昨今、副業や独立をする方が増えています。しかし「みんなが始めているから」と安易にスタートを切ると、成果が出ずに後悔してしまう可能性もあるでしょう。

本稿では、フリーランスエンジニアを経てオンラインスクール「デイトラ」を運営する大滝昇平氏が、「副業」「独立」で直面する会社員との違いについて、数多くのフリーランスを輩出してきた教育者としての目線で分かりやすく解説していきます。

  • 副業する人は増加?

副業・独立をする人は日本でどれくらい?

「フリーランス実態調査2021」によると、2021年時点のフリーランス人口は1,670万人。この数字は、日本の労働人口の約25%にあたります。

  • 出典:ランサーズ 『フリーランス実態調査2021』

また、厚生労働省労働基準局が公表する「副業・兼業の現状」によれば、副業をしている人は2017年時点で1,288人と、25年間で副業者数は約1.7倍に増加しています。

  • 出典:「厚生労働省労働基準局提出資料」※副業・兼業の現状(1)

なぜ今副業・独立する人が増えているのか

では、なぜ昨今においてこれほどまでに副業や独立をする人が増えているのか、筆者が考える理由を以下に3つ述べます。

まず一つ目の理由は、会社員の平均年収が減少傾向にあること。厚生労働省が公表する「平均給与(実質)の推移」によると、2018年の平均給与は約433万円であるのに対し、30年ほど前に遡った1989年の平均給与は約452万円です。

  • 出典:厚生労働省(平均給与(実質)の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)

2つ目の理由として、2019年に金融庁の金融審議会で発表された「老後の30年間で約2,000万円が不足する」という内容を受け、将来の経済的な不安が助長されたことが挙げられます。

この数値はあくまでモデルケース上での試算結果であり、誰にでも当てはまる訳ではありませんが、副業をする人の本業所得は299万円以下が全体の約3分の2を占めるという調査結果があることからも、老後に備えて行動を起こした方は少なくないと考えられるでしょう。

3つ目の理由は、働き方の多様化が進み、大企業の中でも副業が解禁され始めたこと。副業の解禁に伴い、会社に頼らずとも活躍できる人材がフリーランスとして独立している傾向にあります。

同時に会社員として働くのが当たり前だった時代から、自分が納得できる働き方を求める時代へ変化しています。

実際に収入を得られている人はどれくらいいる?

では、実際に彼らはどれくらいの収入を得ているのでしょうか。

一般的なフルタイム会社員に近い「月間就業時間140時間以上」のフリーランスの平均年収を見ると、年収600万円以下の会社員が約8割であるのに対し、年収600万円以下のフルタイムフリーランスは約半数に留まります。

そして年収が増えるほど、高収入を得ているフリーランスの割合は会社員に対して高くなっています。

  • フリーランス白書2020・国税庁「給与階級別給与所得者数」を元に筆者作成

フルタイムで働くフリーランスの場合、会社員と平均年収に大差がない、もしくは会社員以上の収入を得ている割合が高いという結果となりました。

副業・独立する際に直面する会社員との違い

副業や独立でフリーランスとして働く場合、会社員とどのような違いがあるのか以下にあげました。

メリット

・努力次第で収入が増えやすい
・勤務時間や休日を自分で決められる
・勤務場所も自分で決められる
・取引先や仕事仲間を自分で選べる
・「自分のやった仕事だ」という達成感を得やすい
・事業に関わるものを経費にできる

デメリット

・収入が不安定になりやすい
・生活リズムが不規則になりやすい
・社会的信用が落ちやすい
・事務処理など全てを自分で行う必要がある
・健康保険・国民保険が脆弱
・雇用保険や労災保険もない(働けなくなった時のリスクが高い)

雇用された会社以外からの収入で生計を立てる人も多く、今や副業や独立は決して珍しいことではありません。とはいえ、会社員と副業・独立を比較すると、契約形態や働き方、収入の安定性、業務の範囲などあらゆる面で違いがあります。

会社や組織に所属しない以上、フリーランスは仕事がなくなっても自己責任なうえ、収入は個人の持つ能力に依存します。

もしフリーランスを目指すのであれば、これらの違いを踏まえて決断しなければいけません。

副業・独立に必要な能力とは

フリーランスはスキルさえあれば勝負できると思われがちですが、副業や独立をして成功するためには、以下のような能力が求められます。

・決断力
・行動力
・学習欲
・コミュニケーション力
・自己管理能力
・継続力
・経営視点

フリーランスには上司のような存在がいません。なので、自分がやるべき仕事を自ら考え実行していくための能力が必要です。

働き方の多様化が広がり、個人が活躍しやすい時代に変化している一方で、フリーランスと会社員の違いを理解せず、盲目的に副業や独立を選択すると失敗しかねません。

将来のキャリアを左右してしまう懸念もあるため、自分自身に明確な判断基準を設けたうえで、冷静な選択が必要だと言えるのではないでしょうか。