大きな買い物をした時や相続登記などで、「実印を押して印鑑証明書を提出してください」と言われることがあります。実印は市区町村窓口での登録が必要ですので、まだ登録していない人は印鑑を準備して登録しなければなりません。

しかし、実印にどんな印鑑を登録すればいいのかなど、詳しく知らない人は多いでしょう。

会社などが登記に使用する代表者印も実印と呼ばれる場合がありますが、本記事では個人の実印について、概要や銀行印との違いはもちろん、サイズや書体、フルネームがいいのかなど作り方のポイントを解説します。結婚や引っ越しをした際はどうすればいいのかもまとめました。

  • 実印とは

    実印の特徴や作成方法・実印に適した書体などを紹介する記事です

実印とは

まず、実印とは何なのかや、認印や銀行印との違いを見ていきましょう。

実印とは、役所に印鑑登録することで印鑑証明書の交付を受けられるはんこのこと

実印とは、印影をあらかじめ居住地の市区町村の役所に届け出ることで公的に認められた、重要な書類に押して責任を負うことを示す印章(はんこ)のことです。役所に届け出て印鑑登録できる印は個人の場合一人一つで、登録後は必要に応じて印鑑証明書の交付を請求できます。

ゴム印など破損しやすい材質で押したものは、実印として使えません。

実印の登録は、個人の場合市区町村窓口で、会社など法人の場合(代表者印)は法務局で行います。なお、代表者印についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください

実印と認印の違い

認印(みとめいん)とは実印登録をしていない個人の印章または印影のことで、実印と違ってゴム印や「シャチハタ」などと呼ばれる浸透印(スタンプ式のはんこ)などでも使えることが多いです。はんこ店や百円均一ショップなどで量産されている三文判も、認印として使えます。

認印は読みやすい文字のものが選ばれることが多いです。しかし実印は偽造を防ぐために、一般的には使われない専用の字体が選ばれます。

実印と銀行印は同じはんこでもいい?

銀行印として使われている印は、実印と同じようにゴム印など破損しやすい印章を使ったものは避けられます。銀行印や実印として使っている印章は、大きさや材質などの要件さえ問題なければ、同じ印を実印として登録することが可能です。

しかし、悪用リスクを少しでも避けるためにも、銀行や実印と同じものを登録するのはやめた方がいいでしょう。

  • 実印とは

    実印とは居住地の市区町村に登録した個人の印のことです

実印が求められるのは、高額な取引の契約書などが多い

普段の生活で実印を使うことはあまり無く、使うのは高額な取引をするときや遺産相続など、特別なシーンです。本当に本人の意思なのかを確認するために、実印が使用されるのです。

代表的な利用シーンとしては以下のようなものがあります。

  • 家・土地などの不動産の取引
  • ローンの契約
  • 自動車の購入・売却
  • 保険の契約
  • 保険金の受け取り
  • 遺産相続

実印を作成する際のポイントや使えるはんこ

まだ実印登録していない人は、どんな印を登録すればいいのかよくわからない人も多いでしょう。そこで、実印用の印章を作る際の、作成方法のポイントを見ていきましょう。

実印はフルネームや名前のみでも可

実印の刻印内容は、フルネームまたは姓または名です。以前の姓が使えるかどうかなど、自治体によって取り扱いが異なります。

印影が複雑な方が偽造リスクは低いため、フルネームの実印を使う人も多いです。

フルネームの場合縦2列が一般的

フルネームを刻印した印を実印として用いる場合、縦2列に配置するのが一般的です。半分から右側に姓を、半分から左側に名を配置します。

また、横2列に配置することもあり、その場合は上半分に姓を配置し、下半分に名を配置するのが一般的です。

姓のみで実印を作成する場合は、「右から左へ横1列」「上から下へ縦1列」「左から右へ横1列」のいずれかで作成されます。

実印のサイズ

実印には小さすぎるものや大きすぎるものは登録できません。多くの自治体で8mm以上25mm以内に収まるサイズに定められています。

専門店で相談するなどの方法で、実印に適したサイズのはんこを用意して実印として登録しましょう。

実印の定番の大きさは、女性は13.5~15mm、男性は15~18mm程度

前述のように実印の大きさは8mmから25mmの正方形に収まるサイズと定められています。これから実印を作るなら、規定のサイズ内でどの程度の大きさにするのが適切なのか迷うかもしれませんが、一般的には持ちやすさを重視して選ばれることが多いです。

