マイナビは先ごろ、「2022卒の新卒採用や就職戦線」を振り返るセミナーを開催。同社のキャリアリサーチラボ主任研究員・東郷こずえ氏が、コロナ禍における就職戦線がどのように変化しているかなど、詳しく解説したので紹介したい。
コロナ禍でも企業は採用に意欲的
ここ最近の新卒採用においては、やはりコロナ禍の影響を無視できない状況になっている。2021年卒の採用活動時には、対面型イベントの中止や延期、感染予防対策としてWEB化を進めるなど、対処的な活動を余儀なくされた。
2022年卒の採用活動においては、昨年度の教訓を踏まえ、目的に応じて対面とWEBを使い分けたり、新しい採用手法を模索したりと、より戦略的な活動が実践されているという。また、企業の新卒採用意欲は依然として高く、6割が例年並み、21年卒の入社実績数よりも採用予定数を増やすと回答した企業は2割以上にものぼる。
これは21年卒の採用が、コロナ禍により苦戦したためと考えられる。また、景況に関わらず新卒採用が継続されている理由については、人材不足の補充というよりは、人員構成の最適化など長期的視点での組織形成のために継続していることが同社のアンケート調査から推測されると話す。
インターシップ期間では、上場企業でのWEB活用が拡大
22年卒のインターシップ期間においては、WEB活用が大きく拡大。学生へのアンケートによると、95%の学生がどこかのタイミングでWEB開催のインターシップを経験している。しかしながら、WEB導入を進めている企業は上場企業が中心で、22年卒のインターシップについて「どちらかというとWEB」「すべてWEB」と回答している上場企業が過半数となっているのに対し、非上場企業は3割程度となった。
コロナ禍によって、学生生活も大きく変化しており、大学への通学やアルバイト経験が大きく減少。社会人との交流や大学での情報共有機会が減少し、情報不足に陥っているといえる。
就職活動準備においても、例年に比べ「旅行やボランティアなど、人と違うことをする」が大きくポイントを減らしており、自宅でできる情報の検索や内省がポイントをあげている。コロナ禍によって活動が制限されていたことで、自己PRで話しやすいエピソードがなく、不安に感じている学生も多いという。一方で、WEB形式への順応が昨年よりも高くなっており、就職活動において「全工程をWEB化しても構わない」とした学生が、昨年より23%増の39.3%にまで増えている。
一方、企業側は昨年に比べ、個別の企業セミナーでのWEB利用が増加、最終面接では対面が微増していたという。情報伝達がメインとなる個別企業セミナーではWEBを、コミュニケーションの見極めが重要となる最終面接では対面、と採用活動のフェーズごとに使い分ける傾向が見えてきている。
そして、WEB導入が拡大されたことによって、37.7%の企業が「他エリア在住の応募者が増えた」と感じており、その傾向は全国的にみられた。学生の地元就職志向の高まりも影響していると考えられる。
内定者が不安に感じること
昨年の教訓を受け、コロナ対策も含め企業が準備を進めていたこともあり、選考はおおむねスムーズに進み、22年卒の内々定率は21年卒よりも大幅に上回った。WEB化によって順調に選考を進められた一方で、対面機会の不足から「人物の見極め」「内定フォロー」など、不安を感じている企業も少なくない。内定者との細やかな接触機会の創出や情報提供の工夫などが今後の課題となるだろう。
内々定辞退対策として、懇親会や社内見学などを対面で実施することが多い。学生も、内定者フォローの内容について、対面を希望する割合が大きくなっている。内々定学生が不安に感じていることの多くは「社会人としてやっていけるか」「この仕事に向いているか」といった、企業ではなく自分に向かっている。人事との面談などで”入社して何をやるのか”を明確にすることが、不安解消につながるだろう。
2023年卒の採用活動はさらに戦略的に
2023年の新卒採用計画は、9割以上の企業が新卒採用を実施する予定と回答しており、引き続き新卒採用継続意欲は高水準を維持している。
22年卒の採用は、WEB導入が進められた初年度であったこともあり試行錯誤がみられたが、23年卒の採用予定では、「会社見学・工場見学・職場見学」「実際の現場での仕事体験」の割合が増えており、WEBと対面の使い分けがより進む見込みとなっている。
今の学生は「どの会社に入るか」ではなく、「どんなふうに何をして働くか」をより重視する傾向にある。そのため、不確かな長期ビジョンよりも、入社直後、3年目、5年目といった直近のビジョンを提示することが、学生の入社意思を高めるカギとなるそうだ。
WEBと対面の特性を活かしつつ、戦略的な採用活動を実施し、学生にクリアな未来を提示していくことが重要ではないだろうか。