一昔前であれば60代は子育てや各種ローンの支払いなどがひと段落し、老後資金もしっかりと確保され、悠々自適な生活を送っているというのが一般的なイメージだったろう。
ただ昨今は、長期にわたる景気の低迷や年金制度の様々な問題点、そして折りからの新型コロナウイルス禍も重なり、60代の暮らしもこれまで通りとはいかないというのが現実かもしれない。
そこで今回は、60代のマイナビニュース男女会員401人を対象にアンケート調査を実施。「老後資金の確保に関して不安に感じていること」などを聞いた。
Q.あなたの世帯年収は次のうちどれですか?
「100万円未満」(9.0%)
「100万円以上~200万円未満」(11.5%)
「200万円以上~300万円未満」(12.0%)
「300万円以上~400万円未満」(13.2%)
「400万円以上~500万円未満」(10.7%)
「500万円以上~600万円未満」(10.0%)
「600万円以上~700万円未満」(8.2%)
「700万円以上~800万円未満」(6.5%)
「800万円以上~900万円未満」(5.5%)
「900万円以上~1,000万円未満」(4.0%)
「1,000万円以上」(9.5%)
Q.老後のための費用はいくら貯まっていますか?
「10万円未満」(6.7%)
「10万円以上~30万円未満」(1.2%)
「30万円以上~50万円未満」(2.0%)
「50万円以上~100万円未満」(5.0%)
「100万円以上~500万円未満」(12.0%)
「500万円以上~1,000万円未満」(8.0%)
「1,000万円以上~1,500万円未満」(7.2%)
「1,500万円以上~2,000万円未満」(6.0%)
「2,000万円以上」(24.7%)
「老後資金はまだ貯めていない」(4.5%)
「わからない・答えたくない」(22.7%)
Q.老後資金はどのように貯めていますか、もしくは貯めていない方はどのように貯めようと思われていますか?(複数選択可)
1位「貯金」(69.8%)
2位「定期預金」(38.7%)
3位「株式投資」(26.9%)
4位「投資信託」(22.2%)
5位「保険」(20.4%)
6位「その他」(17.0%)
7位「NISA/つみたてNISA」(14.5%)
8位「iDeCo」(2.0%)
8位「不動産投資」(2.0%)
10位「ロボアドバイザー」(1.0%)
Q.老後資金の確保に関して不安に感じていることを具体的に教えてください(自由回答)
■「年金だけで足りるかどうか不安」
・「夫と私の年金だけでは、今の生活水準を維持出来ないと不安になる」(62歳女性/医療・福祉・介護サービス/専門サービス関連)
・「将来的に、段階的に年金額が減らされるのではないかという心配、不信感がある」(61歳男性/その他金融/営業関連)
・「年金だけでは暮らしていけそうにないです。他に収入になる方法を教えてほしい」(65歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「夫婦の年金だけでは生活が苦しく、老人ホームに入ることは不可能だ」(66歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「年金だけでは足りない。何歳まで働かなければならないのか不安」(68歳男性/レジャーサービス・アミューズメント・アート・芸能関連/その他・専業主婦等)
・「年金だけでは不足していますが、働いても賃金自体がかなり少なく、生活費を切り詰めることしかできない状況になりかけます」(63歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「年金の受取額がこの先目減りしていくだろうから、その収入はないものと考えて働き続けるほかない」(64歳女性/生命保険・損害保険/事務・企画・経営関連)
・「年金だけでは生活出来ないので、保険等の見直しが必要になってくると思う」(63歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「将来的に国から頂ける年金額が、少子化の影響で減少していくことが一番の不安材料です」(62歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「年金から介護保険、健康保険、その他色々な税が引かれて生活できない。具合が悪くても医者に行けない」(69歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「年金も生活保護と同じくらいしかないのに、老後を考えることは出来ない。子どもの世話になれないし。考えたくは無い事案だ。政府、なんとかして下さい」(69歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「何歳まで生きるか分からないが、寿命が伸びるに従って公的年金だけではどうしても資金不足に陥る懸念があり、私的資金をどれくらい確保すれば良いのか不明瞭なので不安である」(61歳男性/フードビジネス/IT関連技術職)
・「年金は老後資金を下支えするもので欠かす事は出来ないが、これだけでは不十分。働くことで生涯貯蓄の延命を図るのは分かるが、問題は働く意思と健康が伴わなければ駄目なので、これが一番の不安要素である」(65歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「そんなに贅沢している気はなかったが、細かい支出まで把握すると年金だけでは毎月10万円ほど赤字になる。仕事ができるうちに出来るだけ資産を増やし、支出も減らしたい」(61歳女性/生命保険・損害保険/専門職関連)
