――最後まで演じられた今、慶喜をどのように捉えていますか?

すごく優しい方だなと。最初はつかみどころがなくミステリアスな方で、最後までそういう方なんですけど、どこか寂し気で儚く、でも男らしくて、そのような印象を持ちました。

――慶喜にとっての栄一はどんな人だったと思いますか?

2歳くらいしか変わらない同世代で、違うところで育ってきたけど運命共同体みたいな、そばにいてほしい、自分の人生を全うする上でそばにいなくてはならない人だと思います。

――時代が変わってからも栄一はたびたび慶喜に会いに来る。そのときの慶喜の表情は、すべてを把握しているように見えたのですが、草なぎさんは自分が出演するシーン以外の脚本にも目を通されていましたか?

全く読みません、すみません(笑)。脚本がとても素晴らしくて、毎回オンエアを見ていると続きが気になりましたし、読む必要はないなと思って自分のセリフしか読んでいません。

――その時代の背景で何があったかというのは勉強されていたのでしょうか。

いや~してないですね。わからないからそういう顔に見えたのかなと(笑)

――放送は12月26日の第41回まで続きます。終盤の慶喜の見どころを教えてください。

栄一が慶喜を慕って会いに来てくれる。一線を退いてからの2人の友情の中に隠れる男の哀愁というか、枯れていく感じですかね。栄一と過ごした日々は輝かしいもので、枯れていく哀愁の中に栄一との輝きを感じているというところが見どころだと思います。

――年をとった栄一と対面してどう感じましたか?

長く一緒に撮影しているので、2人の空気感ができあがっていて、これが大河ドラマの醍醐味だなと。生き残ってきて同じ時代を歩いてきた感じがして、言葉も交わさず2人の空気感ができているというのがうれしかったです。

――吉沢さんとは撮影の合間にどんなお話をされましたか?

挨拶程度で特に話してないですね。僕的にはもっと話したかったんですけど、亮くんはセリフがいっぱいあるので悪いかなと思って。でも、しゃべらずとも“会話している感”を感じていました。

――吉沢さんに言葉をかけるとしたら、どんな言葉をかけますか?

「亮くん、これをやり終えたら絶対に自分の財産になるんじゃないかな」って、亮くんをすごく褒めてあげたいです(笑)

――1年以上同じ役を演じたのは初めてとのことでしたが、この経験はご自身にとってどういうものになりましたか?

終わってからじわじわ寂しくなりました。ほっとして次のステップに進むかなと思ったら、慶喜のミステリアスな余韻があって2、3日は寂しいなと思っていました。1年間、自分の中で集中を切らさずお芝居できたことは大きな自信になりましたし、僕にとって久しぶりのドラマだったので、人生のターニングポイントになっているという感覚があります。

■草なぎ剛
1974年7月9日生まれ。91年にCDデビュー以来、数々の名曲を世に送り出し、『NHK紅白歌合戦』に23回出場。17年9月に稲垣吾郎、香取慎吾と「新しい地図」を立ち上げた。俳優、歌手、タレント、YouTuberなど幅広く活躍。代表作は、ドラマ『僕の生きる道』(2003/フジテレビ)、『任侠ヘルパー』(2009/フジテレビ)、「第44回日本アカデミー賞」最優秀主演男優賞を受賞した映画『ミッドナイトスワン』(20)など。NHK『ブラタモリ』(ナレーション)、bayfm『ShinTsuyo POWER SPLASH』、ABEMA『7.2新しい別の窓』にレギュラー出演中。

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