「虻蜂取らず(あぶはちとらず)」は、「欲張ると失敗する」という意味のことわざです。あまり聞き慣れないことわざかもしれませんが、日常会話やビジネスシーンでも使えるので、この機会に使い方や類語・対義語を覚えておきましょう。
本記事では、虻蜂取らずの語源・由来や使い方・例文、似た意味を持つ類語や対義語、英語表現について解説していきます。
「虻蜂取らず」の意味とは
「虻蜂取らず(あぶはちとらず)」は、「欲張ると失敗する」という意味のことわざです。「虻」と「蜂」を同時に捕らえようとすると、どちらも捕まえられずに終わるということから、「2つのものを得ようとすると、結局は何も得られずに終わる」という意味合いで使われます。
「虻蜂取らず」の語源・由来
もともとは「虻も取らず蜂も取らず」といわれていましたが、そこから今の「虻蜂取らず」というかたちになりました。明確な由来はわかっていませんが、昔はよく使われていたといいます。しかし、同じような意味を持つ「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざが登場してからは、あまり使われなくなったそうです。
「虻蜂取らず」の使い方
ビジネスシーンでは、方向性を定めるときなどに虻蜂取らずという言葉を使えます。仕事では、目標やターゲットを曖昧にすると、最終的に何も得られないということがあるもの。戒めとして会議などで「虻蜂取らず」を使った提言をしてみてはいかがでしょうか。
虻蜂取らずの例文
虻蜂取らずの例文は下記のとおりです。
- 「事業の方針を定めないと虻蜂取らずになるぞ」
- 「AとBの両社から契約を取ろうと画策したが、このままでは虻蜂取らずになりそうです」
- 「料理とデザインの講座を両方受講したが、どちらも途中でやめてしまった。まさに虻蜂取らずだ」
「虻蜂取らず」の類語
虻蜂取らずには、似た意味をもつ類語が複数あります。ここでは3つの類語を紹介します。この機会に覚えてみてください。
二兎を追う者は一兎をも得ず
「二兎を追う者は一兎をも得ず」は、「欲張って二兎のウサギを追うと、一兎も捕まえることができない」という意味のことわざです。「虻蜂取らず」の似たことわざとして広く知られています。「虻蜂取らず」の言い換え表現として違和感なく使えます。
花も折らず実も取らず
「花も折らず実も取らず」は、「2つ以上のことをしようとすると、結局は何も得られない」という意味があることわざです。欲張ると何も得られないという虻蜂取らずと同じ意味合いがあるので、言い換え表現としても使えます。
欲は身を失う
「欲は身を失う」とは、「欲が強すぎると、最終的には身を亡ぼす」という意味のことわざです。少しニュアンスが異なりますが、「欲張ると何も得られない」という意味では虻蜂取らずに通じる部分があるため、類語と言えるでしょう。
「虻蜂取らず」の対義語
ここからは、虻蜂取らずの対義語を2つ紹介していきます。
一石二鳥
「一石二鳥」とは、「石を1つ投げて2羽の鳥を得ること」から「1つの行為で2つの利益を得ること」を表す四字熟語です。「2つのものを得ようとすると何も得られない」という意味の「虻蜂取らず」の対義語として使えます。
四字熟語の多くは中国の故事成語などが語源や由来になっていますが、一石二鳥は英語のことわざ「Killing two birds with one stone(1つの石で2羽の鳥を落とす)」が由来とされています。イギリスで17世紀ごろに生まれ、日本では明治時代ごろから使われるようになりました。 なお、一石二鳥は2つの利益を狙って得たのではなく、予期していなかった利益を得たということを表すので、使う際は注意が必要です。
一挙両得
「一挙両得」とは、「1つの行動によって、2つの利益を得ること」を表す四字熟語です。「2つのものを同時に得ようとすると何も得られない」という意味合いがある「虻蜂取らず」の対義語として使えます。
「虻蜂取らず」の英語表現
虻蜂取らずの英語表現は、「fall between two stools」です。そのまま訳すと、「2つの椅子の間に座ろうとして落ちる」になります。
stoolは、「背もたれがついていない椅子」のことで、「欲張って2つの椅子に座ろうとしても間に落ちるだけだ」という意味合いで使われます。そのため、「欲張って2つのものを同時に得ようとすると、何も得られずに終わる」という意味の虻蜂取らずの英語表現として使うことができます。
- If you don't decide which one, you just fall between the two stools.
(どちらかに決めないと虻蜂取らずになるよ)
虻蜂取らずの意味を覚えて使ってみよう
虻蜂取らずとは、「2つのものを得ようと欲張ると、結局は何も得られない」という意味のことわざです。日常会話やビジネスシーンで使うことができるので、ぜひ覚えてみてください。また、似た意味を持つことわざも多くあるので、あわせて覚えるのもおすすめ。ぜひこの機会に語彙力を高めてみてはいかがでしょうか。