「戦艦大和」といえば、日本海軍が造った世界最大の戦艦ですが、とある模型が話題になっています。投稿者は、広島県に本社を置く精密部品メーカー「キャステム」のIRON FACTORY IKEDA(キャステム)さん(@IRON_IKEDA)です。

髪の毛に乗ることができる程小さい物も作れます。(画像は戦艦大和)
自社の商品を世界一小さく作れば広告にもなりますよ。
様々なご依頼お待ちしてます(@IRON_IKEDAより引用)

  • (@IRON_IKEDAより引用)

1枚目の指先についた"白い点"。「画像は戦艦大和」とありますが、白いチリのように見えます。

しかし拡大してみると……

  • (@IRON_IKEDAより引用)

同じ画像には見えませんが、なんと「戦艦大和」だそう。全長263メートルの「戦艦大和」を全長0.5mmで再現しており、主砲部分は約直径0.003mmとのこと。日本人女性の髪の毛の太さは平均約0.08mmと言われているため、手乗りどころか「髪乗り」サイズです。

この投稿に「もはや意味がわからない さすがに製造方法の予測がつかない」「マジでどうやって作ってるの? 衝撃!!!!!!」「凄い技術だけど思わずくしゃみせんように気をつけねば」「やだ~髪の毛に戦艦大和ついてるやーん って凄すぎやろ!」と驚きの声が続々。

どう作ったのか想像がつかないこの写真、キャステムに所属し京都先端科学大学に出向している桝谷周平さんに製造方法を伺いました。

髪の毛に乗る「戦艦大和」、どうやって作ったの?

――全長0.5mm、主砲部分は約直径0.003mmと極小サイズの戦艦大和、どんな素材で作られているのでしょうか。

ベースは樹脂で作っており、その周りに約40nm厚で白金をコーティングしています。

――1nm(ナノメートル)は0.000001mmなので、40nmは0.00004mmですね。想像がつかない世界です……。どのような技術で作られたのでしょうか。

京都先端科学大学とキャステムが共同で取り組んでいる「Castem 超微細3Dプリントサービス」を用いて製作しました。これは最小200nmの形状が製作出来る3Dプリンターを使用した技術で、UV光で硬化される樹脂に超微小径レーザーを照射し、製品形状に加工していく仕組みです。従来、このような技術は限られた形状の加工しか出来ませんでしたが、この3Dプリンターはほぼ全ての形状の加工をすることが可能です。

――製作にはどの程度時間がかかりましたか?

数週間にわたってソフトウェア上の細かい設定や、ハードウェアの微調整などのトライ&エラーを繰り返して製作しました。以上の条件が確立できれば、2時間程度で繰り返し製作することが可能になります。

――この技術はどんな分野で活用されているのでしょうか?

半導体、医療、バイオなど様々な分野で活用されています。皆さんの身近なものでいえばスマートフォンもそのひとつですね。年々スマートフォンが高性能になっている理由のひとつに、このような技術が進化して、内部の部品をより微細に、複雑化することが可能になったことが挙げられます。

――ツイートを見た方からも、驚きの声が多数寄せられています。

「嬉しい」というのが率直な感想です。製作されたものが評価されるのはもちろんですが、こういった技術が様々な分野の方に認知されフィードバックを頂けている現状がとても嬉しく思います。今後は、さらに研究・試験を進め、より良い技術を構築し、社会に貢献していけたらと思います。


キャステムのTwitterアカウントでは、精密部品を製造する技術を活用した面白いアイテムや、ちょっと変わった社食なども紹介しています。一見難しい最先端の技術ですが、意外と身近な凄い技術のご紹介でした。