徳島空港から車で約2時間半。標高1000mを超える山々に囲まれた「四国のチベット」とも言われる山奥の限界集落に、なぜか今、県内外から人が集まるという。そのお目当てはというと……、世界一美しいコンビニ「未来コンビニ」だ。
今回は、「世界一美しい」と言われる理由をはじめ、実際の店舗の様子など気になるアレコレを調査してきたので皆さんにお届けしていこう。
国内外の名だたるデザイン賞を獲得
「未来コンビニ」は、でこぼこ道を抜け、美しい山々に囲まれた場所に、こつ然と現れる。近代的でスタイリッシュな外観が、その場所とあまりにもイメージがかけ離れており、「なぜこんなところに?」「これは本当にコンビニ?」と言った、疑問が頭を駆け巡る。
「未来コンビニ」があるのは、徳島県の那賀郡那賀町木頭地区。同地区出身の実業家・藤田恭嗣さんによって、地域の活性化プロジェクトの1つとして2020年4月に誕生した。
木頭地区は人口約1000人、65歳以上が過半数を占める限界集落である。さらに、最寄りのスーパーまでは車で約1時間半と、決して利便性が良いとは言い難いエリアだ。そんな場所に位置する「未来コンビニ」は、買い物難民を救い、さらに木頭地区以外からも人を呼び込むことを目的に建設された。
実際、これまでの来店者数を伺うと、地域住民はもちろん県内外から観光客が訪れ、延べ57,700人(2022年2月末時点)が来店したという。観光資源が乏しい山奥の地に、「未来コンビニ」1つでここまで人を呼びこめることに驚いた。
また、"世界一美しいコンビニ"がコンセプトの「未来コンビニ」だが、その名にたがわぬ名立たるデザイン賞を総なめにしている! 世界三大デザイン賞の1つ「レッド・ドット デザイン賞」をはじめ、日本最大級の空間デザインアワード「日本空間デザイン賞2021」など、国際的に権威ある賞を獲得し、なんと計10冠の栄光を手にしている。
名実ともに世界一美しいコンビニは、一体どんな場所なのだろうか。それでは早速見ていこう。
普通のコンビニとは一味違った店内
「未来コンビニ」は、木頭の特産であるゆずの木をイメージした建築構造を、デザインの軸にすえている。ゆずを想起させる黄色く塗られたトラス構造が、より一層明るい雰囲気を醸し出す。さらに、大きな窓ガラスが開放感を演出し、その場にいてなんとも気分が晴れやかになる。
また、店内奥にはカフェスペースがあり、ソフトクリームなど店内のカフェ商品を堪能できるのはもちろん、地元住民や観光客のコミュニケーションスペースとしても使用されている。
地域に根差したラインナップ
店内には、一般的なコンビニでも売られているお菓子やドリンク、日用品に加え、木頭の名産である「木頭ゆず」を使った商品など、その土地ならではの特産品がずらり。これらを購入できるのはもちろん、その場で味わうこともできるというので、筆者も早速いただいてみた。
「木頭ゆず」を使ったアイテムなどこだわりの品々
はじめに、店内にあるYUZU CAFEで販売している、「なかほら牧場のソフトクリーム」(450円)を。岩手県にある「なかほら牧場」の上質な牛乳を使ったソフトクリームは、コクがありつつも、あっさりとした味わい。
次に、新鮮な木頭ゆずを丁寧に手搾りした果汁「木頭ゆずショット一番搾り 20ml」(200円)をごくり。「これぞビタミンC!」と言うような、とにかくパンチが効いた酸っぱさに驚かされた。
そのほか、ゆずさば缶などおつまみにぴったりの商品から、木頭ゆずを使ったソープやシャンプー、コンディショナーと言った美容アイテムまで、木頭ゆずにこだわった商品展開がなされている。
「カモ谷製作舎」の高品質なコーヒー
また、「未来コンビニ」で販売されているお土産の1つに「カモ谷製作舎」のコーヒーがある。今回の旅では、同社の実際の店舗にも訪れることができたので、商品と併せて紹介していこう。
「カモ谷製作舎」は、「加茂谷地区」の風景や街の雰囲気に惚れこんだ、移住者夫婦が営むスペシャルティコーヒーの専門店。
全世界で生産量5%にも満たない高品質のコーヒーを取りそろえており、「カモ谷製作舎」の店舗では販売する8種類全てが試飲可能となっている。深煎り・浅煎りなどテイストの異なる豊富なラインナップに加え、「オヘンロ」や「ミヤノマエ」と言った地域特有の一風変わった商品名も特徴的だ。
店主の岡崎さんいわく、「苦みや酸味など味の感じ方は人によってそれぞれ。自宅でも好みのコーヒーを楽しんでもらうため、説明書きだけでなく購入前に実際に飲み比べてもらっているんです。そのような体験を経て、自身の好きな味わいを見つけてほしいです」と話す。そこで筆者も特別に試飲させてもらい、"自分好み"をセレクトしてみた。
個人的に気に入ったのは、酸味が少なく深い味わいの「ほろほろ」と、コーヒーだがごくごく飲めるような苦みと酸味のほどよいバランスが特徴の「ごくごく」。筆者は、今回デスクでも簡単に飲めるようにとティーバッグタイプを購入した。
「ごくごく」「ほろほろ」をはじめ、「カモ谷製作舎」の商品は「未来コンビニ」でも手に入れることが可能。ぜひこちらもチェックしてみてほしい。
その土地の魅力を伝える「未来コンビニ」は、木頭地区はもちろんのこと、徳島県の未来をも背負う場所だった。限界集落の再生といった挑戦を続ける、一風変わったコンビニをぜひあなたも訪れてみてはいかがだろうか。
■Information
未来コンビニ
【場所】徳島県那賀郡那賀町木頭北川いも志屋敷11-1
【営業時間】8:00~19:00
【定休日】木曜日カモ谷製作舎
【場所】徳島県阿南市加茂町宮ノ前45−1
【営業時間】金・土曜日 11:00~17:00
【定休日】月~木曜日、日曜日