往年の大ヒット玩具「超合金」をグレードアップさせたバンダイスピリッツの人気シリーズ「超合金魂」の101体目(GX-101)として、1977年の特撮テレビドラマで活躍した『大鉄人17(ワンセブン)』が2022年3月に発売されることが決まった。
超合金魂「大鉄人17」では、かつて大ヒットしたDX(デラックス)超合金「大鉄人17」と同じく「ロボット形態(戦闘17)から要塞17、飛行17へと変形するギミック」を忠実に再現しているほか、各所の関節が可動し、劇中を凌ぐ可動域を確保。ダイナミックなポーズをつけることができる。
さらに、グラビトンユニット(腹部)をセットすることによって「目の明滅」と「音声ギミック」を発することも可能な、まさに「大鉄人17」アイテムの決定版というべき商品がここに誕生した。
テレビシリーズ『大鉄人17』は、『仮面ライダー』(1971年)『人造人間キカイダー』(1972年)『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)などで知られる石ノ森章太郎氏が原作を務め、東映・毎日放送が製作した特撮ロボットアクションドラマである。東映は石ノ森氏と組んで『好き!すき!!魔女先生』(1971年)、『変身忍者嵐』(1972年)、『ロボット刑事』(1973年)、『イナズマン』(1973年)、『がんばれ!!ロボコン』(1974年)『アクマイザー3』(1975年)など、数々の特撮キャラクター作品を生み出して好評を博してきたが、本作では初めて「巨大ロボット特撮」に挑戦。東映で巨大ロボットがメインとなって活躍する作品を作ったのは、横山光輝氏が原作を手がけた特撮テレビドラマの傑作『ジャイアントロボ』(1967年)以来、ひさびさのことだった。
『大鉄人17』が誕生する前年=1976年は、東映特撮(ヒーロー&キャラクター)作品の製作本数がかつてないほど増え、活況を見せていた。1974年から続く『がんばれ!!ロボコン』、1975年から続く『秘密戦隊ゴレンジャー』『アクマイザー3』に加えて、新たに4月から『宇宙鉄人キョーダイン』、『ザ・カゲスター』『忍者キャプター』の3作が放送開始し、7月からは『アクマイザー3』の後番組『超神ビビューン』とキャラクターホームコメディーの新番組『ぐるぐるメダマン』が始まっている。これら、バラエティに満ちた個性的な作品群に共通する要素として、作品中に数々の「キャラクター」あるいは「メカニック」が登場し、それらを忠実に再現した質の高い玩具商品が好調な売り上げを示したことが挙げられる。
これは「ポピー(現:バンダイトイ事業部)」が企画・開発した、『仮面ライダー』の「光る!回る!変身ベルト」や「ポピニカ・サイクロン号」、永井豪原作の大ヒットロボットアニメ『マジンガーZ』(1972年)の「ジャンボマシンダー」(1973年発売)「超合金マジンガーZ」(1974年発売)など、テレビ番組のイメージを忠実に玩具化した「リアル志向」の商品が大ヒットしたことと無関係ではない。
70年代中盤に入ると、テレビキャラクター番組では玩具商品化を前提としたメカニックやロボットが活躍し始め、ポピーやタカトクなど各社の玩具アイデアが色濃く反映されるようになった。玩具企画との連携を密にすることで、実写作品の場合、ヒーローの操る巨大メカやスーパーマシンの見せ場が(可能な限り)強められ、子どもたちの興味をひくと同時に玩具の購買意欲を高めた。
