収入は高いことに越したことはありませんが、不労所得で左うちわのケースはめったにあるものではありません。収入が多ければ、その分責任も重く激務なことが少なくないでしょう。責任ある立場であれば、ある程度年齢も重ね、激務な上に趣味にお金と時間を消費する体力もなくなるので、それなりの蓄財もできているはずです。
まだまだ長い人生、そろそろスローダウンして自分らしく生きていきたいと思う方も少なくないでしょう。しかし、高収入でバリバリ働いている時にはあまり深く考えなかったお金の問題は、いざ収入が減ってしまうと意外にストレスになりかねません。キャリアダウンして心身ともに解放され、第二の人生を豊かに過ごすには、どのようなことに注意すればよいでしょうか。
キャリアダウンの目的と収入減のリスクを把握する
「キャリアダウンの目的や方法によって注意点や対策は違ってきます。後戻りは困難ですので、しっかり自分自身に問いかけてみましょう。その上で、現在から自分の平均余命までのライフプランニングシート(生涯収支表)を作成して、今後のリスクを確認してみましょう。最低限必要な収入や抑えなければならない支出の額なども把握できます。
「キャリアダウン」の目的は?
- 私的な時間を増やしたい
- 過剰なストレスの無い仕事の仕方をしたい
- 副業をスタートさせるので、正業をスローダウンしたい
「キャリアダウン」の方法は?
- 大企業から中小企業へ
- 正社員から契約社員、自営業などへ
- 都会から地方へ
キャリアダウンの前に生活を絞る
高収入の方はその分どうしても生活が広がってしまいます。激務であれば食事やその他全般外部のサービスに頼ることも多いはずです。キャリアダウンを考え始めたら、生活を絞っていきましょう。同時にその分の余力を貯蓄に回して今後の生活に備えましょう。
コツはキャリアダウン後の生活を見据えて、それにつながる節約を目指す点です。同時に外部サービスに代わる価値を意識することです。
例えば食費の節約であれば、当然外食から自炊や弁当持参に代わりますが、休みの日はベランダで朝食をしたり、弁当持参でドライブしたり、自転車で遠出をしたり、非日常の食生活をいろいろアレンジして楽しむことなどがあります。食材を無駄にしないおいしいレシピなどにも取り組んでみるとよいでしょう。高級レストランの味を、手軽な材料で試行錯誤しながら再現してみるなど、楽しみ方はいろいろあります。食に限らず、お金を使わずに自分を楽しませる訓練が必要です。
住宅ローンの完済と住まいのリフォーム、その他準備しておく費用
スローダウン後の収入が確定していれば、繰り上げ返済等で収入減でも支払っていけるだけの月々の返済額にしておくとよいでしょう。今後の収入が未確定の場合は完済しておく方が無難です。
私は自営する際には自分のローンを完済しました。私の周囲には資金はあったのですが完済せず、その後事業がうまく回転せず、病気にもなって住宅ローンを返済できなくなり、破綻に近い状態になった方もあります。マンションの場合はローンを完済しておけば、管理費・修繕積立金を数年分別途用意しておけば、不測の時代に遭遇しても、とりあえず住まいは確保できます。
また、高齢になった時の住まいの維持費の負担を少なくするために、住まいのリフォームなども高収入に間に済ませておきましょう。思わぬ費用が掛かってしまったなら、キャリアダウン時期を遅らせて調節も可能です。キャリアダウンを公表前にリフォーム等は済ませておきましょう。
高収入の翌年の住民税や健康保険料などは高額です。当面大幅に収入が減少すると思われる場合は、翌年の住民税や保険料などを別途準備しておくとよいでしょう。
保険と年金の見直し
収入が変われば、生活設計上必要保険額も変わるケースも考えられます。より多く掛けたくてもその分保険料も高くなります。ライフプランニングシートから必要保険金額を再検討してみてください。
同時に将来もらえる年金額についても考えてみましょう。今まで高収入であれば、その分年金額は多いでしょう。しかし今後収入減となるのであれば、将来の年金額の予測も立ててみましょう。最低限の生活ができるだけの年金は確保したいものです。貯蓄額を増やす、+αの年金に加入する、長く働ける職種にするなど将来への対策も考えておきましょう。
キャリアダウンと夫婦の足並み
夫婦ともにキャリアダウンするのか、片方だけなのか、そもそも片方は激務でないのか、専業主婦(夫)なのか……など、夫婦の数ほどのパターンがありそうです。いずれの場合でも、二人の位置関係や役割分担など、なにがしかの変化があるはずです。特に自営になったり、地方に移住したりと大きく環境が変わる場合は、相当綿密に話合う必要があるでしょう。
例えば、夫婦ともに会社員からそれぞれ独自にフリーランスになったとします。確かに自分自身で選択コントロールできますので、会社員時代のようなストレスはないかもしれません。しかし、そもそもフリーランスは楽ではありません。仕事が少ない時期があると思えば、どっと受注があり身動きできないなど日常茶飯事です。勤め人時とはまた別のストレスが生まれかねません。子供がいれば、また一段と複雑になります。今までの夫婦の立ち位置を引きずらず、一度リセットして新たな役割分担などを構築することも必要かもしれません。
コロナ禍を受けて、キャリアダウンの必要性を強く感じています。豊かな時代に育った世代は外部サービスを受けられないことに対するストレスは相当なもののようです。同時に状況の変化に対する想像力の不足も気になります。同年代以上の世代と話すと、状況の変化に応じて臨機応変にストレスを解消する方法を色々見つけて泰然としていて、大いなる違いです。いろいろ工夫して自分を楽しませることに長けています。
高収入を得ている有能な人材が疲弊せずに、キャリアダウンにより感性を研ぎ澄ませて新たな社会を作っていく意義は大きいように思います。