住宅ローンをめでたく完済! 長かった返済期間を振り返れば、「ようやく」と安堵の気持ちがわいてくるでしょう。でも建物は次第に劣化していきます。ローンを返済し終えたころから建物の維持費は格段に増加していくと考えた方がよいでしょう。同時にこれからの老後の生活資金を考えれば、そうそう安心もしていられません。どのような費用が必要となっていくのでしょうか。

建物の維持費はどのくらいかかる?

一般的にローン完済には数十年を要しますので、完済時には設備や配管などが経年変化でダメージを受けているはずです。劣化度合いは、もともと入居時に建物が新築だったのか、中古住宅を購入したのかでも違います。築年数が経過するにつれて、修繕費も多めに準備していかなければなりません。

マンションの場合

毎月管理費と修繕積立金を支払っていると思います。販売時に大規模修繕準備金を一時金として支払うケースもあります。

ローンの返済中も何度か大規模修繕は実施されたとは思いますが、年数と共に徐々に不具合箇所は拡大していきます。30年くらい経過すると、今までとは違った大々的な修繕や設備の交換が必要となることもあります。大規模修繕時にプールされている準備金が不足していれば、区分所有者で分担して負担しなければなりません。

特に、小規模のマンションや大規模であっても共用設備が充実しているマンションは1戸当たりの負担額は大きくなりがちです。修繕準備金の残高によっては一時金の拠出も考えておく必要もあるでしょう。

戸建ての場合

戸建ても築年数がかさむにしたがって、修繕費用がかさむのは同じです。全額自分たちだけで負担することになりますし、マンションの修繕積立金と違って月々強制的に支払う必要がないだけに、意識して準備しておかないと思わぬ大きな出費となり、年金生活では相当な負担でしょう。

マンションの修繕積立金と同程度の月々1万円ずつ準備しても10年間で120万円にしかなりません。リフォームも予定していれば、その分も考えておかなければなりません。住宅メーカーや工務店と相談して、後々必要となる修繕費を把握して準備しておきましょう。

トラブル対策

通常の維持管理以外にも、建物が古くなると、いろいろ不具合も発生しがちです。マンションであれば下の階への水漏れ事故は珍しくありません。我が家も被害を受けたことがあります。加害者になる可能性もあります。個人損害賠償保険に加入していなければ、階下の被害額を自費で弁償しなければなりません。

反対に上階からの水漏れ被害を受けた時、上階の住人が損害弁償に応じなければ、理不尽でも自分たちで補修しなければなりません。裁判費用の方が被害額より上回れば、意味がありませんので泣き寝入りです。このようなケースのため、管理組合で保険に加入しているケースもあります。

戸建住宅では、また別の隣人トラブルが考えられます。また、災害の多い日本では地震や台風などの災害などで大きな被害を受けることも想定しなければなりません。阪神淡路大震災や東日本大震災を思い起こせば、戸建住宅の被害は甚大になりがちです。ローン返済中は火災保険が強制加入となりますが、完済すればその縛りはなくなります。完済の機会に保険を精査し、できれば地震保険も併せて十分な額の保険に加入しておきたいものです。

終の棲み処はどこ?

現在の住まいを終の棲み処と考えている方もあれば、老後は別の暮らしを考えている方もあるでしょう。別の暮らしを考えている場合は、当然ながらそのための住居費が必要となります。「田舎で暮らす」「便利なところの小さ目のマンションに移る」「高齢者施設で暮らす」「介護施設で暮らす」…など、いろいろなケースがありますが、現在の住まいを売却した費用で賄えるケースもあれば、不足するケースもあります。

例えば現在の住まいに生涯住み続けると考えていたとします。建物としてバリアフリーになっていなければ、リフォームが必要となります。定年になる前に今後の生活を見据えて、必要な対策を講じておかないと、年金暮らしになってからでは大変です。

また、住んでいる地域の特性も考えておかなければなりません。起伏のあるエリアで運転免許も返上してしまえば、買い物にも不便となります。起伏が無くても距離があれば負担となります。

そもそも食事の支度も面倒となります。介護認定を受けていない自立の状態で有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅へ入居する理由は、食事の支度が面倒という理由が大きいそうです。

私が住むマンションでも注意してみていると、昼時期になると老夫婦でお昼を食べに行く姿がよく見られます。歩いて1~2分の所に多くの飲食店がありますので、施設での暮らしで居室から食堂に行くのと変わらない時間です。今はコロナ禍の影響で宅配サービスや総菜や弁当の定期購入のサービスも飛躍的に充実してきていますので、自宅に住み続けられる可能性が広がりました。


今の時代、返済を終えた50代、60代でもまだまだ若々しく、なかなかその後の身体の変化を想像しにくいものです。返済が終わった今がチャンス、想像力を最大限発揮して、老後を今の住まいで暮らし続けられるかをじっくり考え、気を抜かずに必要な必要は準備しておきましょう。