近年、無関係の弱者がターゲットとなる事件が増えている。この状況に心を痛める明照学園 九品寺こども園は、テルウェル東日本の「非常通報装置エマーコム」によって犯罪の抑止、防犯の啓蒙を実現した。導入の決め手は、ボタンひとつで110番に直通することにあったという。
お寺と地域が結びついた認定こども園「九品寺こども園」
「九品寺こども園」を始めとした幼稚園・保育園・学童クラブを運営し、0歳から12歳までの子どもを預かっている福島県いわき市の明照学園。理事長を務めているのは、九品寺・専称寺の住職、遠藤弘道氏だ。そのルーツは昭和初期、農繁期にお寺で地域の子どもを預かっていた季節託児所にあるという。のちに託児所は一度閉じられるが、ベビーブームの最中に地域から要望を受けて幼稚園を開園し、現在に至る。
仏教の精神を基本とし、「明るく・正しく・仲良く」という教育理念のもと、日常生活で"手を合わせる"機会を頻繁に設けていることが大きな特徴。遠藤氏は「"見えないもの"に守られ、日々生きているという感覚を身に着けてほしい」と、その思いを語る。
そんな同園が懸念していたのが、近年発生している保育園・幼稚園・学校をターゲットとした犯罪だ。
「子どもたちのリスクはどこに潜んでいるか分かりません。施設を運営していれば、自治体から週一回、多いときは毎日のように不審者情報が流れてきます。大事なお子さまをお預けいただくに当たり、より良い安心安全な環境を教職員とともに模索していました。また一方で、教職員のみなさんが安心して働ける環境作りも大きなテーマでありました」(明照学園 遠藤氏)
そんなとき、遠藤氏のもとに届いたのがテルウェル東日本の「非常通報装置エマーコム」のDMだった。それまで地域を管轄する警察署や警備会社の防犯システムしかイメージがなかったという同氏は、ボタンひとつで警察に繋がる防犯システムがあるという驚きを感じたという。
「有事の際は大人でも混乱し、どこに・だれに連絡をしたら良いかをとっさに判断するのは難しいものです。また、状況を正しく伝えるのも大変ですし、切迫した場面では電話をかけることもままならないかもしれません。そんなとき、警察や警備会社にスムーズに連絡が取れるエマーコムはなかなか良いシステムだと思い、興味を持ちました」(明照学園 遠藤氏)
通報ボタンひとつで警察が駆けつけるエマーコム
「非常通報装置エマーコム」は、緊急非常時に警察へ直接通報できる、テルウェル東日本の防犯装置。装置のボタンを押すだけで、電話で110番をかけたときと同じ警察の通信指令室へ直接通報が行われ、あらかじめ録音した録音メッセージ(名称や住所など)が流れる仕組みだ。
「警備会社さんの防犯システムとの違いは、通報ボタンを押すことで110番に直接つながり、状況を問わず速やかに警察が出動することです。警備会社のシステムの場合は、いったん警備会社の警備員が来て、状況を確認してから警察に連絡しますから、通報がワンテンポ遅れます。その安心感から、多くの金融機関や学校で採用されています」(テルウェル東日本 泉氏)
エマーコムは、停電時であっても最大20時間対応が可能。本体装置から離れた場所に設置できる追加の「通報ボタン」、所管の通信指令室からの逆信(呼び返し)に応答通話できる「受理用電話機」など、通報の状況を色で知らせる「発報確認ランプ」など、安心をさらに強化する拡張機器も用意されている。
「幼稚園・保育園は子どもが多く、また保育士は女性が多くを占めています。社会的に弱者と認識される人が多いゆえに犯罪のターゲットにされることもあります。運営側も危機管理と安心・安全への取り組みに心を砕いていると思い、お勧めしました」(テルウェル東日本 泉氏)
こうして明照学園が運営する幼稚園・保育園等の幼児教育・保育施設など4施設に「非常通報装置エマーコム」の導入が開始された。各施設を訪問したテルウェル東日本は、保育士や職員の動線、避難場所などを調査し、通報ボタンの設置場所を検討。仕事の邪魔にならず、有事の中でも冷静に押せるであろう場所に設置を進めた。とくに『九品寺 こども園』は非常に敷地が広く、通線のルートがなかなか見つからず苦労したという。
エマーコムが提供する「安心感」
「非常通報装置エマーコム」は有事の際に使用される装置であり、通報ボタンは押されないことこそ望ましい。だが遠藤氏は、設置すること自体に効果を感じていると話す。
「エマーコムを設置してから、日々の安心感がプラスされたと思います。子どもたちはもちろんですが、先生方に安心感を持って働いてもらうことはとても大切です。また、導入と合わせて『110番非常通報装置設置』という看板やポスターを各施設の目立つ場所に設置しました。これが目に入ることによる、犯罪の抑止、防犯の啓発という点でも期待しております」(明照学園 遠藤氏)
さらに、エマーコム導入後は、日々の防災・防犯訓練に加え、警察官を招いた防犯訓練も受けることができるという。
「明照学園さまにご案内する際には、テルウェル東日本のみならず、福島県警OBの団体「日本防災通信協会」さまにも来てもらいまして、防犯に関して詳しく話していただきました」(テルウェル東日本 泉氏)
もともとは金融機関向けに作られたという「非常通報装置エマーコム」。だが昨今は金融機関の数が減少し、一方で無差別殺傷などの社会的な問題がクローズアップさせるようになってきた。
「現代の犯罪のターゲットになりがちな病院や福祉施設、学校教育施設などにこそエマーコムを導入し、犯罪を抑止してもらいたい……」テルウェル東日本の泉氏はこのように語る。
最後に明照学園の遠藤氏はコロナ禍が収束したのちの九品寺・専称寺、明照学園のあり方について、次のように述べた。
「お寺は地域のコミュニティの核になる施設だと思っております。コロナ過が収束した際に再び交流の場とするために、地域を巻き込んだ防犯訓練や講座を開催したり、地域と情報連携したりして、近隣で犯罪が起こったときはいつでも駆け込める場所になればと考えております」(明照学園 遠藤氏)