リースバックは、自宅を売却してまとまった資金を手に入れながら、家賃を払うことで同じ家に住み続けられるサービスです。自宅を活用した資金調達方法として注目されており、老後資金を確保したい高齢者を中心に利用者は年々増加しています。

その一方で、リースバックは「家賃が高い」と言われることもあります。家賃が払えるか心配で、リースバックを利用するか迷っている方もいるのではないでしょうか。確かに、リースバックは家賃相場よりも高くなることもありますが、売却価格を抑えれば家賃相場より低くすることが出来ます。また、運営会社のスタンスや交渉によっても安く抑えることも可能です。

今回は、リースバックの家賃が高いと言われる理由と家賃を安く抑える方法について解説します。

リースバックの家賃と賃料相場

リースバックの家賃は、物件の売買価格から決定されます。そのため、周辺の賃料相場とは直接的な関係はありません。一方で、不動産の家賃は売買価格一部であることから、全く関係がないとも言い切れません。

リースバックの売買価格は通常周辺の成約事例などから算出しますが、この周辺の成約事例は賃料を加味して価格が決められているものもあります。そのため、周辺の賃料相場ではなく、売買価格から家賃を算出しなかったとしても、周辺の賃料相場と近しい家賃となることもあります。

リースバックの家賃設定方法

リースバックの家賃は、不動産の売却価格と期待利回り、周辺の家賃相場などによって決まります。具体的な家賃は、以下の計算式で求められます。

家賃(月額)=売却価格×期待利回り÷12ヵ月

たとえば、期待利回り6%で売却価格が1,500万円の場合と、期待利回り6%で売買価格が2,500万円の場合の家賃は以下の通りとなります。

・1,500万円×6%÷12ヵ月=7.5万円
・2,500万円×6%÷12ヵ月=12.5万円

つまり、期待利回りが一定であれば、不動産の売却価格が高くなるほど家賃も高くなり、売買価格が同じだったとしても期待利回りが高ければ家賃も高くなります。

そのほか、売却する不動産がマンションの場合には計算が異なります。マンションの場合、家賃の他に管理費や修繕積立金などが必要です。リースバックでは毎月の支払が家賃のみであるため、この管理費や修繕積立金は上記計算式に加算されて家賃が設定されます。なお、リースバック利用後に管理費や修繕積立金が増額されたとしても、設定された家賃が一方的に増額されないメリットがあります。

リースバックは「家賃が高い」と言われる理由

リースバックは通常の賃貸借契約とは異なり、周辺相場で家賃が決まるわけではなく、不動産の売却価格などが考慮されます。状況によっては、家賃が相場よりも高く設定されるため、「リースバックは家賃が高い」というイメージにつながっていると考えられます。

たとえば、以下のような物件は売却価格を高くせざるを得ないため、家賃相場より高くなるケースが多いです。

・住宅ローン残高が多く残っている物件
・競売にかかっている物件

リースバックを利用するには、リースバック運営会社が買取をするために住宅ローン借入時に設定した抵当権の抹消が必要です。つまり、売却資金で住宅ローンを一括返済しなくてはならないため、売却価格が高くなり、家賃も高くなりがちです。また、その場合は取り扱う運営会社も限られるケースが多く、比較出来ずに運営会社を決めことになるため、家賃が高く設定される要因にもなります。

どうしたらリースバックの家賃を安くできるのか

運営会社によっては、売却価格と家賃について交渉することも可能です。そのため、運営会社と交渉して売却価格を抑えることで、家賃を安くできる可能性があります。

期待利回りについては、物件種別(戸建て・マンション)や築年数、運営会社の方針などによって異なります。リースバックを利用する人にとっては、売却価格はなるべく高く、家賃はなるべく安くなるのが理想です。少しでも家賃を安くしたい場合は複数の運営会社に相談を行い、売却価格と家賃を比較・検討して利用する会社を決定すること大切です。

参考)SBIエステートファイナンス「リースバックの売却価格と家賃、買戻し価格はどのように決まる?」

リースバックで家賃が安くなった事例を紹介

ここでは、リースバックで家賃が家賃相場より安くなった事例を2つ紹介します。

事例(1)

Aさんは、急遽まとまったお金が必要になりました。持ち家(マンション)を所有していますが、家族がいるため、できれば引っ越しはしたくありません。そこでリースバックで自宅を売却してまとまった資金を手に入れながら、家賃を払って同じ家に住み続けることを検討しました。運営会社との面談で「なるべく家賃を安くしたい」という希望を伝えたところ、以下の条件を提示され、契約に至りました。

物件エリア 江戸川区
物件種別 区分マンション
築年数・間取り 18年、3LDK
売却価格 3,400万円
家賃相場 20.3万円/月
家賃 18万円/月

Aさんの場合、住宅ローンの残高が2,000万円と物件価格に対して、大きく返済が進んでいたため、売却価格を抑える事が出来ました。売却価格は市場価格より安くなりましたが、家賃は相場より安く抑えることができたため、その後も長期間に渡って引っ越しせずに暮したいと考えているようです。

事例(2)

Bさんは、相続によって兄弟間で共有持分となった不動産が、家賃相場よりも安く住めるということでリースバックで売却することを検討しました。運営会社との面談で「家賃を安く抑えたい」「将来的に買い戻す可能性がある」という希望を伝えたところ、以下の条件を提示され、契約に至りました。

物件エリア 横浜市保土ヶ谷区
物件種別 戸建て
築年数・間取り 15年、木造2階建て(延床面積150㎡)
売却価格 1,950万円
家賃相場 19.4万円/月
家賃 13万円/月

家賃相場19.4万円に対し、家賃は13万円で、家賃は相場より5万円以上安くなりました。また、調達資金の一部を信用借り入れの返済に充てたことで、家計改善にもつながりました。なお、今回売却した不動産は、将来買い戻すことを考えているようです。

まとめ

リースバックは「家賃が高い」というイメージがあるかもしれませんが、家賃は売却価格とのバランスで決まるため、売却価格を安く抑えることで家賃を安くできます。また、運営会社を比較したり、諸条件を交渉したりすることで家賃を安くすることが出来る場合もあります。自宅の所有権を手放すことに抵抗がない場合は、自宅を活用した資金調達手段としてリースバックを検討してみてはいかがでしょうか。

※この記事は「SBIエステートファイナンス」掲載「リースバックの家賃設定を解説! 本当に相場より家賃が高いのか?」より転載しています。