「咀嚼」という漢字、正しく読めますか。大まかに「よくかむ」という意味ですが、この咀嚼や咀嚼回数は人の体の健康に深く関わっていることが分かっています。

本記事では咀嚼という言葉の意味や類語、英語表現などをくわしくご紹介していきます。咀嚼に欠かせない咀嚼筋や、人気の咀嚼音動画についても触れていますので、ぜひ最後まで目を通してみてください。

  • 咀嚼とは?

    咀嚼についての知識や情報を紹介します

咀嚼とは?

咀嚼という言葉の読み方や意味を見ていきましょう。

咀嚼の読み方

「そしゃく」と読みます。どちらも常用外の難しい漢字ですが、読めるようにしておきましょう。

咀嚼の意味

「咀(そ)」は「かむ、かんで味わう」という意味の漢字です。咀嚼には大きく2つの意味があります。

  • 食べ物を口の中でかみ砕き、味わうこと
    例「咀嚼して消化をよくすることが大切だ」
  • 文章や言葉の意味、内容をよく考えて理解すること
    例「お気に入りの物語の原文を咀嚼した」
  • 咀嚼とは?

    咀嚼は、食べ物をかんで味わうこと、文章などの意味をよく理解することという意味です

咀嚼筋とは

多くの方は子どもの頃、「よくかんで食べなさい」と言われて育ったのではないでしょうか。ではなぜ、よくかむことが大切なのでしょうか。ここからは意外と知られていない咀嚼筋の働きや、咀嚼の重要性について説明します。

咀嚼筋はどこを指すのか

咀嚼を行う筋肉は、「咀嚼筋(そしゃくきん)」と呼ばれます。これは下顎骨(かがくこつ)という、下あごの骨付近にあります。

人間は食べ物を咀嚼するときに、上あごに対して下あごを上下させたり横に移動させたりします。この一連の動作は咀嚼運動といい、この時に使うのが咀嚼筋です。

咀嚼筋には具体的に、歯をかみしめた時に硬くなる「咬筋(こうきん)」があり、硬い食べ物をかみ砕くときなどに使います。ほかにも、下あごを引き下げる「側頭筋(そくとうきん)」、あごを前に突き出す「外側翼突筋」などがあり、これらをうまく使いながら咀嚼を行います。

ダイエットにつながる? 咀嚼の効果

「日本咀嚼学会」では、咀嚼の効果について標語で解説しています。各項目の頭文字をとって、「ひみこのはがいーぜ(卑弥呼の歯がいーぜ)」と覚えることができます。

  • 「ひ」肥満防止: 咀嚼回数が増えると、満腹中枢が刺激される
  • 「み」味覚の発達: よくかんで味わうことで、味覚が育まれる
  • 「こ」言葉がはっきり: 口の周りの筋肉を使うことで、発声や表情が豊かに
  • 「の」脳の発達: 脳の血流が増え、記憶力などをサポート
  • 「は」歯の病気を予防: 歯茎の血行がよくなり、唾液の分泌で歯周病や口臭予防に
  • 「が」がんの予防: 唾液の成分ががん予防に働く
  • 「い」胃腸の健康: 消化を助け、食べすぎを防止することで負担を減らす
  • 「ぜ」全身元気に: かむ力が育つと、集中力向上などにつながる

咀嚼回数が減るとどうなる?

咀嚼は食生活と深く関連しています。現代はやわらかな食べ物が増え、歯の使用が少なくなっているといわれています。それに伴い現代人の咀嚼筋も衰えている傾向にあるとも。実際に、戦前の頃と現代の咀嚼回数は半減しているという報告もあります。

では、咀嚼回数が減るとどのような影響が考えられるのでしょうか。以下がその一部です。

  • あごが小さくなるため、歯並びが悪くなる
  • かみ合わせが悪くなるため、頭痛や肩こりになりやすい
  • 唾液の分泌が少なくなって、食べ物の消化や吸収がしにくくなる

