プロモーションミックスとは、「広告」「 広報/PR」「口コミ・SNS」「販売促進」「人的販売」といった複数のプロモーションの手段を最適に組み合わせるマーケティング施策のことです。どのプロモーション手段を選ぶべきか、どの手段に重点を置くべきなのかは、マーケティングの目的、製品・サービス内容、市場の状況などによって違います。
今回はプロモーションミックスの概要や具体的な手段について解説します。プロモーションのお金や時間は限られているので、効率的に効果を生み出せるように工夫することが大切です。
プロモーションミックスとは複数の手段を組み合わせること
そもそもプロモーションとは、購買を促す手段のこと。よってプロモーションミックスとは、マーケティング活動において購買促進のための手段を複数組み合わせることを意味します。
主なプロモーション方法として、(1)広告、(2)広報/PR、(3)口コミ・SNS、(4)販売促進、(5)人的販売があります。
これらの手段は「プル戦略」と「プッシュ戦略」に分かれます。プル戦略とはユーザーを「引き込む」戦略のことで、自社商品・サービスの情報を消費者に見つけてもらい、自発的な購入を促す手法です。広告、広報、食い込みがプル戦略の代表です。
一方でプッシュ戦略とは、消費者へ積極的に働きかけて購入を促す手段のことです。プル戦略よりもダイレクトな手法で、販売促進・人的販売などがプッシュ戦略の代表と言えます。
プル戦略のプロモーション
プル戦略の個別手法についてそれぞれ見ていきましょう。
1.広告
テレビ・新聞・雑誌といったマスメディア、WebサイトやSNSなどネットメディアで流す広告です。費用は発生しますが、ターゲットに広く伝えて認知度を上げることができます。
またネットメディアでは、年代や居住地域といったターゲット属性を絞って広告を出稿することも可能です。
PR(パブリシティ)
PRは広報活動であり、プレスリリースやニュースリリースなどを使って、自社から情報を発信します。広告と比べると費用は少なく、テレビ局・新聞社・ネットニュースなどに取り上げてもらうことで一定の信頼性を獲得できるのもメリットです。
口コミ
企業が直接手を打てる手段ではありませんが、現代では消費者の口コミ・評価も重要なプロモーション要素の1つとなっています。消費者が購入を検討していたり、複数の商品を比較していたりする場合、口コミが最終的な決め手になりえます。
SNS
近年ではSNSにおけるコミュニケーションも重要で、インフルエンサーの活用、SNS限定のキャンペーンなどに取り組む企業も増えています。特に若い世代にリーチするには、SNSの活用が肝となってきます。
プッシュ戦略のプロモーション
プル型と比較して販売促進の要素がより大きいのがプッシュ型のプロモーションです。
販売促進
販売促進とは、消費者の購買意欲を高めるための活動のことで、セールスプロモーションとも呼ばれます。B to Cでは店頭POP、チラシ、店頭サンプリングといった実際の売り場で行われるもの、B to Bでは展示会への出展やセミナーなどが代表例です。
人的販売
人的販売とは、販売員・セールスマンが製品の魅力やベネフィットをお客に説明し、購買へと説得する手法のことを意味します。マーケティングという概念が生まれるよりはるか昔から使われている手法で、お店で販売員がセールスをしていたのを見かけた方も多いのでしょうか。
人的販売の利点の1つは、消費者と対話できるため、消費者の持つ疑問や懸念を会話で解消できることです。また文章や写真では説明しづらいメリットを伝えることもできます。
プロモーションミックスは4Pの一環
プロモーション手段の組み合わせを検討するプロモーションミックスは、マーケティングで有名な4P施策の一環である「Promotion(プロモーション)」に位置付けられます。4Pとはマーケティング施策のことで、具体的には下記の4つを指します。
・Product(製品)
・Place(場所・流通)
・Price(価格)
・Promotion(プロモーション)
Productに関しては、どのような特徴を持つ製品にするかを決めます。特徴が分かりやすいこと、ターゲット顧客に魅力的なベネフィットを提供することが大切です。
製品を販売する場所、流通経路などを決定するのがPlaceです。コロナ禍などの影響でネット購入も増えているため、公式サイトやAmazon・楽天などの通販サイトも重要なPlaceの1つと言えます。
Priceは最適な価格を設定するステップです。製造原価や競合の価格を考慮するのに加え、消費者が受け入れやすい価格に設定することもポイントです。
プロモーションミックスを成功させるのに重要なポイント
プロモーションミックスを成功に導くには、以下の点が重要になります。
目的や目標を明確にする
プロモーションミックスで達成したい目標を明確にすることが重要です。単に「売上や利益を伸ばしたい」「女性ユーザーを増やしたい」といった漠然とした目標では、プロモーションミックスを適切に設定することはできません。
たとえば「20代~30代でSNSを毎日使う未婚女性をターゲットとし、商品に対する認知度を上げ、プロモーション期間中にサイトにアクセスした人の5%に購買してもらう」といったように、数値で具体的に目標を設定しましょう。その目標達成のためSNS広告を出稿する、公式サイトで期間限定のディスカウントを実施する、女性に人気の新しいフレーバーを用意する、といったプロモーションミックスに落とし込んでいきます。
組み合わせを工夫する
すべてのプロモーションミックスを100%実施するのは現実的ではありません。効率的に最大の効果を出すためには、どの手段をえらぶのか、組み合わせを工夫することが重要です。
たとえばある企業の会員リストで40代から50代のミドル層は、ネットも使いこなす反面、購入するときは実物を見たいという方が多いと仮定します。その場合、ネットに偏った施策では十分なプロモーション効果が出せない可能性があります。
そこで会員リストにメールを送信して来店を促し、店頭限定の特典を用意するといった方法が考えられます。プロモーションミックスを考えるときは、ターゲットの行動面や心理面の特徴を分析し、最適な手段を選びましょう。
顧客のニーズをしっかり捉える
プロモーションは、販売促進・売り込みの要素に偏ってしまうことがあります。しかし顧客のニーズ・要望に応えた商品・サービスでないと、受け入れてもらうことは困難です。
自社の都合だけでプロモーションミックスを構築するのではなく、顧客にとって受け入れやすいかを意識しましょう。
たとえば日本人は価格意識が強い傾向があるとされています。商品やターゲット像によって話が変わるケースもありますが、価格は顧客が無理なく購入できる水準に設定するのが通常です。
施策の効果を検証する
プロモーションを実施した後は数値で効果を検証し、施策が適切であったかどうか評価をします。目標が達成できたのであれば施策はおおむね成功ですが、さらに改善できることがないかを検討しましょう。
たとえば売上や獲得すべき顧客数はクリアしたものの、新規客が多くリピート客が少ない場合、リピート購入を促すための施策が必要です。
プロモーションミックスによって、目的や目標を明確にして顧客のニーズを捉え、プロモーションの組み合わせを工夫することで成功につながります。
「広告」「販売促進」「人的販売」は、企業が商品やサービスを明確に直接アプローチできるうえ、「販売促進」「人的販売」は短期的な売上づくりが可能です。
「広報/PR」「口コミ・SNS」は、第三者による影響が大きいため、信頼の獲得や購買の決定打となりやすいです。これらの特長を活かして複数のプロモーション手段を用いたプロモーションミックスを行うようにしましょう。