・「現在、年金生活を送っています。生活全般を極端に切り詰めれば年金だけで何とか遣り繰りできそうですが、そうもいかず蓄えを切り崩しているのが現状です。これが黄色から赤に信号が切り替わりそうなら、老体にむち打って何かの仕事につく必要が出てくるかもしれません」(67歳男性/その他/その他・専業主婦等)
■「自身の寿命や将来の健康状態への不安」
・「自分たちがいつまで生きているのかがわからない」(60歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「預金金利が殆どないため、株式投資で増やそうと思っている。老後資金よりも健康が不安だ」(68歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「老後資金については心配していないが、一人暮らしなので病気になった場合のことが心配」(67歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「予期せぬ病気や傷害。転倒による骨折から入院、そして寝たきり」(66歳男性/建設・土木/建築・土木関連技術職)
・「もし病気した場合、なかには保険適用できない治療もあり、その点は心配」(60歳女性/繊維・アパレル/販売・サービス関連)
・「もしもの体の不調など、一人では対応が出来ないときは大変だと思います」(66歳男性/電力・ガス・エネルギー/公共サービス関連)
・「病気になったとき、医療費が足りるかどうか心配。介護を必要になったとき」(60歳男性/教育/専門サービス関連)
・「老後資金の前に病気で死にそう。親のように九十までは生きられない。兄弟も三途の川を渡りました。現実は厳しい」(66歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「保険に入っていても、病気等で先の事がわからない分、不安はある」(65歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「健康であれば特に問題はないと考えていますが、病気になった時の費用を考えると、とても貯金ではやっていけないと思います」(64歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「医療費が大きな負担になっている」(67歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「現在の貯蓄額では不安がいっぱい。特に病気になったら、生活できるか非常に心配」(67歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「年金を当てにできない時代であり、万が一病気⇒入院⇒手術となった場合、現在の手元資金で足りるのか、不安を感じている」(61歳男性/その他金融/専門職関連)
・「公的年金だけでは生活できないのではないか。また、高齢になると健康面で衰えてくることが予想されるので、医療費の負担増が心配」(61歳男性/官公庁/事務・企画・経営関連)
・「老後には2,000万円かかると言われているが、病気も含めて予想外の出費があることなど、とても不安に感じている」(60歳男性/教育/専門サービス関連)
・「年金額が判ってる(低い!)からこそ貯蓄をしているのだが、病気などでいつ大金が要るようになるか判らないので、その点は保険加入していても不安になる」(62歳男性/鉱業・金属製品・鉄鋼/メカトロ関連技術職)
■「物価の上昇や金利の変動など」
・「低金利で増やす要素がなく、困っている」(62歳男性/不動産/公共サービス関連)
・「貯蓄の利息より物価上昇が大きいこと」(68歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「貯金の利子は低いし、投資はどうなるかわからないし、将来何が起こるかわからない」(64歳男性/教育/公共サービス関連)
・「どんなに節約しても物価が上がることで苦しくなる。年金だけでは生活できない」(66歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「年々物価が上昇して行くので、蓄えが不足するのではないかと不安になってきました」(66歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「物価が上がり、年金受給が少なくなっていくので生きていくのが大変だ」(65歳男性/その他電気・電子関連/事務・企画・経営関連)
・「ガソリンなどの燃料費が今後どうなることやら。政府の負債が今後どうなり税金がどうなることやら」(66歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「インフレが進みそうだが、物価スライドの全くない年金なので目減りを危惧している」(62歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「インフレになることが心配。インフレにならず、物価が安定していれば老後資金に困ることはない」(69歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「今後インフレになったりしたら結構厳しいだろうと思っている。新しい車も欲しいと思うが、将来に備えて今の車を乗りつぶすほうを選択しました」(60歳男性/サービス/建築・土木関連技術職)
