(おり)」をとり除く作業が行われていました。いつもは飲むばかりですが、製造工程を間近で見られるなんて……! ワイン好きなら、ワクワクが止まりません。

  • 国の登録有形文化財や日本遺産にも認定された、世界的にも珍しい「石蔵発酵槽」

ツアーのハイライトは、120年以上前に造られた石蔵発酵槽の見学。中に入ることはできませんが、上から石蔵をのぞき込み、その様子を見ることができます。

まだステンレスタンクがなかった創業直後の1901年、その代わりとして作られたのが、この発酵槽。壁に染み込んだワインの色が、その歴史を物語っていますよね。

石材は「花崗岩」が使われており、天然の冷却効果によってうまく発酵がすすみ、力強いワインを作ることができるのだとか。

そして驚くことに、10基のうちひとつは、いまだ現役で活躍中! 毎年9月には、石蔵発酵槽でのワイン仕込み体験も行われます。ただしこのイベントは毎年、満員御礼の大人気イベント。参加したい方は、公式HPをチェックして早めに申し込んでくださいね。

  • 石蔵発酵槽で仕込んだ貴重なワイン「石蔵和飲」もショップで販売

ルミエールでは、30種類以上のオリジナルワインを展開。石蔵発酵槽で造られる限定品「石蔵和飲」や、瓶内二次発酵で造る「スパークリング 甲州」、自社農園で丹精込めて造られた「光」シリーズなど、どれも個性あふれるラインナップ。全国のワイン通から人気を博しているのもうなずけます。

  • 最新のテイスティングマシンでワインをお試し

せっかくなら見るだけでなく、ワインを飲んで楽しみたいですね。ショップにはテイスティングコーナーがあり、常時12種類ほどのワインを用意。石蔵発酵槽で仕込んだ「石蔵和飲」もお試しできます。

新酒が出るタイミングなど、多いときには20種類ぐらいまで増えるのだとか! ブドウの収穫期や山梨ヌーボーの時期に訪れて、個性的なルミエールのワインを飲み比べるのも楽しいですよ。

ちなみに「石蔵和飲」は凝縮感があり、果実味のよく出た自然な味わい。いつまでもその余韻を楽しみたくなります。

■革新を続ける老舗日本酒蔵! お酒街道入り口にある「笹一酒造」

  • 2021年度には、インテリア部門・グッドデザイン賞を受賞した「笹一酒遊館」

山梨にワイナリーは数あれど、ずば抜けてオシャレなのが「笹一酒造」。場所は大月市の山深い甲州街道(通称 お酒街道)沿い。JR笹子駅から徒歩5分のところにあります。

酒造と名がつくように、笹一酒造は350年以上も前から日本酒造りを行う蔵元。しかし実は、ワインも作っているんです! ワイン造りをスタートさせたのは1951年から。繊細で難しい日本酒の醸造技術をワインに生かし、すっきりとした飲み口のおいしいワインを作っています。

「お酒が飲めない人にも、発酵文化の愉しさを伝えたい」との想いで、2019年に蔵元直営ショップ「笹一酒遊館」をフルリニューアルオープン。そこにいるだけでワクワクするような、モダンでスタイリッシュな非日常空間です。

  • ワイン醸造家で山梨大学認定ワイン科学士でもある、長谷部さん

中でも目を引くのは、バーのように洗練された有料専用テイスティングコーナー。店内に並ぶ山梨銘菓を購入すれば、ここに座っておつまみとともにワインを試飲できます。

  • オリファンワインの人気ラインナップ

笹一酒造が手掛けるワインのブランド名は、「OLIFANT(オリファン)」。最近できたの? と思われるかもしれませんが、その歴史はとても古く1953年より続く老舗のワインブランドです。

おいしいワインを作るのに一役買っているのは、日本酒を作る際に出てくる米ぬか。これを肥料として土にまぜるなど、土造りからこだわったワインを醸造しています。

ちなみに、数あるラインナップの中で一番人気は、山梨県産甲州種を100%使用した「甲州シュール・リー」。フルーティーな香りと、すっきりした口当たりが特徴的な白ワインです。

テイスティングコーナーで気になるワインを試飲して、お目当ての味を見つけてくださいね!

