三大疾病とは日本人の死因上位にあがる「がん(悪性新生物)」「急性心筋梗塞」「脳卒中」の3つの病気のことを指します。通常の医療保険とは別に、「三大疾病保険」「がん保険」に加入して保障を手厚くしたいと考えている方もいらっしゃるかもしれません。そこでこの記事では、そもそも三大疾病とは何か、保障は必要なのか、どんな備え方があるのかについて、詳しく解説します。

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■三大疾病とは?

三大疾病とは、「がん(悪性新生物)」「急性心筋梗塞」「脳卒中」の3つの病気のことを指します。

三大疾病により所定の状態になったときに、特定疾病保険金が受け取れる保険を三大疾病保険といいます。

保険商品によって細かい支払条件は異なりますが、それぞれ大まかには以下のようになっています。

がん(悪性新生物)

保険契約後、初めてがんに罹ったと医者に診断されたときに保険金を受け取れます。ただし、上皮内がんなどは対象外や給付金額が異なる場合があります。

また、責任開始日から90日までの間にがんと診断されても給付金は支払われないといった支払条件もあります。

急性心筋梗塞

保険契約後、急性心筋梗塞になり、初診日より60日以上労働が制限される状態(※)が継続したと医師に判断されたときに保険金を受け取れます。

※軽い家事などの軽労働や事務などの座業はできるが、それ以上の活動では制限を必要とする状態

脳卒中

保険契約後、脳卒中になり、初診日より60日以上、言語障害、運動失調、まひなどの神経学的後遺症が継続したと医師に判断されたときに保険金を受け取れます。

脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、血管が破れる「脳出血」、血管にできたこぶが破裂する「くも膜下出血」があります。

■三大疾病に保険は必要?

三大疾病で亡くなる確率は?

厚生労働省のデータによると、三大疾病が死因となっている方は平成2年度で全体の50.1%となっています。

死因順位は以下の通りです。

順位 死因 死亡数 死亡総数に占める割合
1位 悪性新生物<腫瘍> 378,385 27.6%
2位 心疾患(高血圧性を除く) 205,596 15.0%
3位 老衰 132,440 9.6%
4位 脳血管疾患 102,978 7.5%
5位 肺炎 78,450 5.7%
6位 誤嚥性肺炎 42,746 3.1%
7位 不慮の事故 38,133 2.8%
8位 腎不全 26,948 2.0%
9位 アルツハイマー病 20,852 1.5%
10位 血管性等の認知症 20,815 1.5%

出典:厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況

このデータからも、三大疾病に罹る確率は低いとは言えない、ということがわかります。ただし、罹る確率が高い=保険が必要とは限りません。

経済的損失が大きいものに備えるのが保険の役割なので、三大疾病に罹ることでどれくらいの経済的損失があるかを考える必要があります。

■三大疾病の医療費にかかる費用は?

厚生労働省の「医療給付実態調査/令和元年度」のデータをもとに算出した医療費の平均額は以下の通りです。

【 三大疾病にかかる1件当たりの医療費 】

病名 入院の場合の医療費(自己負担額) 入院外の場合の医療費(自己負担額)
がん(悪性新生物) 696,408円(208,922円) 60,007円(18,002円)
虚血性心筋梗塞 758,059円(227,418円) 16,906円(5,072円)
脳血管疾患 699,366円(209,810円) 15,983円(4,795円)
※自己負担額は3割で試算。負担割合は所得・年齢により異なります。
統計表 第6表「疾病分類別、診療種類別、点数(金額)階級別、件数、日数(回数)、点数(金額)[制度・計]」をもとに推計

医療費が高額になる場合は、高額療養費制度で自己負担額を抑えられます。

高額療養費制度とは、同一月(1日から月末)にかかった医療費のうち、年齢・収入に応じて決められた自己負担限度額を超えた額が払い戻される制度です。

【 高額療養費制度の自己負担上限額(69歳以下) 】

  • ※出典:厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ(平成30年8月診療分から) 」

実際には、高額療養費制度の自己負担額を払える体力が家計にあるかが、保険で備える必要があるかどうかを考える上で、大きなチェックポイントとなります。

また下記のような公的医療保険制度でカバーできない費用・損失を預貯金等でまかなえるかどうかも考えておく必要があります。

・自由診療
・先進医療
・入院中の食事代
・差額ベッド代
・通院や見舞いに伴う交通費
・働けないことによる収入減
・看病に伴う家族の収入減

■三大疾病の治療にかかる期間は?

厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況 」によると、傷病別の平均在院日数は以下の通りです。

病名 総数平均 35~64歳平均
がん(悪性新生物) 17.1日 12.0日
心疾患(高血圧性のものを除く) 19.3日 9.0日
脳血管疾患 78.2日 45.6日

がんや心筋梗塞は医療の進歩により、入院日数が短くなり、通院しながら治療を受けることが多くなっています。

脳卒中は手術や薬物治療だけではなく、リハビリテーションが必要となることが多く、その分入院が長期化すると考えられます。

入院が長期化すると、働けない期間も当然長くなります。

会社員や公務員であれば、傷病手当金を受け取れますが、自営業者やフリーランスの場合は特に働けない期間の収入補填も考えておく必要があります。

■三大疾病に保険で備えるには?

三大疾病保険

三大疾病により所定の状態になったときに、一時金や手術給付金・入院給付金を受け取れます。給付金を受け取らずに死亡または高度障害状態になった場合、死亡保険金または高度障害保険金を受け取れます(死亡保険金がないタイプもあります)。

定期型と終身型があり、一生涯保障される終身型は保険料もその分高くなります。

三大疾病保障特約

終身保険などに特約として三大疾病保障を付加することもできます。三大疾病保険に単体で加入するよりも保険料を抑えられる可能性があります。

三大疾病保険料払込免除特約

三大疾病になったときには保険料の払込が免除される特約を加入する保険に付加できます。保険会社の条件を満たせば、保険料を支払うことなく、保障を継続できます。

三大疾病保障付き団体信用生命保険

住宅ローン契約時に加入する団体信用生命保険に年0.2~0.3%程度の金利を上乗せすると、三大疾病の保障を付けられます。

三大疾病で所定の状態になると、保険金が支払われ、残債がなくなります。

安心感は大きいですが、金利上乗せによる毎月の返済額もその分大きくなります。

保障を付ける場合は、既に加入している保険の内容を見直して、保障が重複しないようにする必要があります。

リビング・ニーズ特約

余命6カ月以内と判断された場合、本来は亡くなったときに支払われる死亡保険金の一部または全部(最高3,000万円)を生前に受け取ることができる無料の特約です。

この特約を使えば、生前に給付金を受け取れ、治療費や生活費に使うことができます。

■三大疾病保険のメリット・デメリット

メリット

・まとまった一時金が受け取れる

がんの場合、診断確定されたときに保険金を受け取れます。大きな病気になったときには経済的な不安も大きくなりがちなので、お金が必要なときに保険金を受け取れるのは大きなメリットと言えます。

・罹る確率の高い疾病に備えられる

がんだけではなく、死因の50%にあたる三大疾病すべてに備えられます。

・掛け捨てにならない

三大疾病保険は解約返戻金があるタイプが一般的なので、保障が不要になったときにも保険料が掛け捨てにはなりません。

デメリット

・保険金の支払条件が厳しい

特に、急性心筋梗塞や脳卒中は保険金が支払われる条件が厳しくなっています。一定期間の間仕事に就けない状態が続かないと保険金を受け取れません。治療費として使いたいときには受け取れない可能性もあります。

・重複して受けられない

保険金を受け取った時点で、保障は終了してしまうため、三大疾病保険金と死亡保険金、高度障害保険金は重複して受け取れません。

・保険料が割高

がん保険と比べると、保障対象が広くなるため、その分保険料は割高になります。 また、貯蓄性がある分、保険料は掛け捨てのものと比べると保険料は高くなります。

■三大疾病保険に向いている人

掛け捨ての保険には加入したくない人

終身型の三大疾病保険の場合、保険料が掛け捨てにはなりません。

途中で解約すると解約返戻金を、三大疾病になることなく亡くなった場合は死亡保険金を受け取れます。

保険料は高くなりますが、掛け捨てにはどうしても抵抗がある人には備えながら貯蓄ができる点は向いていると言えるでしょう。

がんだけではなく、急性心筋梗塞や脳卒中にも備えたい人

がん保険はがんに対する保障内容は手厚いけれど、掛け捨てなので保険料は抑えられます。がんに特化して備えが必要な場合はがん保険の方が向いています。ただし、三大疾病すべてに手厚く保険で備えたいのであれば、三大疾病保険が向いています。

治療費と死亡保障の両方に備えたい人

死亡保険は、葬儀代や家族の生活費など、遺された家族のための保険です。

三大疾病保険は死亡や高度障害に備えながら、三大疾病になったときの治療費にも備えられます。

■まとめ

がんや急性心筋梗塞、脳卒中といった大病に罹ったときのことを想像すると不安が大きくなるのは自然なことです。ただし、病気に罹る不安と経済的損失への備えは冷静にわけて考える必要があります。

まずは公的医療保険制度で得られる保障を確認した上で、自分に足りない保障を具体的にしていきましょう。ご自身が感じる経済的な不安もあわせて具体的にしていくことで、三大疾病保険がそれに備えるのにふさわしいかどうかも判断しやすくなります。 保険選びは必要な保障を明確にしてから、を意識すれば、保険への入りすぎも避けられますよ。