「逡巡」という言葉の読み方や意味を正しく理解できていますか。ビジネスシーンではただ「迷っています」というよりも、「逡巡しています」としたほうが、思い悩むさまを的確に伝えられます。
本記事ではこの逡巡という言葉について解説します。漢字の由来や類語、対義語などを紹介しますので、この機会に理解して語彙力アップにつなげましょう。
逡巡とは
逡巡は「しゅんじゅん」と読みます。「逡」は常用外の漢字ですが、正しく読めるようにしておきましょう。
逡巡の意味
逡巡には「決断できずぐずぐずとためらうこと、しりごみすること」という意味があります。
逡巡の由来・語源
逡巡の「逡」には「しりぞく、ためらう」などの意味があるとされています。一方「巡」は「川に沿って歩く」という漢字の成り立ちから、「まわり歩く」という意味があります。
これら2つの漢字からなる「逡巡」は、前進できずにぐずぐずしている様子を表しています。
逡巡の使い方・例文
ここからは逡巡という言葉を用いるときの使い方を、例文を交えて紹介します。
逡巡する・逡巡している
逡巡は「ためらう」と同じ意味で使うことができます。決断できずにぐずぐずと考えこんでいる様子を表すときに使います。以下は例文です。
例文
・大学に進学するか就職するか、彼は逡巡していた。
・突然打診された業務はいままでよりはるかに規模が大きく、引き受けるか逡巡する。
・買うつもりのものがあまりに値上がりしており、しばらくの間店内で逡巡してしまった。
「逡巡を巡らす」
「逡巡を巡らす」という表現は「巡る」という漢字が連なり、ややくどい印象になります。「逡巡する」とシンプルにいうとよいでしょう。
逡巡の類語・言い換え
次に、逡巡の類語と言い換え表現を見ていきます。これらを確認することで、逡巡という言葉の理解を一層深めることができるでしょう。
躊躇(ちゅうちょ)
躊躇とは逡巡とほぼ同じで、「あれこれ迷って決断できないこと、ためらうこと」という意味です。
迷走(めいそう)
迷走とは「予想された道や定まった道を大きく外れて進むこと」「物事の進む方向が定まらずに結論が出ないこと」という意味です。「議論が迷走する」という表現は、結論が見いだせずに混迷を深めている様子を表しています。
葛藤(かっとう)
葛藤とは「人と人が互いに譲らず対立していがみ合うこと」「心の中に相反する感情などがあり、どれをとろうか迷うこと」という意味です。「正義感と反抗心の葛藤に苦しむ」などと表現します。
「葛(かずら)」と「藤(ふじ)」の枝がもつれて絡み合う様子から、このような意味になったとされています。
先延ばし(さきのばし)
先延ばしの意味は、文字通り「先に延ばすこと」。すべきことや予定されていたことができずに先送りすることを言います。どうすべきか決めきれていないという点で、逡巡と似たい意味の言葉だと言えるでしょう。
優柔不断(ゆうじゅうふだん)
優柔不断とは「ぐずぐずして決断できず煮え切らないこと」「気が弱く決断力にとぼしいこと」という意味です。
逡巡を使う四字熟語
次に、逡巡を使った四字熟語を紹介します。あまり見慣れないむずかしい響きのものが多いですが、頭に入れておきましょう。
遅疑逡巡(ちぎしゅんじゅん)
いつまでも疑っていて決心できないという意味の「遅疑」と、ぐずぐずとためらうという意味の「逡巡」を重ね合わせた四字熟語。「なかなか前進しないさま」を指しています。「遅疑逡巡とした上司は困る」などと使います。
狐疑逡巡(こぎしゅんじゅん)
疑い深いとされる狐を用いて、「疑いためらい、ぐずぐずすること」という意味です。「狐疑逡巡として、チャンスを逃してしまった」などと使います。
躊躇逡巡(ちゅうちょしゅんじゅん)
あれこれ迷って決断できないという意味の「躊躇」と重ね合わせた四字熟語です。ぐずぐずしてなかなか前進できないさまを強調しています。「彼の表情から躊躇逡巡が見て取れる」などと使います。
逡巡の対義語
次に、逡巡の対義語を見ていきましょう。
果断(かだん)
果断とは「物事を思い切って決断し、行うこと」という意味があります。「果」という漢字には「思い切ってする」という意味があり、果断のほかに「果敢(かかん)」などの言葉もあります。果断と果敢の意味はほぼ同じです。
断行(だんこう)
断行とは「周囲の反対やさまざまな困難を押し切って、強い態度で実行すること」という意味です。
決心(けっしん)
決心とは文字通り「あることをしようと心を決めること」という意味。似た言葉に「決意(けつい)」があります。
即断(そくだん)
即断とは「その場ですぐに判断すること、結論を出すこと」という意味です。「即断即決」という四字熟語は、何のためらいもなしに爽快に結論を出すという意味があり、まさに逡巡の対義語であることがわかります。
逡巡の英語表現
逡巡の英語表現には、「ためらい」という意味の「hesitaition」などが使われます。「逡巡する」という動詞では「hesitaite」となります。
例文
・He was initially hesitant to take on a task that was beyond his capabilities, but he successfully completed the project.(彼は当初、実力以上の仕事を任されて逡巡していたが、無事にこのプロジェクトを完遂させた)
・Since this is the first gift for my child, I hesitate to choose between A and B.(我が子への最初の贈り物なので、AとBのどちらにするか逡巡する)
逡巡という言葉をしっかり理解しよう
逡巡とは、ぐずぐずと決められないでいて前進できないさまを指します。「上司からの提案に逡巡している」などと使います。「迷っています」というよりも「逡巡しています」とした方が、思い悩んでいることを的確に伝えられます。
逡巡の類語には躊躇や迷走、対義語には果断や即断などの言葉があります。英語で「ためらう」を意味する「hesitate」という単語も、この機会に覚えておきましょう。