FCAジャパンはフィアット プロフェッショナル「デュカト」(DUCATO)の日本導入を決定した。欧州ではシェアNo.1の商用車だが、日本で狙うのは過熱するキャンピングカー市場。車内でゆったりくつろげる広い室内空間を武器に、キャンプブームの日本でオンリーワンの選択肢を目指す。
大型バンの決定版!
デュカトは2020年に誕生から40周年を迎えた大型バン。欧州の商用車市場で7割のシェアを持つクルマで、RVのベース車両としても地位を確立している。
FCAジャパンはキャンピングカーのベース車両を主な用途と想定してデュカトを日本に導入する。ボディサイズは3種類で、最も小さい「L2H2」は全長5,413mm、全幅2,050mm、全高2,524mm。基本的には事業者向けに販売(BtoB)する方針で、今後はデュカト専門の販売ネットワークを構築する予定。候補は車両架装を専門とする法人(キャンピングカービルダーなど)や既存のディーラー(FCAジャパンとグループPSAジャパン)などから幅広く募集する。価格は未架装の状態で469万円からだ。
-
FCAジャパンが「ジャパンキャンピングカーショー2022」(幕張メッセで2月13日まで)で初公開した日本仕様の「デュカト」。展示車両は日本で売る3タイプの中で最も小さい「L2H2」だ。ほかにロングホイールベース版の「L3H2」(全長5,998mm、価格は+10万円)、ロングホイールベースかつハイルーフの「L3H3」(全長5,998mm、全高2,764mm、価格はL3H2に+10万円)を用意する
日本仕様は右ハンドルで、エンジンに日本の道路環境に合わせたチューニングを施したり、ナビのソフトを日本製にしたりといったローカライズを実施してある。日本独特の特徴としては、リアゲート(観音開き)が270度まで開くようになっているとのこと。日本の狭い駐車場などでリアゲートを開けっ放しにしておきたいとき、従来のドア開度(180度)では隣のクルマにぶつかってしまうため、こうした変更を加えたそうだ
デュカトをベース車両に使ったキャンピングカーは、今も日本で売っている。そうしたクルマの多くは、欧州などのキャンピングカービルダーが作った完成車両を並行輸入したもの。スペースが広くて快適なのは間違いないのだが、例えば椅子が欧米の顧客の体格に合わせた高さになっていたり、シャワーが付いていたりして、日本のキャンピングカーユーザーのニーズにガッチリとはまっていたかといえば、そうではない部分もあったそうだ。「シャワーは付いていた方が便利なのでは?」と思ったのだが、日本のユーザーは出かけた先で温泉に入ったりするので、必ずしもマストの設備ではないのだという。
FCAジャパンが素の状態のデュカトを売るようになれば、日本のキャンピングカービルダーがそれを購入して、日本のユーザーに合わせたキャンピングカーに仕立てて売ることが容易になる。全国的なディーラー網ができればサービスも受けやすくなるし、交換したいパーツも手に入りやすくなるはずだ。
ただ、デュカトは実物を見るとかなり大きい。日本では規格外といった感じもするが、「逆に、そこを狙っていきたい」というのがFCAジャパン担当者の考えだ。国産の商用車やミニバン、あるいはバンタイプの軽自動車などでキャンピングカーライフを楽しんでいる人が、「もう少し広い室内空間が欲しい」と思ったときの選択肢として、デュカトに商機がある。昨今のキャンプブームで手軽なキャンピングカーを購入した人も多そうだから、そうしたユーザーの乗り換え需要は今後、ますます増えていきそうだ。
こうした大型バンはメルセデス・ベンツやフォード、フォルクスワーゲンなど多くのメーカーが製造しているそうで、豪州などではデュカトも含め競合が激しいそうだが、日本の道路環境には大きすぎるため、日本市場は「誰も見ていなかった」(FCAジャパン担当者)とのこと。デュカトはライバル不在の日本市場に参入し、キャンプブームを追い風に大型バン需要の取り込みを図る。
日本向けデュカトの生産開始は2022年第2四半期の予定。納車開始は同第3四半期を見込む。