シリーズ第5作『仮面ライダーストロンガー』(1975年)で4年9ヶ月続いた「仮面ライダーシリーズ」を一旦終了させた東映・毎日放送は、同じ石ノ森章太郎原作で『宇宙鉄人キョーダイン』を1976年にスタート。地球侵略を目論むダダ星ロボット軍に戦いを挑む、正義のロボット兄弟の活躍を描いた特撮アクションドラマの『キョーダイン』では、兄・スカイゼル、弟・グランゼルの「人間離れ」したロボットならではの痛快アクションを見せ場とした。どんな形状にも変形できる金属中性子で作られたキョーダインは、スカイミサイルとグランカー、あるいはスカイジェットとグランミサイルに姿を変え、敵ダダロイドを攻撃する。初期エピソードでは各種メカに変形したキョーダインとダダロイドとのメカニック戦が、大規模な特撮を用いて描かれた。ポピーからはスカイゼル、グランゼルや、グランカー、スカイジェット、ゴンベスといったキャラクター玩具(超合金&ポピニカ)がポピーから発売され、人気を博した。
等身大の軽快なロボットアクションがメインの『宇宙鉄人キョーダイン』の後番組として登場した『大鉄人17』は、前作とムードをガラリと変えて「重厚な巨大ロボット同士の対決」を主軸に据えた作品となった。何より重要なのは、キョーダインの「変形」が玩具では再現不可能な「メタモルフォーゼ」的なものだったのに対し、ワンセブンの場合、「要塞17」「飛行17」「戦闘17」の3弾変形が、ポピーの「DELUXE超合金GA-81 大鉄人17」でリアルに再現できる部分である。
体を折り畳んだ「要塞17」の状態で地底洞窟に眠っているワンセブンが、いざ敵ロボットとの対決に赴く際に上体を起こしてロボット形態「戦闘17」になるアクションには、実際の工業機器を思わせるシステマチックな魅力が感じられた。
当時ポピーで玩具開発・デザインを務めていた村上克司氏は、石ノ森章太郎氏が描いたワンセブンのデザイン画をベースにして、“石ノ森テイスト”を活かしながら変形ギミックが組み込めるようアレンジを施した。すでに村上氏のアイデアを採り入れた変形玩具として、アニメの世界ではDX超合金GA-9「勇者ライディーン」(1975年)や、5台のポピニカが変形・合体してロボットになるポピニカPA-78~82「超電磁ロボ コン・バトラーV」(1976年)などが生まれていたが、実写特撮作品の中で「A」の状態からまるで印象が異なる「B」の状態へと“実際に”変形可能な玩具商品が出てきたのは「大鉄人17」が最初であった。ちなみに石ノ森氏が描いた初期ワンセブンのデザインは、テレビ第21話から登場する弟ロボット「ワンエイト」に活かされている。
村上氏の談話によれば「ヒョウやライオンが獲物を狙う際、体を低くして力を溜め、ここぞというときに飛びかかっていく」動きを巨大ロボットに採り入れたのだという。実写特撮作品初の本格変形巨大ロボット・ワンセブンのDX超合金は子どもたちの心を見事につかみ、なんと166万個もの販売実績をあげたと記録されている。
それまで、変形(あるいは合体)を売りにしたヒーローロボットキャラクターはアニメ作品に多く、実写特撮作品では等身大ヒーローが乗る巨大飛行メカや特殊戦車に重きを置いていたが、『大鉄人17』の好評に確かな手ごたえをつかんだ東映&ポピーは1978年、アメリカンコミックのヒーローに巨大ロボットを加えた『スパイダーマン』(東映TVシリーズ)を製作。ここでの巨大ロボット・レオパルドンもワンセブンと同じく、巨大母艦マーベラーから人型巨大ロボットにチェンジする、見事な「変形ギミック」が評判となり、「DX超合金GA-90レオパルドン」もヒットを飛ばした。その後、等身大ヒーローが乗り込む巨大ロボットというフォーマットは『バトルフィーバーJ』(1979年)に受け継がれ、以来「スーパー戦隊シリーズ」の定番へと発展していく。『大鉄人17』が東映特撮ヒーローの歴史に残した足跡は、あまりにも大きなものであったのだ。
なお、2021年10月26日発売の雑誌『フィギュア王』No.285では『大鉄人17』大特集が組まれている。2022年に発売される超合金魂GX-101「大鉄人17」詳細情報や企画スタッフ取材記事はもちろんのこと、『大鉄人17』登場キャラクター紹介、ブレインロボット大図鑑、ワンセブン17の秘密(コラム集)、各種グッズコレクションなど、充実の内容で『大鉄人17』テレビシリーズの魅力に迫る。
(C)石森プロ・東映