コロナ禍を受け事業の再構築を迫られている企業は多い。そんな一社であるファットエバーが、新たに経理代行サービス「MRYメソッド」をスタートさせた。サービスの実現に当たっては、NTT東日本の「AIよみと~る」や「おまかせRPA」等が利用されているという。同社の代表社員 神村朋和氏に導入の経緯と狙いについて伺っていきたい。

  • MRYメソッド事業部 代表社員の神村朋和氏(左)、谷郁子氏(右)

経理代行サービス「MRYメソッド」とは?

ファットエバーは、もともと飲食事業やハウスクリーニング事業を展開していた合同会社だ。しかし、新型コロナウイルス感染症流行に伴い2020年3月に発令された緊急事態宣言を受け、5月には飲食事業から撤退。ハウスクリーニング事業は緊急事態宣言解除後にある程度通常の流れが戻ってきたものの、自社運営から外注中心への移行を余儀なくされた。

社会情勢の変化により事業の再構築を迫られるなか、同社が新たにスタートさせたのが、オンライン経理代行サービス「MRYメソッド」だ。

  • オンラインで経理代行を行うサービス「MRYメソッド」

これは、会計ソフトへの入力、試算表作成、給与・賞与計算、請求書の発行、売掛金・買掛金の管理、経費精算、経理業務内容の設計や提案など、経理にまつわるさまざまな作業を、オンラインで代行してもらうことができるというもの。また、事業主に必要となる経理情報がすぐに閲覧できる状態になることも大きなメリットといえる。

料金は「フルサポートプラン」で月額6万5,000円から、「事務作業軽減プラン」であれば月額3万8,000円から用意されており、このほか、お試しとして月額15,000円から依頼できる「お試し代行プラン」も用意されている。

「経理の専門家の手を借りたいが、雇い入れるほどではない(もしくは雇い入れる余裕がない)」という中小企業、「経理をアウトソーシングし、自分は本業に集中したい」という個人事業主などに適したサービスといえるだろう。

実体験から生まれた中小企業と士業を繋げるサービス

同社の代表社員 神村朋和氏は、自身が会社を立ち上げた際の実体験から、このサービスを思いついたという。

  • ファットエバー MRYメソッド事業部 代表社員 神村朋和氏

「私は2010年にファットエバーを一人で立ち上げました。ですが、バックオフィス部分はずぶの素人で、何も分からない状況からWebで会計事務所を探したことを覚えています。経営していく上で、税金に関する諸事情の影響は大きいものです。日本には中小企業が非常に多く、同じように困ってらっしゃる方がたくさんいると思ったのです」(神村氏)

また、事業を行う中でさまざまな士業の方と出会い、その困りごとを聞いてきたこともきっかけのひとつとなったそうだ。経理業務は士業の属人的な仕事になりがちで、経験と人脈がなければなかなか仕事に結びつかない。経理代行のようなサービスは特定の会計事務所と紐付いていることが多いが、「MRYメソッド」はどの会計事務所にも対応するのが特長だ。

「俗にいう士業さんたちは、資格を取ってから運営を始めるのが難しいという状況があります。中小企業さんと士業さんをサポートすることで、両方にプラスになるのではないかと考えました」(神村氏)

とはいえ、経理業務は法令に則って行う業務であるため、他のサービスとの差別化が難しい。しかし、コロナ禍でテレワークが急速に広まったことで、オンラインで完結するサービスの需要は高まりを見せている。また、Zoomを初めとしたオンラインツールを活用することで移動時間などが削減されること、オンラインであるがゆえに全国でサービスを提供できることも、「MRYメソッド」の強みといえる。

この「MRYメソッド」を陰から支えているのが、NTT東日本が提供するサービスだ。特に「AIよみと~る」「おまかせRPA」は、素早く正確な経理処理を実現し、多数の企業の業務を代行するのに欠かせないという。

NTT東日本のオンラインセミナーとは?

神村氏が「MRYメソッド」を始めるきっかけとなり、「AIよみと~る」や「おまかせRPA」を知る場所ともなったのが、NTT東日本が開催しているオンラインセミナー。NTT東日本 神奈川支店 第二ビジネスイノベーション部の大西桃花氏は「もともとは新型コロナウイルスの影響が始まってから、非対面ビジネスのお手伝いをするためにオンラインセミナーを開始しました」と話す。

「初めはZoomやTeamsなどのWebツールをご紹介していましたが、その後、補助金を利用して企業の後押しをしようという動きが盛んになってきました。そういった制度をより活用してもらうために、信用金庫さまやコンサルタント会社さまとも連携しながら、セミナーを充実させていきました」(大西氏)

  • NTT東日本 神奈川支店 第二ビジネスイノベーション部 大西桃花氏

ファットエバーは、もともと西日本を活動の中心としており、関東に戻ってくるにあたり、新たなシステムを探していた。そして神村氏がクラウドストレージサービス「コワークストレージ」に魅力を感じていたことから、NTT東日本に相談。その流れでオンラインセミナーについて知ったそうだ。

