2年にわたるコロナ禍により、就職活動の現場で起こった変化について紹介する4社合同オンライン説明会が2月10日に開催された。

登壇企業4社はそれぞれ「新卒」「第二新卒」「主婦」といった分野から10分程度のプレゼンを実施。採用市場における働き手と企業のトレンドを解説した。

  • コロナ禍の就活トレンドは「在宅・IT」

フレキシブルな働き方を望む層は増加

家庭と仕事を両立したい主婦に向けた時短求人を多く取り扱う派遣紹介事業などを展開する「ビースタイル スマートキャリア」。ブランドマネージャーの金高幸恵氏は「withコロナで、主婦から広がるフレキシブルな働き方」をテーマにプレゼンを行った。

「職種別では給付金支給やワクチン接種などによるコールセンターの需要でスーパーバイザーやそれに関わる事務的軽作業、医療事務などもコロナ禍で増加しています。生産性向上に着手した企業も多いことから、IT化やシステム改修周りの求人が増えた一方、一般事務の求人が減少。オンライン化に伴いユーザーサポート・ヘルプデスク求人なども増加し、こうしたIT化・オンライン化の傾向はコロナ後も続くと考えています」

2020年8月頃から正確な数字が取っている在宅派遣の求人数も伸び、2020年8月と2021年12月単月で比較すると240%に。コロナ前から微増傾向にあった男性登録者の比率も急増しているという。

「在宅型のお仕事は出社型と比べて求職者からも人気で、選考水準は高い。高時給帯の求人の伸び率も高く、企業側のニーズとしてはITツールへのリテラシーを持ち、自走できる働き手への需要が高まっている印象です。フリーランスの安定収入、介護との両立、定年退職後の社会との繋がりなど、性別や年齢を問わずフレキシブルな働き方を望む層は広がっています」

IT人気の背景にあるキャリア観の個人主義化

UZUZからは専務取締役の川畑翔太郎氏が、コロナ禍で拡大するリスキリングの背景について語った。若者がより満足度の高いキャリアを手に入れるため、同社は第二新卒・既卒・フリーターなどの若手人材に特化した就業支援・学習支援、キャリアコーチングを提供している。

「コロナ前は飲食や旅行など、自分がやりたいことに近い仕事、業務イメージが湧きやすい業界を志望する方が比較的多い傾向にありました。しかしコロナ以降、20代〜30代では先行き不安などから、市場ニーズと将来性のあるIT分野に大移動している感覚です。『難しそう』『つまらなそう』といったイメージもあり、コロナ前のIT就職は売り手市場でしたが、コロナ禍で非正規社員などのリスクや先行き不安が強く経験されたことで、求職者の志向の変化を感じます」

国もITデジタル領域の人材育成に3年間で4000億円投下する方針で、各都道府県レベルでもIT人材の育成・リスクリングの動きが加速しているという。

「IT就職のニーズ増加の根幹には、副業など2010年代後半から安定に対する考え方の個人主義化があります。かつて安定は組織に求めるもので、より良い組織を選べば実現できる考え方が主流でした。コロナ以降は組織を当てにせず、自分で自分の身を守る意識が強くなった。結果的に将来性があり、手に職もつくIT分野でのリスキリングの需要が高まっていると考えています」

入社後のミスマッチを防ぐ取り組みとは

続いて登壇したのは、自社の採用選考フローの改革に取り組むプレシャスパートナーズ人事部部長・中川梓氏。

実際に退職してしまった社員の赤裸々な退職理由や離職率を自社のブログや採用面接で公開するなど、できる限り入社前後のギャップを埋めることで、ミスマッチを防ぐ取り組みに力を入れている。

コンサルティング事業を手掛ける同社は、2013年から本格的に新卒採用を始め、2015年の新卒採用で17名と今までの約3倍の新卒者を採用した。が、その50%が1年間で離職した過去があるという。

「事前に学生さんにありのままの仕事を開示するような採用選考フローで、入社後の離職を防止に取り組んでいます。具体的には社内見学を実施し、人事だけではなく、会いたい社員に話を聞ける社員面談の仕組みを選考フローに組み込みました。内定後は実際の仕事や社内イベントを体験し、社内風土を肌で感じてもらった後で、内定を受理の判断してもらうかたちです」

ゴミ箱行きのお祈りメールが次のチャンスに

トリを務めたのはABABA代表取締役の久保駿貴氏。岡山大学修士課程1年に在学中の久保氏は、新卒採用の最終面接で採用ができなかった学生を企業間で推薦し合い、他社が推薦する学生を採用できる機会を得られるプラットフォーム「ABABA」を運営する。

2020年11月の創業ながらすでにユーザー企業は300社を突破。6000万円の資金調達に成功させるなど新卒領域のサービスとしては、いま最も勢いに乗るサービスだ。

久保氏は「平均エントリー数26〜27社のうち最終面接まで進むのは2社」「最終面接で落ちると約12時間が無駄になる」といったデータを紹介。

「就活生の7人に1人が“就活鬱”を発症し、就活失敗が原因で年間200に近い学生が命を絶っているとされ、日本の社会課題となっています」と語り、同時に企業の採用担当者にとっても、お祈りメールの送信が大きな心理的ストレスになっていることを指摘した。

「企業側の取り組みの一例として、食料品メーカー『カゴメ』さんは不採用になった就活生へ自社商品セットを送り、面接を受けてくれた就活生、つまり自社のファンを失わない取り組みをしています。ただ、あえて苦言を呈するとすれば、人生をかけて就活をしている学生にとって、これは本質的な取り組みとは言えません。その後の就職活動を応援するABABAは、こうした就活生の本質的な課題に切り込んだソリューションです」

ABABAはこれまでのようにテンプレートなお祈りメールではなく、ユーザー企業が最終面接まで進むも採用に至らなかった就活生に対し、専用の招待コードを送る仕組みだ。不採用後も企業と学生の関係性を良好で継続的なものにしていく対応が求められていることを強調した。

「招待コードから就活生が『ABABA』に登録すれば、ユーザー企業様はその情報をもとに他社の最終面接まで進んだ学生さんへスカウトを送ることができます。ゴミ箱フォルダー行きの無価値なお祈りメールが、次のチケットへ変わる仕組みです。コロナ禍の社会では成長機会を損失した大学生が、就活で差別化を図ることがいっそう困難になるなか、企業にとって他社の選考による人物評価は間違いなく重要な指標になります。企業同士が連携する合理的な採用手法を実施する国は世界でもありません。企業がより生産的な活動にリソースを割くためにも、『ABABA』は採用の効率化で企業の発展に貢献していきます」