皆さんはいま会社に「通勤」していますか? ここ数年で一気に変わった働き方。テレワークから在宅勤務、さらにはワーケーションなど新しい言葉が続々と出てきています。
さらには、無制限リモートワークをヤフーは導入したり、ホンダは原則出社に切り替えたりするなど、もう何が正解よ? 状態なのは筆者だけですかね。
そんな中、NTT都市開発が「未来のオフィス 4×SCENE(フォーシーン)」として自社オフィスの運用を開始したとの発表が。ついにオフィス論争に終止符が打たれるかも!? と野次馬根性から見学してきました。
行きたくなるオフィス
リモートワークを基本とするこちら、これからも必要な未来のオフィス像を描き、社員が自ら利用・運営し、データを取得解析し、ブラッシュアップし続けていく「ライブオフィス」。
ここで培われたデータは検証を経て、今後 NTT アーバンソリューションズグループの街づくり、NTT 都市開発が企画・運営するビルに展開するそうです。なんだか凄い(語彙力
プロジェクトリーダーを努めるNTTアーバンソリューションズの渡邉裕美さんは「一言でいうと"行きたくなる"未来のオフィスです」と説明してくれます。
基本の働き方はリモートワークですが、もう少し聞くと、「Personalized ABW」というキーワードが。ABW(Activity Based Working)は導入している企業も珍しくなく、比較的よく耳にします。個人(本人)のその日の業務内容に応じて、オフィスの勤務スペースを選ぶスタイルです。
今回は、それをさらに推し進め、「一人ひとりが『好み』と『行動・目的』に合わせて自由に、柔軟に環境を選ぶ」働き方だと渡邉さんは話し、「目的を活性できることが『行きたくなるような未来のオフィス』だと私たちは考えています」と本プロジェクトの方向性を明かしてくれました。
誰がどこにいるか一目で分かる
残念ながら、筆者の理解力ではあまりピンと来ず。でも百聞は一見に如かず! オフィス内を見てみることに。ぱっと見の印象はシンプルなレイアウトと植栽を配置したナチュラルなオフィス空間。
境目にカーテンを使い、壁の仕切りは少なく開放的な雰囲気ですが、逆にあまり「特別な感じ」は受けませんね。
なお、フロアは「INTRODUCTION」「TEAM」「FOCUS」「CASUAL」と大きく4つに分かれ、それぞれ仕事の目的や働き方に応じて、自分が働く場所を選ぶスタイルです。
このあたりは従来のABWと大きな違いはない印象。肝となるのが「デジタル」でした。例えば、出社すると入り口にある「マップモニタ」で誰が出社しているのかを把握できます。
もし誰かと雑談しながら仕事をしたいなら、話し相手を見つけながらCASUALエリアで作業する。もしくはTEAMエリアで会議後、その情報を共有して自分と別視点からの意見を聞きたい時にアドバイザーを探してCASUALエリアで相談するなどができるのです。
なお、社員は会社支給のスマホ端末でマップモニタと同じように他の社員の場所を把握可能だと言います。
さりげないサポートが心地いい
デジタルのサポートはそれ以外にもあり、ミーティングや会議をしていて、終了時間が近づくと照明の明るさが変化して「そろそろ終了ですよ」と合図を出してくれます。
いいですよね、この機能。だいたいこの手のことは長引くことが多いから、ストップウォッチアプリを使ったり、ベルを置いたりとか。でも「あからさま」なところもあるし。
これなら目立たないし良いですね。実際、これで時間通りに終わる打ち合わせが大きく増えたそうです。
また、働く人の行動履歴やストレス度合いからリフレッシュするタイミングをレコメンドし、オフィスにある「(MU)ROOM」という瞑想室や、「歩きながら仕事できる」ウォーキングマシンへ誘導して作業効率や生産性の向上、Well-beingの実現も目指すといいます。
気分転換に歩くのはいいですね。理想は散歩でしょうが、時間が限られている場合は「仕事しながら歩く」というのもアリな気が。確か、故スティーブ・ジョブズも歩きながら考え事や打ち合わせをしたと聞いたことがありますね。
さらに、オンラインミーティングで相手の声が聞きづらい、こちらの周囲のノイズが入って相手がストレスを感じる、みたいな問題を解消する「パーソナルサウンドゾーン」という場所も用意されています。
これはNTTの研究所とNTTソノリティの技術を使った設備で「自分の周囲にのみ音を再現する」「自分の声だけを相手に届ける」ことができるのです。
実際、筆者も座ってデモンストレーションに参加しましたが、頭の位置を前にすると周囲の音が、ポジションに戻すと相手の声が明瞭に聞こえるので、ストレス無く快適にコミュニケーションできました。
神棚を見つけて目が点になる
ここで告白します。実は見学していた時から「あるもの」に気付いていたのです。それは個人用ロッカーがずらりと並ぶ、その向こう側の柱に設置されていましたよ。
個人用ロッカーが並ぶ
あれは、まさか……。
そう、神棚です。「日本企業らしい」といえばらしい。でも「未来型」オフィスに? 渡邉さんに恐る恐る尋ねてみました。
――未来のオフィスと、昭和のオフィスをイメージさせる神棚の組み合わせは少し違和感があるのですが……
渡邉さん:確かに未来のオフィスに必要か? というと悩みますよね(笑)。このオフィスには、新年に神田明神へ詣でる文化があり、神棚は役員の希望なのです。設置に関して議論もしましたが、このオフィスは『多様な人(ヒト)が中心』という考え方が土台なので、やはり働く人が必要だと言うのなら、置くのが自然だと結論付けたのです。
あくまで「働く人」ありきという、当たり前でしょうが非常に大切で、示唆に富んだエピソードだと思いませんか? 「周囲となじむように、かつ神棚の向きにも注意して配置しました」と当時の苦労を思い出す渡邉さんへ、もう一つ疑問をぶつけてみました。
――「Personalized ABW」での働き方に対して、社員の方はすぐに適応できたのでしょうか。
渡邉さん:このオフィスには、グローバル事業部に所属して既にABWの働き方を経験している社員、そして旧来の固定席で働いていた社員などが混在しています。ただ、コロナ禍でリモートワークを経たこともあり、後者のメンバーも特に違和感を持たずにフィットできていますね。
また、固定席のメリットは「誰がどこに座っているか分かる」ですが、本オフィスもデジタル機器を通してそこは共有できるので、その辺りも手助けになっているのでは、と補足してくれました。
「ナチュラルでさりげなく、空間とデジタルが人を支える考え」がベースとなる未来のオフィス、ちょっと自分も働いてみたいと思いましたよ。