「我々がお取引をしている平塚信用金庫さんがNTT東日本さんとタイアップしてセミナーをやられており、それに参加したのが本当の最初だと思います。ちょうど事業再構築補助金の話も出ており、そういったものも活用できたら良いなと考えていました」(神村氏)

こうして同社は、「MRYメソッド」の根幹を担うことになる「AIよみと~る」と「おまかせRPA」との出会いを果たした。同サービスは現在、顧客が帳票を「コワークストレージ」にアップロード、それを「おまかせRPA」が自動で確認し「AIよみと~る」で文字を認識。そのデータが弥生会計に入力され、最終的なデータをCSVで出力。そして顧客の希望する納品形態に変換する、という流れを基本としている。

「AIよみと~る」と「おまかせRPA」の特長

「AIよみと~る」は、手書き文字を認識し、読み取りを行って、それをデータ化するOCRサービスだ。AI技術を用いることで、従来は認識が難しかったクセのある手書き文字や、定形外のフォーマットにも対応が可能となり、その読み取り精度は96%以上。ブラウザベースの利用者画面をマウスで直感的に操作するだけで設定が可能なため、ITに詳しいスタッフがいなくとも利用できるのも大きな特長といえる。

「初めて見たときは単純に技術としてビックリしたというのが正直なところです。いくつかのOCRとも比較しましたが、認識精度はもちろん、訂正印を外して読んだりできるのはすごいと思いました。これからどんどんグレードアップされると伺いましたので、本当に楽しみです」(神村氏)

  • ITに詳しくなくとも利用できるAI-OCR「AIよみと~る」

「おまかせRPA」は、Windows端末上のさまざまな業務を自動化できる、業務効率化(RPA)ツール。NTT研究所が開発し、7,000社以上の導入実績を誇る純国産RPAツール「WinActor」を採用しており、作業時間や人的コスト、業務の品質向上などを実現できる。また、AI-OCR「AIよみと~る」と連携させることで、その効果をより高めることが可能だ。

「RPAは素晴らしい技術だと思いますが、まだ使いこなせていないというのが率直なところではあります。NTT東日本さんに設定をしていただいて、通常通り問題なく動いているときは良いのですが、なにかイレギュラーが発生したときにこちら側が対応できないという課題があります。我々自身もこれからもっと理解していかなければならないと思います」(神村氏)

  • 「おまかせRPA」と「AIよみと~る」を連携させることで帳票の処理効率がより向上する

NTT東日本の大西氏は、「今回、ファットエバー様には有償の訪問サポートを申し込みいただきましたが、自動化を検討されていたのが複雑な内容でしたので、各サービス間の連携が可能か否かの検証や、シナリオを各サービスの仕様に合わせる必要がありました。当社内でSE担当とも検討を繰り返し、ファットエバー様とも打ち合わせを繰り返し、少しずつご希望の形に近づけることができました」と導入時の苦労話を語った。

神村氏の思いは「事業主さんの時間創出」

経理において"作業"になりがちな部分をAI-OCRやRPAによって削減したことは、顧客対応への余裕をも生んでいる。それが「MRYメソッド」のサービス品質の向上に繋がっているという。

「AI-OCRやRPAによって、お客さまへのレスポンスの迅速化や、顧客のシナリオに合わせたサービスを展開する時間を確保できていると思います。私どもの業務はアウトソーシングという形にはなりますが、お客さまに寄り添い、社外スタッフのように頼っていただければ幸いです」と谷氏は話す。

「MRYメソッド」のモットーは、"時間創出"にある。「経理に関わる時間を削減し、本業に特化して欲しい」というのが、自らも事業主である神村氏の思いだ。

「創業から3年目、4年目あたりの事業主さんを主なターゲットとしてサービスを展開していきたいと考えています。例えば内装業さんは、内装のお仕事をずっとやってこられてきたわけですよね。しかし、ある時期からは社長として会計についても真剣に考えなければなりません。そんなとき、我々がNTT東日本さんの技術を使ってバックオフィスの部分を引き受けることで、事業主さんの時間を創出してあげられればと思います。」(神村氏)

最後にNTT東日本の大西氏は、今回の導入を振り返るとともに、営業担当としてその思いを述べた。

「昨今、AIやクラウド、自動化というワードが増えていますが、相談相手がおらずお困りの方も多いと思います。我々NTT東日本の営業担当は、お客さまの声を直接聞けることが強みです。地域に密着し、地域を盛り上げていくようなサービスを提供し、そしていただいたお声を当社内にも届けていきたいと考えております」(大西氏)

  • インタビューは終始朗らかに行われ、ファットエバーとNTT東日本の結びつきの強さを感じられた

なお、「MRYメソッド」は2022年6月30日まで、利用一カ月無料キャンペーンを実施している。サービスを検討している方は、この機会に一度問い合わせをしてみてはいかがだろうか。