会社を辞めた後、生活費を工面するためにも退職金がいつ支払われるか気になりますよね。退職して日が経つのに一向に退職金が振り込まれず、なかには半年待っても入金されないケースもあります。
退職金は会社によって支払日が決まっているため、一概にいつまでに入金されるとはいえません。そうはいっても、あまりにも振り込みが遅い場合は、こちらからアクションを起こす必要があります。今回の記事では、退職金の支払いが遅い理由についてや、支払いが遅い場合の対処方法についてまとめました。
退職金制度とは
まずは、そもそもの退職金制度をしっかりと把握しておきましょう。あらためて退職金に関する知識を身につけておくと、転職する際にもきっと役立ちます。
退職金制度の概要
退職金制度とは、名前の通り退職するときに退職金を支払う制度のことで、正式名称は「退職給付制度」です。あくまで会社ごとに設定されているため、支給額や支給日は会社側の意向で決定されます。
退職金は、退職手当や退職慰労金などと呼ばれており、今までの勤労に対する謝礼としての意味合いがあります。そのため勤労年数に応じて、支給額が大きくなるのが一般的です。
5社に1社は退職金がない
バブル期の1990年ごろは、企業にも力があり退職金の支給は当たり前でした。しかし、今では5社に1社は退職金制度がありません。知らずに入社して「え? 退職金は支給されないの?」と後で後悔しないためにも、就職前に退職金の有無はしっかりと確認しておきましょう。
また、最近では居酒屋チェーンのワタミフードサービスが退職金制度を撤廃した例があります。会社の経営状況や福利厚生面も見ておきたいですね。
退職金を受け取る条件
退職金を受け取るには、会社の就業規則に記載された条件をクリアする必要があります。ほとんどの企業では「入社後3年以上働いた者」「正規社員のみ」などと、勤続年数や雇用形態で支払条件を設定しています。
まずは、自分が退職金の支給対象であるか就業規則で確認しましょう。なお特に規定がなければ定年退職時だけでなく自己都合や解雇、支給対象者が死亡した場合でも受取可能です。
退職金はいつ振り込まれるのか
退職後の生活費に退職金を充てようと考えている方も多いはず。よくある支払いパターン3つと、退職金の支払日の確認方法をまとめました。「今日も振り込まれていない……」と不安に思う方は、まず自分がどのパターンに該当するかみていきましょう。
(1)民間企業は退職後1~2カ月以内が基本
民間企業では、退職後の1~2カ月以内に振り込まれるのが一般的です。ほとんどの場合は、退職した月の給料と一緒に振り込みがあるため、給料日に確認してみましょう。しかし、就業規則で退職金の支払いを半年後に設定している会社もあります。まずは退職する前に就業規則の確認や、人事部・経理部に問い合わせをしておくと安心です。
(2)月によっては振り込みが遅れる
退職者が多い3月などは、会社や退職金の担当をする機構が忙しいため、退職金の支払いが遅れるケースがあります。退職金が振り込まれるまでには、一般的に次の4つの工程があります。
1. 退職者が退職に関する手続きを完了する
2. 会社側が外部の退職金の担当をする機構に支払いを依頼する
3. 退職金の担当をする機構が手続きを開始する
4. 手続きが完了次第、退職金が振り込まれる
「1カ月以内に振り込まれると聞いていたのに……」と、不安に思う方は一度、会社に問い合わせてみましょう。もしかすると、退職金の担当をする機構への依頼を忘れているかもしれません。
(3)公務員は原則1カ月以内
国家公務員の退職金は、「国家公務員退職手当法」で規定されています。そのため原則、退職した翌月中に入金されます。地方公務員の場合は、「地方自治法」で国家公務員の制度にならうとされているため、同じく1カ月以内の支給です。手続きが完了次第、振り込まれると考えていいでしょう。
退職金は退職金振込通知書で確認する
