――最後に、すでに放送は終了していますが、1月クールのドラマ『シジュウカラ』についてもお伺いします。40歳の漫画家と22歳のアシスタントとの恋愛模様が描かれる作品で、山口さんは性的虐待を受けた過去を持つ紺野みひろを演じました。役作りについて教えてください。

みひろちゃんのような被害を受けた方の声を読んで、生半可な気持ちでは演じられない、責任を持って演じたいと、勉強して挑みました。主人公の忍さん(山口紗弥加)目線で楽しまれている視聴者の方にとっては「敵」に見えてしまうキャラクターだったかもしれませんが、「メンヘラ」という言葉で片付けられてしまう子にはしたくないと、監督と話していました。なかなか社会に馴染めなくて、トラウマを抱えながらも頑張って生きているという背景を大事に大事にと思って演じました。ストーリーですべてを描くわけではないので、伝わるだろうかと難しく思う部分もありましたが……。

――同じ男性を奪い合うような関係だった忍とみどりは、やがて奇妙な同居生活を始めます。2人の関係をどう解釈していましたか。

みひろちゃんは忍さんが自分を使って寂しさを埋めていると途中で気付くのですが、何が正しくて何が悪いのか自己判断ができない状態で依存の呪縛にはまるとわけが分からなくなってしまうので、自分で考えて自立することの大事さを感じました。忍さんとはあんな別れ方になってしまいましたけど、みひろちゃんが突き放すことによって忍さんも解放されたんじゃないかなと。みひろちゃんが忍さんのためを思っていたのか、ただ思いのままに行動したのかは分かりませんが。

――事務所の先輩である山口紗弥加さんとの共演はいかがでしたか。

紗弥加さんは、普段はキャッキャしていて優しくてとても明るい方なのですが、忍さんスイッチが入ると怖さが見え隠れして、恐怖を感じました。現場では体や健康の相談に乗ってもらいました。

――千秋役の板垣李光人さんの印象も教えてください。

板垣さんとはあまり言葉を交わさなかったのですが、どこか謎めいた部分があって。千秋の謎めいた部分にみひろちゃんがハマっていく要素があったと思うので、同じように板垣さんの見えない部分が千秋に通じるものがあるのかなと捉えてお芝居をさせていただきました。

――3つの作品のお話から、改めて山口さんの役への深いアプローチを知ることができました。役作りのこだわりがあれば教えてください。

結局演じるのは私なので、全く別の人物になれるわけではない。だから自分の実体験や感情を記憶に保存しておいて、演じるときに役に投影するという方法を採っています。そう考えると、素直に体験することと、その体験を客観的に覚えておくこと、2倍考えて生きているのかもしれないですね。職業病です。たとえば親と対峙するというお芝居のときには、反抗期時代を思い出して、「こんな言い回しをされて、嫌な気持ちになったな」という記憶を引っ張ってくる。この方法だと、経験していないような役が来たときなかなか苦労するんですけどね(笑)。自分の経験を引っ張ってきて作り上げた感情や物語でキャラクターに息を吹き込むという作業は、すごく楽しいです。

「映画学科」での大学生活や、今後の目標について語ったインタビュー後編は、4月下旬公開予定。
■山口まゆ
2000年11月20日生まれ、東京都出身。2011年、『真夏の夜の夢〜LOVE2011』で初の舞台出演を果たし、子役として活動。2014年より本格的に芸能活動を開始し、2014年、『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』でドラマ初出演。2015年、ドラマ『アイムホーム』で木村拓哉演じる主人公の義理の娘役に起用され、同年、ドラマ『コウノドリ』で中学2年生の妊婦役を演じて話題に。代表作に、ドラマ『明日の約束』、『海と空と蓮と』、『シジュウカラ』、映画『相棒 -劇場版IV- 首都クライシス 人質は50万人! 特命係 最後の決断』、『下忍 赤い影』、『樹海村』、『軍艦少年』、『真夜中乙女戦争』など。現在『未来への10カウント』放送中。ショートムービー『それは、ただの終わり』は池袋シネマ・ロサ にて23〜29日に1週間限定公開。