また、咀嚼によって得られる脳への刺激も弱くなるので、脳の働きへの悪影響も心配されています。

  • 咀嚼筋の働き

    よくかんで咀嚼筋が衰えないようにしましょう

咀嚼の類語・言い換え表現

咀嚼という言葉の類語や言い換え表現を紹介します。

反芻(はんすう)

反芻とは「一度飲み込んだ食べ物を口の中に戻してかみ直し、また飲み込むこと」という意味です。牛やキリンなどが行い、常に口が動いているのはこのためです。

反芻には「1つのことを繰り返し考えながら、味わうこと」という意味もあります。

堪能(たんのう)

堪能とは「充分に満足すること」「ある分野において習熟していること」という意味があります。「料理を堪能する」「彼は中国語に堪能だ」などと使います。

かみ砕く

かみ砕くとは「かみながら粉々にする」「難しくてわかりにくいことを、やさしい言葉でていねいにする」という意味があります。

  • 咀嚼の類語・言い換え表現

    類語表現も覚えて語彙力をアップ

咀嚼の英語表現

咀嚼は英語で「かむ」を意味する「chew」や「masticate」と訳されます。 咀嚼の別の意味である「内容をよく考えて理解すること」は「digest」と訳されます。

例文

  • Chew your foods well.(よくかんで食べなさい)
  • He struggled to digest the novel.(彼はその小説を理解しようと奮闘した)
  • 咀嚼の英語表現

    英語表現もぜひ覚えておきましょう

咀嚼音動画とは

動画の世界で盛り上がりを見せるASMR動画。なかでも咀嚼音を取り上げる動画が人気で、とくに韓国ではテレビCMやニュースなどで取り上げられるほど。咀嚼音とは文字通り、咀嚼する時に生じる音のことです。なぜ人気なのでしょうか。

ASMRとは

ASMRとは英語の「Autonomous Sensory Meridian Response」の略で、日本語では「自律感覚絶頂反応」などと訳されます。音や映像などによって得られる心地よさや、ゾクゾクする感覚だとされています。

咀嚼音動画はこのような感覚が得られるASMR動画のひとつ。具体的には以下のようなものの咀嚼音が取り上げられています。

  • フライドチキンなど揚げたてのフライ類
  • ポテトチップスなど軽い食感のスナック類
  • ステーキなどかみごたえのあるもの
  • リンゴなどジューシーな果物

咀嚼音動画はなぜ人気なのか

咀嚼音は「おいしそう」という食欲をかき立てたり、今まさに隣で食べているような臨場感が得られたりするといわれています。単調な音をじっくり聞くことが癒やしにつながり、孤独感を紛らわせることができるのではないかと指摘する声もあります。

  • なぜ咀嚼音動画は人気なのか?

    咀嚼音動画はとくに韓国で人気です

咀嚼音へのマナー

ASMR動画として人気の咀嚼音ですが、日本国内では配慮が必要です。

日本では咀嚼音を不快に思う人も

日本では昔から食事中に「クチャクチャ」と音を立てることは行儀悪いことだとされてきました。音を立てて食べる人を「クチャラー」と呼ぶこともありますが、本人に自覚がなく、さらに周囲が注意しづらい傾向にあります。

対して中国や韓国では、食事中の音はさほど気にされません。咀嚼音動画がとくに韓国で盛り上がっていることにもうなずけます。

音嫌悪症(ミソフォニア)とは?

音をきっかけに強い怒りや不快感を抱き、パニックになってしまう「音嫌悪症(ミソフォニア)」という症状があります。咀嚼音などをきっかけに症状が現れ、日常生活が困難になるほどの人もいるとされています。

  • 咀嚼音は苦手な人もいる

    食事中は咀嚼音など、マナーに気をつけましょう

咀嚼という言葉を理解しよう

咀嚼という言葉には、「食べ物をよくかんで味わうこと」「文章や語句についてよく考え理解すること」という意味があります。難しい漢字ですが、正しく「そしゃく」と読めるようにしておきましょう。

最近では咀嚼音を取り上げたASMR動画も人気です。ただし、日本では咀嚼音はマナー違反だとされますので、配慮が必要です。