・「資金は確保したのだが、この先インフレにでもなれば、その価値は目減りしてしまう。若い時と違い、もう働いてもまともな報酬は得られないから!」(61歳男性/ビル管理・メンテナンス/その他・専業主婦等)
■「老後資金がいくら必要か/足りるかどうかが不安」
・「何時予定しない出費が必要になるか解らない」(67歳男性/食品/営業関連)
・「どれだけあれば老後暮らしていけるかわからないので、不安である」(61歳男性/海運・鉄道・空輸・陸運/営業関連)
・「年金だけでは足りない分を補う預貯金が尽きるのではないかという不安」(63歳男性/教育/専門サービス関連)
・「年金生活で今後の貯蓄はあまりできませんが、現在の自己資金で足りるのかが不安です」(68歳女性/その他/その他・専業主婦等)
・「今の時点で資産がたくさんあるわけではないので、今後のことを考えると少し不安を感じる」(63歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「ローンもなく持ち家で、夫婦の年金で生活ができ預金もできているが、今の預金で足りるのか、やや不安」(69歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「年金だけでは足りないと思う。子どもや孫へのプレゼント、もてなし、お祝い金や、老後施設に入る事も考えると、どれだけの余裕があるのか? 家のリフォームや修理にどれだけかけて良いものやら、分からず不安」(63歳男性/鉱業・金属製品・鉄鋼/建築・土木関連技術職)
■「住宅ローンなどの負担」
・「住宅ローンの支払い」(61歳男性/その他メーカー/営業関連)
・「ローン返済で、老後破産状態になるのでは」(67歳男性/ソフトウェア・情報処理/IT関連技術職)
・「年金支給されても住宅ローンが終わらないので、ローンが終わるまでは暫く働かなければならない状況であり、仕事先が見つかるかが不安」(61歳男性/不動産/専門職関連)
■「資産運用がうまくいくかどうか不安」
・「年金だけでは老後の生活に支障があるので、余裕のある資金を投資に回して、その運用益を活用しないといけないと考えている」(67歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「計算上、80歳までの資金は確保した。ゆえにその後の資金を増やす必要があるかもしれない」(62歳男性/その他/クリエイティブ関連)
・「どのくらい必要か、資産運用するならどうすれば良いか。わからないです」(65歳女性/その他/その他・専業主婦等)
■「全てが不安/考える余裕がない」
・「考えると不安が増すので、考えないようにしている」(63歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「全く足りないのであきらめている。足りなくなったら自殺しかないと覚悟はしている」(62歳男性/建設・土木/技能工・運輸・設備関連)
■「特に不安はない」
・「公的年金と企業年金があるので不安はない」(69歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「額は少ないが、生活するのには不自由を感じていない」(61歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「大きな病気にかからず、また贅沢をしなければ一生食べていけるだけの資金は確保できていると思う」(63歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「不安はあるが、上を見ればきりがない。各家庭のライフスタイルで、いろいろな形態があると思う」(66歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「年金だけでは生活できないのはわかっているので、退職金をすべて企業年金にした。そこが破綻しない限り心配はない」(64歳男性/その他電気・電子関連/事務・企画・経営関連)
・「老後に2,000万円いるというような話がよく出ていますが、それ、本当かなと思います。もう少しよく計算すると、そんなにお金はかからないような感じがします。お金を投資しなさいというような国がたくさんあるのは、世の中の不安を煽っているような感じがしました」(61歳男性/サービス/専門サービス関連)
・「心配をしたらきりがありません。老後の生活に不安があるのは、現状を基本に考えているからでしょう。老後生活に入る頃には一番お金がかかる子育ては終わっているし、会社勤めも終えているとなれば、経費もかかりません。最低限とはいいませんが、質素倹約を心掛けて生活すればいいだけの話。身の丈に合った生活をするだけだと思っています」(62歳男性/広告・出版・印刷/その他・専業主婦等)
・「不安に感じることはないが、すでに老後である」(64歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「特にない。世の中では色々言われているけど、自分は自分の道を生(行)きます」(63歳男性/輸送用機器/メカトロ関連技術職)