  • 酒遊館に併設されたカフェ「SASAICHI KRAND CAFE」

さらに店内には、ほっとひと息つくのにちょうどいいオシャレなカフェも併設。「SASAICHI KRAND CAFE」では、和素材を組み合わせた和のスイーツを楽しめます。

  • カフェで提供している仕込み水

こちらのカフェは、お水だって特別! 日本酒造りに使う「仕込み水」を瓶に入れて提供しています。

笹一酒造の仕込み水は、その昔、水飛脚が江戸城でお茶会をする際に運んでいた由緒ある銘水。ゴクリと飲むと、まろやかな口当たり。体にすーっと溶け込むやわらかな味わいです。

  • 「笹一 甘酒アイスパフェ」(1,150円)、「笹一 仕込み水コーヒー」(500円)

そんな仕込み水で丁寧にドリップしたコーヒーが飲めるのも、笹一酒造ならでは! 仕込み水コーヒーは、甲府にお店を構えるコーヒー好きの間で人気の「AKITO COFFEE」が、仕込み水に合わせて焙煎したオリジナル。和スイーツに合うような、ちょっと濃いめのブレンドコーヒーです。

そして、甘味を食べるなら、自家製の甘酒アイスが主役の甘酒アイスパフェがおすすめ。自家製の白玉に入っているのは、なんと忍野八海の名水で作る八海豆腐。お豆腐がベースだから、もちもち食感なのに軽い口当たりです。

目でも舌でも楽しめるパフェは、見てよし、食べてよし! のヘルシースイーツですよ。

■甲府盆地の絶景とワインに酔いしれる「シャトー酒折ワイナリー」

  • 三角屋根が目印の洋風の建物

最後に紹介するのは、JR酒折駅から歩いて約10分の場所にある、甲府市の「シャトー酒折ワイナリー」。途中、急勾配の道が続きますが、大変な分だけいたるところから絶景を楽しめるんです。徒歩で行く方は、後で出会う最高の景色に胸を膨らませながら、ワイナリーを目指してくださいね。

こちらのワイナリーは、1991年に設立。グループ会社である木下インターナショナルの海外メーカーとのネットワークにより製造技術などの情報を得て、甲州種・マスカットベリーA種など日本固有の葡萄品種を中心とした日本ワインを醸造しています。

  • 大規模マシンの迫力にドキドキ!

広々したワイナリーには見学コースが設けられ、自由に見学できます(料金は無料)。説明を聞きながら見学したい! という人は、開催日を確認の上、ソムリエやスタッフによるツアーに参加するといいでしょう。

見学コースを歩いていると、まず驚くのがステンレスタンクの大きさ! 山梨のワイナリーにはさまざまなステンレスタンクがありますが、その中でもトップクラスの大きさです。

そして、もうひとつ驚いたのが、醸造設備がとにかくキレイだったこと。シャトー酒折ワイナリーでは、醸造設備の衛生管理に特に気を使っており、この巨大なタンクも徹底的に洗浄しているのだとか。

聞けば、クリーンな環境下でワインを作ることで、酸化防止剤も最小限にとどめられるそうです。おいしいだけでなく、体にも優しいワインだなんて嬉しいですよね。

  • 品揃え豊富なショップエリア

またショップもかなりの広さ。明るく開放感たっぷりの店内には、特別な日に開けたいワインから、毎日楽しめるリーズナブルなワインまで、多彩なラインナップ。

シャトー酒折のモットーは、「毎日の食卓で楽しめるリーズナブルでおいしいワインを作る」。だからワインのお値段は、多くが1000円台とリーズナブル! どれを買ってもハズレがない、気軽に楽しめるのが嬉しいところ。

  • 銘柄の多くは甲州とマスカットベリーA。同じブドウでも、味はかなり違う!

テイスティングは無料と有料があり、定番のものから季節限定のワインまで種類もさまざま。行く度に違った味わいを楽しめます。

中でも感動したのは、ブドウの栽培家・池上仁さんと一緒に作り上げたという「キュヴェ・イケガワ」。口当たりがとってもなめらかで、ワインの渋みが苦手な人でもおいしく飲める、エレガントなワインでした!

  • 笑顔がステキなシャトー酒折のみなさん

ワイン初心者だと、正直どれを飲めば良いのか困惑してしまいますよね。しかし、こちらのスタッフはみなさん、気軽に話しかけやすいウエルカムな雰囲気。こんなにも……!? と驚くほど、分かりやすく丁寧にアドバイスしてくれます。

  • テラスは夕日の特等席

このワイナリーを訪れたら、ぜひテラスに出てみてください。甲府盆地を見渡す高台にあり、心地よい風が吹き渡ります。

ハンモック席でワインを飲めば、天国気分。雄大な景色に心が晴れ晴れとして、ワインがいっそうおいしく感じられるはず!

気軽に行ける山梨で、幸せなワインの旅を!

ワイン造りの本場・山梨には、ワイン好きを虜にするお楽しみがいっぱい。都心からも近いので、ふらっと行ける週末旅にもぴったりです。

幸せなほろ酔い旅がしたいときは、おいしい癒しスポット山梨へ。

※これらの取材は、2022年1月に行われたものです。

■Information
・ルミエールワイナリー
【場所】 山梨県笛吹市一宮町南野呂624
・笹一酒造
【場所】 山梨県大月市笹子町吉久保26
・シャトー酒折ワイナリー
【場所】 山梨県甲府市酒折町1338-203