JR東日本は8日、列車の安全性向上や将来のドライバレス運転で必要とされる技術として、車両前方にステレオカメラを搭載し、障害物をリアルタイムで自動検知するシステムについて発表した。JR東日本研究開発センターの先端鉄道システム開発センターにより、開発が進められている。

  • 障害物検知システムによる検知動作の流れ(提供 : JR東日本)

障害物検知システムは、車両の前方に搭載した2台のカメラ画像から、画像処理装置がステレオカメラの技術を用いて画像解析を行い、物体までの距離を計算することにより、列車が走行する線路内の障害物をリアルタイムで検知するシステムとなる。

前方の障害物検知システムは自動車等で実用化されているが、鉄道車両の場合は列車を停止させるまでの距離が自動車と比較して長いことから、より遠方の障害物を検知する必要があった。開発したカメラや画像処理装置を用いた走行試験において、遠くまで撮影した画像を解析することにより、物体までの距離が計算できることを確認している。

鉄道車両に適した専用カメラの開発により、車両の揺れによる影響が少ない画像を得ることができ、障害物の誤検知も少なくなっているとのこと。トンネル内や夜間など明るさの変化に対応できる画質調整も可能になったという。カメラと画像処理装置で機能を分担することにより、障害物を検知する処理速度が向上したと説明している。

  • 専用カメラを用いた振動補正の効果イメージ(提供 : JR東日本)

  • 209系を改造した在来線用試験電車「MUE-Train」

これまで車両に適したカメラの開発や画像処理の精度向上のため、「MUE-Train」(多目的試験車)や京浜東北・根岸線の車両にシステムを搭載し、2020年2月から本線上で走行試験を行ってきた。2022年度には、カメラと画像処理装置の小型化開発を行い、走行試験を実施する予定。その後、2023年度から営業列車に搭載し、通常走行時のデータの蓄積や機能改善を継続することで、障害物検知システムを乗務員の運転支援や将来のドライバレス運転に適用することをめざすとしている。