――続いて、小川貴之監督の短編映画集『3つのとりこ』のショートムービーの1つ『それは、ただの終わり』(池袋シネマ・ロサ にて23〜29日1週間限定公開)についてお伺いします。上空に謎のバルーンが漂う東京で消息を絶った恋人を探すというあらすじで、SF的な要素もありながら今の時代とリンクしている部分もある独創的な作品ですが、演じた感想を教えてください。

日常の一見何気ない会話を中心に進行していくのですが、その会話が噛み合っているようで噛み合っていない。確かにこういうこと、あるなと。ドラマや映画での会話ってキレイに成立していて見やすいじゃないですか。でも実際日常会話では「上手く伝わらないな」「意思疎通できないな」「そうじゃないんだけどな」と細かいズレが起こったりする。それを台詞としてやり合うのが難しかったです。

私が演じるみどりの彼氏・臣くんが失踪するところから物語が始まりますが、みどりと衣舞さん(黒沢あすか演じる臣くんの母親)は会話が噛み合わずイライラしている間に、だんだん臣くんを探すという目的を見失って、相手を説得させることが目的にすり替わってしまう。演じていて本当にイライラしてくるくらい、「伝わらない」ってこんなにつらいんだなと。結局みどりも「自分の思う通りにならない」というストレスを何とかしたい気持ちが大きくなって、衣舞さんに「ほら私の言う通りだったでしょ」と言いたかったんだと感じます。

――山口さんのお話を聞いて、初めて「会話のズレ」のリアリティラインがかなり高く設定されていたことに気付きました。その点も含め、ショートムービー『それは、ただの終わり』の見どころを教えてください。

みどりの視点、衣舞さんの視点、この2人を引いて見る視点、いろんな見方ができる作品です。私はみどりのことは理解できたけど、衣舞さんには共感できなくて、それもまた人それぞれだと思うので、面白いなと。会話の違和感も楽しんでもらえたらうれしいです。