「とんでもないです」は、上司など目上の人から感謝されたり褒められたりしたときに謙遜する意味で返す言葉ですが、果たして正しく使えているでしょうか。
本記事では、「とんでもないです」という言葉の意味や敬語での正しい使い方、言い換え表現などを解説するので、ぜひ参考にしてください。
「とんでもないです」の意味と正しい敬語表現
「とんでもないです」は、「とんでもない」という形容詞に丁寧語である「です」を付けたものです。
意味は大きく3つに分かれ、「思いもかけない/意外な」という意味や、「もってのほかである」というマイナスの意味、そして「滅相もない」と相手の話や考えを強く否定する謙遜の言葉として使われます。
言葉の成り立ちから「とんでも」と「ない」に分けられると考えられがちですが、「とんでもない」という一連の形容詞とされています。つまり「とんでもある」という言葉はありません。一説によると「途でもない」という言葉が読みやすく変化したとされています。「途」は道のり、道筋といった意味があります。
「とんでもないです」や「とんでもございません」は本来は間違い
「とんでもないです」という言葉は一般的に使われていますが、本来は間違った表現です。
前述したように「とんでもない」はこれ自体が一連の形容詞のため、「とんでもないです」ではなく「とんでもないことです」が本来の正しい表現になります。
また、「とんでもないです」を丁寧に言いたいとき、「とんでもございません」と言う人が多いですが、「とんでも」と「ない」に分けることができないので、こちらも本来は間違い。しかし今では「とんでもないです」や「とんでもございません」という表現は広く一般化され、2007年には文化庁の「敬語の指針」においても、使用しても問題ないとされています。
「とんでもないです」の使い方・例文
「とんでもないです」の使い方やビジネスシーンで使える例文を紹介します。
目上の人から感謝されたときや謝罪されたとき
「とんでもないです」には3つの意味がありますが、ビジネスシーンにおいては「滅相もない」という謙遜の意味で使うケースが多いです。主に目上の人や取引先などに感謝されたとき、褒められたとき、あるいは謝罪されたときの返事として使います。
メールでも使用できる
「とんでもないです」はビジネスメールにおいても使用できます。ただし、文面のみの場合は上手くニュアンスが伝わらない場合もあるので、使う相手やシーンなどには注意しましょう。
ビジネスシーンで使える例文
どのような場面で使える言葉なのか、例文を見てみましょう。
【上司に褒められたとき】
上司「今月も営業成績トップをキープしているなんてさすがだね」
自分「とんでもないです。さらに上を目指して頑張ります」
【先輩に感謝されたとき】
先輩「あなたがいてくれて助かった。お陰で問題なく処理できそうだよ」
自分「とんでもないです。またいつでも呼んでください」
【取引先に謝罪されたとき】
取引先「この度はご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした」
自分「とんでもございません。今後は弊社でも依頼時に再確認いたします」
「とんでもないです」の類語・言い換え表現
「とんでもないです」を謙遜して使うときの言い換え表現や類語を見ていきます。
恐縮です
「恐縮です」の恐縮には、「恐れて身がすくむこと」のほかに「相手に迷惑をかけたり、厚意を受けたりして申し訳なく思うこと」という意味があります。
ビジネスシーンだけでなく日常においても広く使われ、特に目上の人に対して使うのが一般的です。
【例文】
「お褒めにあずかりまして、恐縮です」
「お手数をおかけして、大変恐縮に存じます」
滅相もない
「滅相もない」は「とんでもない、あるべきことではない」という意味です。とんでもない、恐縮です、という言葉に比べて、一層謙遜の気持ちを込めることができます。
【例文】
(感謝されて)「滅相もないことです。当然のことをしただけですから」
光栄です
「光栄です」の光栄とは「行動や功績などを褒められて名誉に感じること」という意味があります。褒められたことを謙遜するのではなく、素直に受け入れる潔さのようなものがあります。
【例文】
「このような評価をいただけるとは、身に余る光栄です」
「今回はお招きいただきまして、大変光栄に存じます」
「とんでもないです」を正しく使おう
「とんでもないです」という言葉について見てきました。「とんでもない」という形容詞は「思いもかけない、もってのほかである」というマイナスの意味のほか、相手から褒められたときに謙遜して使うこともあります。
「とんでもないです」の敬語表現は「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」です。文法的には本来誤りとされる「とんでもございません」も、一般化されていることから使っても問題ないとされています。
ただし、人によっては「とんでもございません」に違和感をもつ場合もあるので、相手やシチュエーションに応じて上手く使い分けましょう。