2021年の株式市場も残すところあと数営業日。新型コロナの影響が続く中、今年の株式市場は日経平均がバブル期以来の30,000円台に到達し、歴史的な1年となりました。米国市場を中心に株価指数が堅調に推移する中で、DXやESGなどのテーマも市場をにぎわせました。

今回は最新の会社四季報新春号の中から2022年に注目のテーマ・銘柄について見ていきたいと思います。

  • 四季報からお宝銘柄を探すためのポイントは?

IPOが多かった1年、今年上場した銘柄で注目は?

世界の株式市場が堅調に推移する中、今年は日本国内での新規株式公開が多い1年となりました。年間のIPOの銘柄数は125社にのぼり、2006年以来の高水準となる見通しです。

12月には30社を超える企業がIPOを行い、資金の分散により軟調な株価形成となる銘柄も出てきています。一方でIPOはあくまで上場企業としてのスタートラインであり、上場以降の業績推移が重要になってきます。今回は企業のDX化を背景に今後の動きが注目される2社を取り上げます。

まずは2021年6月に上場した『プラスアルファ・コンサルティング』(4071)です。ビッグデータを可視化するプラットフォームを展開し、人事情報・社員の見える化を実現する「タレントパレット」事業は急成長しています。2019年末に230社だったタレントパレットの契約者数は、現在では700社まで急増しており、平均月額単価の上昇も伴って月額課金収入も堅調に上昇しています。株価も公開時から4割ほど上昇し、直近の時価総額は約1,300億円となっており、上場後も高い評価を保っています。

企業間の人材獲得競争が進展する中、採用面・人事面でのデータ利活用のニーズも高まってきています。メーカー・小売・金融等、幅広い業種での導入実績を持つ当社の動向には注目が集まります。

続いては2021年9月に上場した『アスタリスク』(6522)です。バーコード、RFID、赤外線通信等による商品読み取りを行う、AsReader事業を主に展開しています。小売等における非接触型のレジでの利用のほか、入退室管理や備品管理などにも利用されており、業務改善の一翼を担っています。

会社四季報による22年8月期の業績予想では、売上高で前年比約42%、営業利益で約77%の増収増益を見込み、高い成長が期待されています。米国を中心とした海外進展にも力を入れており、21年に10%程度だった海外比率が2022年以降は30%近くまで上昇を目指している点にも注目です。国内外でのシェア拡大を実現することができれば、中長期的な成長が期待できるのではないでしょうか。

医療業界にもDX化の波が

新型コロナにより、幅広い産業でDXが進行しましたが、医療業界でもオンラインを取り入れた取り組みが進んでいます。

中でも医薬品関連のDX化を推進する、『ケアネット』(2150)、『メドピア』(6095)に注目です。会社四季報によると、両社共に2022年に過去最高の純利益予想となっているほか、売上高に関しては、ケアネットが53億円(20年12月期)から110億円(22年12月期)、メドピア(6095)が74.3億円(21年9月期)から150億円(23年9月期)、とそれぞれ2年間で約2倍増収という急激な成長を見込んでいます。

カギとなるのは、医療関係者に医薬品情報を提供するMRのインターネット活用です。メドピアのアンケート調査によると、医師による今後の医療情報収集は8割がオンラインに切り替わるとされる一方で、MRのオンライン面談利用は限定的となっており、オンラインを活用した情報提供は道半ばの状況となっています。一方で、ケアネットの決算資料によれば、医薬DX市場の推定市場規模は現在の約500億円規模から、将来的には3,000~4,000億円規模とされており、今後MR(人)とオンラインを活用したプロモーションが進展されていくことが期待されています。製薬企業向けのeマーケティングを手掛ける両社は、今後市場が拡大していく中で、事業拡大が期待されます。

そのような市場環境・堅調な業績推移を背景に、ケアネットは今年6月、メドピアは今年1月にかけて株価は急上昇し、大相場となりました。現在ではやや調整気味であるものの、今後新型コロナ動向が落ち着き、通常の医療業務が再開していく中で今後評価が見なおされるかもしれません。

ESGの観点では産業廃棄物処理関連が中長期的に勝機アリ?

最後に、2021年に注目を浴びたテーマの一つであるESGの観点でも見ていきましょう。環境施策に関しては、世界各国で対応策が議論されており、日本政府は2030年までの二酸化炭素排出量削減目標を2013年度比46%減とする新目標を発表しています。

そのような中で、EV(電気自動車)による脱炭素の推進など、新技術への注目が集まっていますが、ここではリサイクルや再生可能エネルギーの活用でCO2削減の取り組みが目立つ、産業廃棄物処理関連の銘柄に着目していきます。

まずは独自の技術で高いリサイクル率を誇り、市場からの評価も高い『ダイセキ』(9793)です。堅調な業績推移や、証券会社の強気なレーティングを背景に2020年夏頃から株価は一貫して上昇し、3倍以上になっています。脱炭素関連の設備投資を進めており、関東、九州、播磨でリサイクル燃料関連の設備増設を予定しています。株式市場でもESG等の非財務指標の取り組みが評価される流れがある中、環境報告書など積極的な開示をしている当社は注目されます。

またタケエイとリバーHDの統合により誕生した『TREホールディングス』(9247)も成長戦略の中でリサイクル事業・エネルギー事業を中核に据えています。統合した両社のシナジー効果により、リサイクル事業の進化や再生可能エネルギー事業が推進され、業績面・環境面の両面での成長が期待されます。

昨年に引き続き新型コロナの影響が色濃く残った2021年ではありましたが、年後半にかけては世界的に経済再開に向けて動き出したほか、新しい産業が興りつつもあります。また株式市場の観点では、2022年に米国で利上げが予想されるなど、来年以降は今までの金融緩和を背景とした相場とは異なる動きも予想されます。

1年の締めくくりとともに、会社四季報を使って来年の注目銘柄に目を向けてみてはいかがでしょうか。