「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」について審議しているBPO青少年委員会が、催眠術を使ったドッキリについて議論していることが6日、分かった。

BPO事務局の入る千代田放送会館

9月28日に開催された同委員会の会合では、催眠術をかけて記憶をなくさせて、トイレで爆竹を鳴らすというドッキリをループで仕掛ける企画に対しての視聴者意見が取り上げられ、「芸人に催眠術をかけて記憶を消し、何度も同じドッキリを仕掛けて皆で大笑いしていた。人の記憶を操作するなど倫理的に許されない」「いじめやパワハラは仕掛ける側が“いじめじゃないよ”と言い逃れすれば、一日中どころか一生ループが止まらない」などの声が寄せられたことが報告。

委員からは、「民放連の放送基準 第3章『児童および青少年への配慮』に催眠術を取扱う場合は、児童および青少年に安易に模倣させないよう特に注意するようにとされており、ドッキリであるとしても、催眠術をかけること自体の演出もいかがなものか」「民放連の放送基準に注意規定があることを確認しているのか」などの意見が出された。

これを受け、「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」の審議の中で、引き続き議論することになった。

取り上げられた番組は、『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ)であるとみられるが、同委員会では「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」の審議入りの際、「個別の番組を取り上げるものではない」と説明していた。

この日開催された会合では、2009年にBPO放送倫理検証委員会が出した意見書「最近のテレビ・バラエティー番組に関する意見」の作成に関わった東海大学文化社会学部教授の水島久光氏から、同意見書を発出した当時の経緯や議論状況、その後の放送界の変化についてヒアリングし、その後質疑応答を実施。水島教授の指摘した点を参考に、審議を続けていくことになった。

2009年の意見書では「社会状況が悲痛な停滞感のある中では嘲笑的な笑いの構造がどんどん進んでいくのではないか、みんなでそれを笑わなければいけないような同調圧力が生まれ、それが暴走して一人の人間を攻撃するとか、社会がそうした風潮に染まっていく危険性が、SNS等の発展と共に進むのではないか」と指摘していた。