「コロナ禍」の「禍」と同じ字を用いており、どことなく不吉な印象のある「禍々しい」という言葉ですが、その詳しい意味や、似た言葉との使い分け方法などをご存じでしょうか?

本記事では「禍々しい」の詳しい意味や読み方、使い方を紹介。「忌々しい」などとの違い、類語や対義語、英語表現もまとめました。

  • 「禍々しい」の意味や読み方について解説します

    「禍々しい」の意味や読み方について解説します

「禍々しい」の意味と読み方とは

まずは「禍々しい」という言葉の読み方や、基本的な意味を解説します。よく似た言葉との違いや使い分けについても説明します。

「禍々しい」の意味

「禍々しい」の意味は、「悪いことが起こりそう、不吉である」です。

このほかに「好ましくない」「いかにももっともらしい」といった意味もありますが、普段よく使われるのは1つ目の意味が多いでしょう。

「禍々しい」の読み方は「まがまがしい」

「禍々しい」は、「まがまがしい」と読みます。知らないとなかなか難しい読みですので、この機会にしっかりと覚えましょう。

「禍々しい」の「禍」は、一文字で「か・わざわ(い)・まが」と読み、「災難や不幸そのもののこと、またそれらをひきおこす原因。よくない事柄」などを意味します。

禍根・戦禍・水禍・災禍・惨禍・大禍・舌禍など、悪い出来事を表す熟語に使用される漢字です。最近では、「コロナ禍」という喜ばしくない言葉ですっかりポピュラーなものになりました。

「凶々しい」とも書く

「禍々しい」は、災いや、悪いという意味を持つ「凶」を用いて、「凶々しい」と書くこともあります。

こちらも読み方は「まがまがしい」です。また、「曲々しい」と書くこともあります。

「禍々しい」の使い方と例文

「禍々しい」の意味を理解したところで、具体的な例文を見ていきましょう。

・夜の病院は、禍々しい気配に満ちている
・禍々しい音楽と共に、ショッキングな場面が映し出された
・その客は、入店時からなにやら禍々しい雰囲気を醸し出していた
・それまでの穏やかな状況が一転、禍々しい空気に包まれた
・突如複数の犬が大声でほえ出し、禍々しさを感じた

「忌ま忌ましい・忌々しい(いまいましい)」との違い

「忌ま忌ましい・忌々しい(いまいましい)」は、「非常に腹立たしい、癪(しゃく)にさわる」「けがれや不吉なものを避けるために慎むべきである」という意味のほか、「禍々しい」と同じく「不吉である、縁起が悪い」という意味があります。

ただし、普段この言葉を使うときは「ひどい仕打ちを受けて、忌ま忌ましい気持ちになった」などの形で、「腹立たしい」の意味として使うことが多いでしょう。

「由々しい・忌々しい(ゆゆしい)」との違い

「由々しい・忌々しい(ゆゆしい)」の意味は「不吉である」「うとましい、嫌な感じである」のほか、「程度がはなはだしく、容易ではない」「神聖であるため恐れ多い、慎むべきである」「すばらしく立派である」などの意味があります。

「禍々しい」と同じ意味も持ちますが、「これは由々しき事態だ」など、「程度がはなはだしく、容易ではない」という意味で用いられることが多いです。

「禍々しい」の類語・言い換え表現

先にも記したように、「禍々しい」には「悪いことが起こりそう、不吉である」「好ましくない」などの意味があります。

似た意味を持つ言葉がありますので、いくつかご紹介しましょう。

不吉(ふきつ)

ご存じの人も多いように、「縁起が悪い、前兆のよくないことやその様子」といった意味を持つ表現です。「不吉な予感」「不吉な夢」などの形で使用します。

不祥(ふしょう)

意味は「不吉であることやその様子」「不運」で、前者は「禍々しい」と重なります。なお、同じ読みで「詳しくは不明であること」を表す「不詳」と漢字を間違いやすいので、注意しましょう。

凶兆(きょうちょう)

「よくないことが起こる前ぶれ、不吉な兆し」を表します。

忌まわしい(いまわしい)

意味は「不吉である、縁起が悪い」や「嫌な感じである、不愉快」となります。「彼には、若いときの忌まわしい思い出がある」などの形で使います。

不穏(ふおん)

「状況が穏やかでなく、危険な感じを含み持っていることやその様子」を意味します。「なにやら不穏な空気だ」などの形で使用します。

悍ましい(おぞましい)

「嫌な感じがして不愉快であること、ぞっとすること」という意味を持ちます。「悍ましい(おぞましい)光景」などのフレーズで見聞きしたことがある人も多いでしょう。

  • 「禍々しい」の類語や対義語も知っておくと理解が深まります

    「禍々しい」の類語や対義語も知っておくと理解が深まります

「禍々しい」の対義語

それでは次に、「禍々しい」とは反対の意味を持つ言葉を見てみましょう。

吉兆(きっちょう)

「よいことや、おめでたいことが起こる兆し」という意味になります。類語で紹介した「凶兆」と対になる言葉です。「吉兆を表すように、突如として雨が上がった」などの形で使用します。

好ましい(このましい)

「感じがよく、感覚的に好きと感じる。自分の好みに合う」「望ましい」という意味を持ちます。特に前者が「禍々しい」と反対の意味になるでしょう。「私にとって好ましい味付けだ」などの形で用います。

神々しい(こうごうしい)

意味は「気高く、神聖で尊いさま」となります。「禍々しい」の持つ「悪いことが起こりそう、不吉である」や「好ましくない」というマイナスの意味に対して、非常にポジティブなイメージのある表現です。

福々しい(ふくぶくしい)

「顔つきがふっくらとしており、幸福そうなさま」を表します。こちらは目に見える顔や姿形を表現する言葉として、「彼は福々しい顔立ちをしている」などの形で使います。

「禍々しい」の英語表現と例文

基本的に「禍々しい」は、非常にネガティブなニュアンスを持つ表現です。近い意味を持つ英語表現をいくつかご紹介しましょう。

ominous

「ominous」は、「不吉な、縁起の悪い」という意味を表します。

There was an ominous sign in the room.
(その部屋には不吉な気配が漂っていた)

sinister

「sinister」には、「不吉な、縁起の悪い、悪意のある」といった意味があります。

She felt a sinister symptom.
(彼女は不吉な兆候を感じた)

unlucky

日本語でも「アンラッキー」という言葉を聞いたことがある人が多いかもしれませんが、「unlucky」は「運の悪い、不幸な、不吉な、縁起の悪い」といった意味を持ちます。

In Japan, some people believe that 4 is the unlucky number.
(日本では、「4」という数字は不吉であると考える人もいます)

「禍々しい」の意味を知って正しく使おう

「禍々しい」には、「悪いことが起こりそう、不吉である」「好ましくない」「いかにももっともらしい」という意味があります。インパクトの強い言葉であるため、ビジネスシーンにおいては「嫌な予感」や「不吉」といった言葉の方が一般的で、あまり使う機会はないかもしれません。

ただし、教養の一端として、ぜひ押さえておきたい表現でもあります。会話の中で強い印象を残したり、ひときわ強調したりしたい場合には便利な言葉ですので、しっかり意味を覚えて正しい使い方をしましょう。