退職金が支給される前に、退職金振込通知書が手元に届きます。内容は、退職金の金額や振込予定日などが書かれています。会社側で支払準備ができた後に郵送されるので、勤め先によって届く時期が違います。通知書が届いたら、あとは入金されるのを待ちましょう。
退職金が振り込まれない際の対処方法
退職金の支給時期から大きくずれ込んでいる場合、以下の2つの対処方法を試してみましょう。「明日は、きっと振り込まれるはず」と、会社を信用して待っているだけでは解決しません。退職金の支給が遅れている理由をはっきりさせるためにも、まずは行動あるのみです。
方法1. 勤務先へ問い合わせる
退職金は状況によっては支払いが遅くなることもありますが、あまりにも遅すぎるようならば思いきって以前の勤務先に問い合わせましょう。もしかしたら何か手違いがあったり、退職者が多くて手続きが遅れたりしているかもしれません。「自分からは聞きづらい」という方は、先輩や同期に調べてもらいましょう。
いつ振り込まれるかわからない状態より、何らかの回答を得られるので安心できるはずです。仮に何も対応してもらえないようであれば、「内容証明郵便」で書面にて請求をしましょう。
方法2. 労働基準監督署に相談する
会社に問い合わせても動いてくれない場合は、まずは労働基準監督署に相談しましょう。仮に労働基準監督署で対応できないケースでは、労働局に紛争調整委員会があるため、個人対会社のトラブル解決に向けて仲介役をしてくれます。退職金も取り扱ってくれ、場合によっては法テラスや労使団体とも連携可能です。
退職金の振込に関しよくある質問
最後に、退職金に関するよくある質問を4つ取り上げてご紹介します。
会社が倒産しても退職金は振り込まれるのか
退職金だけでなく未払いの給料も、倒産手続きの期間中に優先的に支払われます。しかし、会社が全くお金を払えない状況に陥っている可能性もあるため、会社側に請求できないケースも少なくありません。その場合、独立行政法人労働者健康安全機構が立て替えてくれます。
ただし法律上の倒産の場合には破産管財人等による証明を、事実上の倒産の場合には労働基準監督署長による確認を受けたうえでの支払いとなります。所定の条件を満たしており経営者と連絡がつかないときは、労基署に相談してみましょう。
退職金を早く支払ってもらう方法はあるのか
退職金は、会社が定めた日に入金される決まりなので、支払いを急がせることはできません。就業規則に「退職金の支払いはボーナス月の6月・12月」と記載されていれば、仮に1月退職でも約半年は待つことになります。
ちなみに支払いの時期は、労働基準法第89条3の2で必ず明記することとされています。就業規則を確認してから退職時期を決めましょう。
介護福祉業界は支払いに時間がかかるのか
介護職や福祉施設では、「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」を導入しているところが多くあります。福祉医療機構で管理されるため、支給までに3カ月ほど時間がかかります。 また、4~8月の期間は、3月末の退職者の対応で忙しい傾向にあるため、通常より待期期間が長くなるケースもあります。
何度問い合わせても支払われないときはどうすればいいのか
いつまでたっても退職金が振り込まれず、問い合わせてもらちがあかないことも少なくありません。そのようなときは、自分だけで対処するのは難しいため第三者に助けを求めましょう。
このようなケースでは厚生労働省に委託されて公益社団法人全国労働基準関係団体連合会が開設した「労働条件相談ほっとライン」が活用できます。電話で無料相談できるため、自身で弁護士を探す前に、まずは窓口に相談してみましょう。
会社を辞める前に退職金がいつ支払われるか確認しよう
あくまで会社側がルールを決めているので、退職金がいつ支払われるかは会社次第なところがあります。そのため、退職後に問い合わせても時にはハッキリした回答が得られないこともあるでしょう。
退職金を速やかに支払ってもらうためにも、会社で働いているうちに就業規則を確認すべきです。退職金の未払いが続くようならば、第三者を立てて交渉することをおすすめします。