■「その他」
・「子どもがいなく一人暮らしなので、相続問題が心配である」(61歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「自分以外のヒトに勝手に引き出されないか」(64歳男性/その他/その他・専業主婦等)
・「いろいろと工夫しリスク分散したり、増やし方を工夫する必要がある」(63歳男性/インターネット関連/IT関連技術職)
・「生活苦で、結局生活保護に頼るのではないかと不安」(60歳男性/リース・レンタル/営業関連)
・「今は問題ないが、大きく世の中が変動した場合を考えると非常に不安がある」(62歳男性/その他/その他・専業主婦等)
■総評
60代のマイナビニュース会員に、老後のための費用はいくら貯まっているかを聞いたところ、「わからない・答えたくない」が22.7%で最多となった。具体的な金額を答えてくれた人の中では、「2,000万円」(24.7%)、「100万円以上~500万円未満」(12.0%)、「500万円以上~1,000万円未満」(8.0%)、「1,000万円以上~1,500万円未満」(7.2%)、「10万円未満」(6.7%)、「1,500万円以上~2,000万円未満」(6.0%)の順番となっている。
同じタイミングで、40代にも同様の質問をしている。そちらは、「わからない・答えたくない」(20.2%)、「10万円未満」(18.5%)、「100万円以上~500万円未満」(13.3%)、「老後資金はまだ貯めていない」(11.3%)、「500万円以上~1,000万円未満」(6.5%)、「50万円以上~100万円未満」(6.0%)となっており、当然のことではあるが60代の方が老後資金は潤沢に貯めている。
老後資金はどのように貯めているか、貯めていない場合はどのように貯めようと思っているかを、複数回答可で聞いた。その結果、1位は7割近い支持を集めた「貯金」(69.8%)となった。以下、2位「定期預金」(38.7%)、3位「株式投資」(26.9%)、4位「投資信託」(22.2%)、5位「保険」(20.4%)と続いている。
老後資金の確保に関して不安に感じていることを具体的に聞いた。主な回答として、「年金だけで足りるかどうか不安」「自身の寿命や将来の健康状態への不安」「物価の上昇や金利の変動など」「老後資金がいくら必要か/足りるかどうかが不安」「将来の経済状況や税制などへの不安」などが寄せられている。
「年金だけで足りるかどうか不安」は40代でも大きなテーマとなっているが、60代における老後は未来の話ではないリアルなものであるだけに、より切実な問題となっている。コメントでも、「年金だけでは足りない」「今の生活水準を維持出来ない」「年金だけでは暮らしていけない」「この先年金の受取額が目減りしていく」「年金だけでは毎月10万円ほど赤字」「蓄えを切り崩しているのが現状」など厳しい現実が語られている。多くの人が、「このまま働き続けるしかない」と感じているようだ。
また、「自身の寿命や将来の健康状態への不安」もシリアスだ。若い頃には意識しなかった体力の衰えや健康状態の悪化が老後の生活を脅かす不安が、60代では現実のものとして迫ってくる。「医療費が足りるかどうか心配」「医療費の負担増が心配」「保険適用できない治療もある」など、とくに医療費に対するコメントが多く寄せられた。
一方で、「特に不安はない」という意見がかなり多かったのも特徴かもしれない。60代に達し、これまでの資金計画が順調に推移している人は、老後資金の確保に関する不安からは解放されている。ここでは、「公的年金と企業年金で不安はない」「生活に不自由はない」「一生食べていける」「企業年金が破綻しない限り心配はない」など、余裕を感じさせる意見が散見される。
また、安泰というわけではないものの、「上を見ればきりがない」「そんなにお金はかからない」「身の丈に合った生活をするだけ」など、ある種の達観を感じさせる声もある。中でも「不安に感じることはないが、すでに老後である」というコメントには思わず微笑んでしまった。
今回のアンケートでは、60代のマイナビニュース会員の老後資金は、老後の蓄えの一つの目安とされる「2,000万円」が約4分の1の24.7%と、ある程度の水準に達していることがわかった。資金の貯め方は、堅実な「貯金」(69.8%)が7割近くを占めている。
その一方で、「まだ貯めていない」(11.3%)、「10万円未満」(6.7%)、「10万円以上~30万円未満」(1.2%)、「30万円以上~50万円未満」(2.0%)、「50万円以上~100万円未満」(5.0%)と、100万円に達していない人も26.2%に及ぶ。
老後資金の確保に関しての不安は、年金や健康面など、様々なものが語られている。60代はまさに"老後"への入り口に立っているだけに、切実な問題として捉えている人が多かった。まさに寄せられたコメントにあった、「年金も生活保護と同じくらいしかないのに、老後を考えることは出来ない。政府、なんとかして下さい」(69歳女性)という声が多くの60代のリアルな思いかもしれない。
調査時期: 2021年11月17日
調査対象: 60代のマイナビニュース男女会員
調査数: 401人
調査方法: インターネットログイン式アンケート
※写真と本文は関係ありません