育児休業(育休)とは、育児・介護休業法によって定められた子供を育てる従業員が取得できる休業制度です。男女のいずれも取得できますが、育児休業を取得するための条件や取得期間、育児休業中の給与など、初めて育児休業を経験する人にとってはわからないことも少なくないでしょう。
そこで本記事では、育児休業の期間や取得条件、育休中の給付金などについて解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
育児休業とは
育児休業とは、子供を育てる従業員が法律上取得できる休業であり、育児・介護休業法(正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)という法律に定められています。
制度利用の対象となるのは「1歳未満(場合によっては2歳まで)の子供を養育する従業員」です。「育休」と略した言葉を用いる際はこの育児休業を指すのが一般的です。
育児休暇とは
育児休業とは似て非なる言葉に育児休暇があります。
育児休暇とは、子供を養育するために取得できる休暇です。制度利用の対象となるのは「就学前の子供を養育する従業員」です。2017年10月1日に施行された改正育児・介護休業法によって、育児休暇制度の導入が企業に対する努力義務とされました。
あくまでも努力義務なので、 育児休暇制度を設けていない企業に対する罰則はありません。育児休暇中の給料の支給といった制度の内容も各企業に委ねられていますが、無給の会社のほうが多いです。
育児休業と育児休暇の違い
育児休業と育児休暇の違いを簡単にまとめてみました。
【養育する子供の年齢】
休暇の対象となる養育する子供の年齢に関しては、育児休暇が「就学前の子供」の育児をする労働者を対象としているのに対し、育児休業は「1歳未満の子供(条件によっては2歳まで延長も可能)」の育児をする労働者が対象となっています。
【法的拘束力の有無】
育児休暇は努力義務であるため、制度として適用している会社は限られています。企業側はこの制度を会社内に設けなくても罰せられることはありません。一方の育児休業は育児・介護休業法において労働者の権利として認められています。企業側は従業員が育児休業を申請した場合、原則として休業を承認する必要があります。
育児休暇 | 育児休業 | |
---|---|---|
対象 | 就学前の子供を養育する従業員 | 1歳未満(場合によっては2歳まで)の子供を養育する従業員 |
法の適用 | なし | あり |
育児休業の取得条件
育児休業の取得条件は無期雇用と有期雇用で異なります。
一般的な育児休業の取得条件は「1歳に満たない子を養育する労働者であること」です。ただし、有期雇用の労働者が取得する場合は申請時に以下の要件をすべて満たしておく必要があります。
- 同一の事業主に過去1年以上雇用されている
- 生まれた子供が1歳の誕生日を迎えてからも、引き続き同じ事業主の下での雇用が想定されている
- 子供が1歳6カ月になる日まで(期間を1歳6カ月から2歳まで再延長する場合は、2歳になる日まで)に雇用契約がなくなることが明らかではない
例えば転職直後の有期雇用労働者が育児休業を利用とする際、「同一の事業主に過去1年以上雇用されている」がネックとなる可能性があります。申請前に確認しておいたほうがよいでしょう。
育児休業期間の延長条件
育児休業の期間は原則として「子供が1歳になるまで」と定められています。ただし、1歳6カ月までの期間延長と2歳までの再延長が可能です。
正規の育児休業 | 育児休業の延長可能期間 | 育児休業の再延長可能期間 |
---|---|---|
子供が1歳になるまで | 1歳6カ月まで | 2歳まで |
休業期間の延長と再延長ができる条件は下記となります。
育児休業を1歳6カ月まで延長できる条件
- 1歳の誕生日の前日に従業員本人、または配偶者が育児休業中
- 以下のどちらかに当てはまる
・保育所へ入所を希望していても入れない
・子供を養育する予定だった配偶者が死亡や病気などによって育児ができない
育児休業を2歳まで延長できる条件
- 1歳6カ月になる日の前日に従業員本人、または配偶者が育児休業中
- 以下のどちらかに当てはまる
・保育所へ入所を希望していても入れない
・子供を養育する予定だった配偶者が死亡や病気などによって育児ができない
どちらの場合も、保育園が決まったら育児休業は終了です。