女性の場合は13.5mmから15mm程度、男性だと15mmから18mm程度がよく選ばれます。

ただし手の大きさによって持ちやすさも異なりますし、大きさごとに印字できる文字数が異なる点に注意して、実印のサイズを選びましょう。

氏名以外の刻印は登録できないことがある

実印として登録している印には、文字などの制限があります。基本的には住民基本台帳に記録されている姓や名が登録可能です。旧姓が登録できるかどうかは、自治体によって異なります。

また、職業や資格、本人の氏名とは関係ない通称などの氏名が含まれている印は、実印として登録できません。さらに絵柄が入っているものは、実印としては登録できない点に注意してください。

劣化しやすい材質の印鑑は登録できない

実印用の印章には、ゴム印などの変形しやすい材質でできたものは使えません。また、100円程度で売られている三文判はプラスチックなど劣化しやすい材質でできていることが多いため、実印への使用は避ける方がいいでしょう。容易に入手できるため、悪用のリスクを考えてもおすすめしません。

実印に用いるのであれば、黒水牛(水牛の角)やチタン、木材などがおすすめです。耐久性が高く摩耗しにくい材質の印章を選んで、実印として使いましょう。

印鑑登録や印鑑登録証明書発行のより詳細なやり方はこちら
  • 実印の作り方とは? 作成方法を紹介

    実印を作る際のポイントを紹介しました

実印に適した書体

実印は個人の財産を譲渡する時など大きな財産のやり取りをする時に、印鑑登録証明書とともに本人の証明として使われる大切なものです。認印とは違って判読しにくい書体がよく使われます。

ここでは、実印に適した代表的な書体を見ていきましょう。

吉相体・印相体

吉相体(きっそうたい)と印相体(いんそうたい)は同じ書体のことで、易学や風水で開運印相として使われることがあります。字が上下左右と斜め合わせて八方に広がっていて、縁起がいいことで知られている書体です。

ゴシック体などのようにすぐには読みにくく、他の人が簡単にはまねして作れない字体でもあります。偽造されやすい書体を避けられ、実印として適していることから、よく用いられる字体です。

篆書体

「篆書体(てんしょたい)」とは漢字としては最も古い書体で、象形文字の影響を残している書体です。

吉相体や印相体は読みにくいので、実印として登録できない場合もあり、そのような場合は実印を作り直さなければならないこともあります。そういったことを避けるためには、吉相体よりは読みやすくても偽造はされにくい書体である「篆書体」を選ぶのがおすすめです。

ゴシック体・明朝体などのわかりやすい書体はほとんど使われない

実印は本人の証明に用いられる大切な印ですので、偽造しやすいものは避けなければなりません。ゴシック体や明朝体、隷書体(れいしょたい)や古印体(こいんたい)などの読みやすい書体を選ぶと、偽造のリスクが上がってしまいますので避けましょう。

ただし役所で判読できないような複雑すぎる文字だと実印としての登録ができないこともあります。

吉相体・印相体・篆書体などの複雑ながら判読できる字体を選んで自分だけの実印を作りましょう。

  • 実印に適した書体

    実印に適した書体には吉相体・印相体・篆書体などがあります

こんなときはどうすればいい? 実印にまつわるQ&A

既に印鑑登録を済ませていて、変更したいときや引っ越しするときなどはどうすればいいのでしょうか。よくある疑問をまとめました。

印鑑登録した実印は変更できる?

印鑑証明に登録している実印は、窓口で手続きを行えば変更も可能です。

まずは現在登録している実印を廃止してから、新たに印鑑登録しましょう。自治体や印鑑登録するタイミングなどによっては、再登録に手数料がかかることもあります。

引っ越ししたらどうなる?

引っ越しをして居住する市町村が変わった場合、印鑑登録も変更が必要です。元々住んでいた地域での印鑑登録を廃止し、引っ越し先の市町村で新たに印鑑登録手続きを行いましょう。

結婚などで名字が変わったらどうなる?

結婚などで姓が変わると、自治体によっては旧氏が含まれている印鑑を実印として使えません。登録できない自治体で婚姻によって氏が変わると、旧姓で登録していた実印が抹消されることもあります。

自治体によって取り扱いが異なりますので、住民登録している市区町村で確認してください。

実印を作って印鑑登録して、これからの生活に役立てましょう

実印は居住地の市区町村窓口で登録した印鑑のことで、個人の場合は一人一つ登録可能です。自動車購入や住宅ローンを組む時などに個人の証明に使われることが多く、社会生活で必要になります。

実印は偽造を防ぐために、吉相体などの複雑な書体が使われることが多いです。ゴシック体や明朝体などの読みやすい字体は避けられる傾向にあります。

書体意外にも、大きさや材質など気を付けるべき点は多いです。お店の人など専門家に相談しながら、ぜひ自分だけの実印を手に入れてください。