「海老で鯛を釣る」は、日常会話やビジネスシーンなどさまざま場面で使われる表現です。聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。しかし、なかには意味を間違えて覚えてしまっている人もいるかもしれません。
そこで本記事では、海老で鯛を釣るの正しい意味や由来、使い方・例文などを解説します。また、類語や対義語、英語表現もあわせて紹介します。
海老で鯛を釣るの意味とは
「海老で鯛を釣る」とは、「わずかな負担を元手にして大きな利益を得る」という意味で、江戸時代中期から使われるようになったことわざです。今でも日常会話などでよく使われる表現で、「海老鯛(えびたい)」のように略した言い方をすることもあります。
海老で鯛を釣るの由来
海老で鯛を釣るというのは、比較的安価な海老で高級魚である鯛を釣ることに由来します。
一尾だけでは大した価値とはいえない海老ですが、魚の王様である鯛を釣ることができれば、お金をかけずに大きな得をしたことになります。
このことが転じて、釣り以外の場面でも「小さな犠牲を払って大きな利益を得る」という意味で、海老で鯛を釣るという言葉が使われるようになったようです。
誤った解釈に注意
海老で鯛を釣るは、安価な海老で価値のある鯛を釣ったことに由来する言葉ですが、海老には「伊勢海老」など高級なものもあります。そのため、「大きな利益を得るにはそれなりの元手が不可欠」と解釈している人もいるようです。
しかし、ここでいう海老はあくまで「手ごろな小海老」。高価な餌を用意しなければそれなりのものが手に入らないというニュアンスではないため、間違って覚えないよう注意してください。
海老で鯛を釣るの類語
言葉の意味をより深く理解するなら、似た意味を持つことわざも覚えておきたいところ。 ここでは、海老で鯛を釣るの類語を3つ紹介します。それぞれの意味や使い方などを確認してみましょう。
麦飯で鯉を釣る
麦飯の米粒で高級魚である鯉を釣り上げることを表す「麦飯で鯉を釣る」ということわざ。
わずかな元手で多くの利益を得ることや、少しの贈り物で多大な返礼を受けるという意味を持ち、海老で鯛を釣ると同じ意味合いで使える言葉です。
餌が「海老」から「麦飯」へ、釣り上げるのが「鯛」から「鯉」に変わっただけで使い方は同じなので、あわせて覚えておくといいでしょう。
蝦蛄で鯛を釣る
「蝦蛄(しゃこ)で鯛を釣る」ということわざも、海老で鯛を釣ると同じ意味合いで使うことができます。蝦蛄は海老に似た甲殻類の生き物のことです。
そのほか「雑魚で鯛を釣る」という言葉もあるので、海老で鯛を釣るの類語として、まとめて覚えてみてはいかがでしょうか。
濡れ手で粟
「濡れ手で粟(ぬれてであわ)」は、苦労をせずに大きな利益を得ることのたとえです。
濡れた手で粟をつかむと多くの粟が手に付着することから、容易に多くの利益を得ることを表すことわざとして使われます。
海老で鯛を釣るの言い換え表現として使えますが、濡れ手で粟には「何の苦労もせずに」といったニュアンスが含まれるので、否定的な意味合いで使う方が適しています。シーンにあわせて使い分けるようにしましょう。
海老で鯛を釣るの対義語
海老で鯛を釣るという言葉には、反対の意味を持つ対義語もあります。あわせて覚えれば、語彙力アップにつながるでしょう。
ここからは、海老で鯛を釣るの対義語であることわざを2つ紹介します。
骨折り損のくたびれもうけ
「苦労のわりに成果がまったく上がらないこと」を意味する「骨折り損のくたびれもうけ」。
「労力をかけたのに残ったのは疲労だけだった」という否定的な状態を表しており、海老で鯛を釣ると反対の意味で使われます。
また、「労多くして功少なし」という表現も同等の意味を持つため、海老で鯛を釣るの対義語として覚えておきましょう。
牛刀をもって鶏を割く
「牛刀をもって鶏を割く(ぎゅうとうをもってにわとりをさく)」とは、小さなことを処理するのに大げさな手段を用いることのたとえとして使われる言葉で、小さな鶏を割くのに、わざわざ牛を切るための大きな包丁を使うことからきています。
また、才能のある人物がつまらない仕事をさせられることのたとえとしても使われます。
海老で鯛を釣るの英語表現
海外の取引先や友人などとやり取りをする機会が多い人のなかには、海老で鯛を釣るの英語表現を知りたいという人もいるでしょう。
海老で鯛を釣るを直訳した英語表現はありませんが、似た慣用句として「use a sprat to catch a mackerel」や「throw a sprat to catch a whale」などがあります。
「sprat」はニシン科の魚のことであり、わずかな負担でサバ(mackerel)や鯨(whale)を捕まえるということから、海老で鯛を釣ると同等の表現として使えます。
また、「小さなプレゼントはより大きな報酬をもたらす」という意味の「A small gift brings often a great reward」も、海老で鯛を釣るに近いニュアンスを持つ表現として使えるでしょう。
海老で鯛を釣るの使い方と例文
海老で鯛を釣るは、何かしらの利益を得た時・得ようとしている時に使われる言葉で、日常生活でもビジネスシーンでも使う機会が多くあります。
ここからは海老で鯛を釣るを使った例文を紹介しますので、使用シーンや用法などを確認しておきましょう。
例文
・バレンタインに1000円のチョコをあげたら、ホワイトデーに3万円のバッグをもらった。海老で鯛を釣った気分だ。
・毎月宝くじを数枚買って当たりを狙っているが、なかなか海老で鯛は釣れないものだ。
・安価なプレゼントで高嶺の花であるあの人が振り向いてくれた。海老で鯛を釣るとはまさにこのことだ。
・海老で鯛を釣るようなうまい話には注意したほうがいい。
海老で鯛を釣るという言葉を正しく覚えよう
「海老で鯛を釣る」は、わずかな負担を元手にしてもっと大きな利益を得るという意味で、江戸時代中期から使われるようになったことわざです。
一つでは大した価値ではない小海老を使って鯛を釣るというのは、お金をかけずに大きな得をすることのたとえなので、高価な餌を用意しなければそれなりのものが手に入らないという意味ではありません。
日常生活でもビジネスシーンでも気軽に使える表現なので、正確な意味や使い方を覚えておきましょう。また、類語や対義語も覚えれば、より理解が深まります。この機会にぜひ覚えてみてはいかがでしょうか。