なお、父親の育児休業の促進を図る「パパ・ママ育休プラス」や「パパ休暇」という制度も設けられています。各制度の特徴を、くわしくみていきましょう。
パパ・ママ育休プラスとは
パパ・ママ育休プラスとは、夫婦ともに育児休業を取得する場合に休業期間が1歳2カ月まで延長される制度です。
1人あたりの最長休業期間は1年ですが、パパとママで取得開始時期をずらせば子供が1歳2カ月になるまで切れ目なく育休を取得することができます。 配偶者の職場復帰後も最大2カ月サポートできる点が、パパ・ママ育休プラスの大きな特徴と言えるでしょう。
パパ・ママ育休プラスの利用条件は、下記のとおりです。
- 子供が1歳に達するまでに配偶者が育児休業を取得している
- 本人の育児休業開始予定日が、子供の1歳の誕生日以前
- 本人の育児休業開始予定日は、配偶者の育児休業初日以降
パパ休暇とは
パパ休暇とは、父親が産後休業期間(出産後8週間)に育児休業を取得して終了すれば、再度育児休業を取得できる制度です。再取得できるのは子供が1歳になるまでで、期間は最長1年となっています。
パパ休暇は特別な事情がなくても父親の育休再取得ができるため、配偶者の育児や職場復帰をサポートしたいときに活用できます。柔軟性が高い育休制度の利用を検討している男性にも適しているでしょう。
育児に関連する給付金
ここからは、出産・育児関連の主な給付金をご紹介します。出産や育児は出費が多くなるので、給付される金額や適用条件を確認しておきましょう。
出産手当金
出産手当金とは、産前産後の休業中に給与がなかった期間の給付金が支給される健康保険の制度です。対象期間は出産日以前42日から出産日の翌日以降56日の範囲内となります。
1日あたりの支給額は、下記の計算式で算出することが可能です。
支給開始日以前12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)
標準報酬月額の平均額は30万円なので
30万円÷30日×2/3=6,667円
が1日あたりに支給される金額の目安になるでしょう。
出産育児一時金
出産育児一時金とは、原則として子供1人につき42万円が給付される健康保険の制度です。「直接支払制度」を利用すれば協会けんぽが病院に直接支払いをしてくれるので、出産に関わる支払い手続きを簡略化できるというメリットもあります。
育児休業給付金
育児休業給付金とは、育児休業を取得したときに利用できる雇用保険の制度です。支給される給付金は下記の計算式で算出されます。
休業開始時賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6カ月経過後は50%)相当額
給付対象となる条件は次のとおりです。
- 雇用保険に加入している
- 育休前の2年間で、11日以上働いた月が12カ月以上ある
- 育児休業期間中、休業開始前の月額賃金の8割以上が各月で支払われていない
- 育児休業期間中に就業する日数が各月10日以下(10日を超える場合は、就業時間が80時間)
育児休業給付金が支給される期間は子供が1歳を迎える前日までですが、1歳6カ月までの育休延長が認められた場合や、2歳までの再延長が認められたときには、給付金の支給も延長されます。
パパ・ママ育休プラスも育児休業給付金の支給対象です。パパ・ママ育休プラスの育児休業給付金支給条件は下記となります。
- 育児休業開始日が1歳に達する日の翌日以前
- 育児休業開始日が、配偶者が取得している育児休業期間の初日以後
- 子供が1歳に達する日以前に配偶者が育児休業を取得している
育児休業中の社会保険料
育児休業期間中は社会保険料の支払いが免除されます。免除される期間は「育児休業の開始月」から「終了前月(ただし、終了日が月末の場合は終了月)」までです。日割り計算はされませんが、免除期間中も被保険者としての資格は継続します。
なお、社会保険料を免除してもらうためには、事業主による「健康保険・厚生年金保険育児休業等取得者申出書」の届け出が必要です。育休を開始したら自動的に免除されるわけではないので注意しましょう。
育児休業を活用して仕事と育児を両立させよう
育児休業は子育てのための制度です。育児に関わるなら男女を問わず取得できます。育休中は一時金の支給や社会保険料の免除といった制度も利用できるので、上手に利用して仕事と育児を無理なく両立させましょう。