特撮テレビドラマ『ウルトラマンコスモス』の放送開始20周年を記念し、東京・池袋サンシャインシティで8月27日、スペシャルイベント「ウルトラマンコスモスナイト ~20th Anniversary 君にできるなにか~」が開催された。ステージには主演を務めた杉浦太陽ほかメインキャストが久々に集結を果たし、20年前に青春を燃やした『ウルトラマンコスモス』の日々をふりかえって熱きトークを繰り広げた。

  • 左から市瀬秀和、ウルトラマンコスモス ルナモード、杉浦太陽、嶋大輔、後方スクリーンに鈴木繭菓

『ウルトラマンコスモス』は、円谷プロダクションの創設者にして、東宝映画『ゴジラ』(1954年)『モスラ』(1961年)などの特撮演出を手がけて世界的にも有名な特技監督・円谷英二氏(1970年没)の生誕100周年を記念して作られたウルトラマンシリーズである。

シリーズの流れとしては、『ウルトラマンティガ』(1996年)を起点とする新世代ウルトラマン=「平成ウルトラマンシリーズ」の系譜を受け継ぐ作品だが、さらに原点『ウルトラマン』(1966年)が備えていた「ヒーローの優しさ」というテーマを今一度見つめなおした本作は、以前からの平成ウルトラマンシリーズとの差別化を図りつつ、いっそうの高みを目指したいという意欲に満ちた作品となった。

20年目のウルトラマンコスモス

まず初めに催されたのは“その後のウルトラマンコスモス”というべき朗読劇「ウルトラマンコスモス それぞれの時間」(脚本:長谷川圭一/演出:市野龍一)だった。映画『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』(2003年)で新生チームEYESのキャップとなったフブキ(市瀬)と、遊星ジュラン(人間と怪獣が共存できる楽園というべき惑星)共生エリアで主任研究員を務める春野ムサシ(杉浦)のリアルタイム通信という形で、現在(2021年)における2人の近況報告や、チームEYESの仲間たちと共に数多くの怪獣たちと向き合ってきた思い出をふりかえるやりとりなど、『コスモス』ファンにとってたまらない時間が提供された。

やがて遊星ジュランで暮らす温厚な怪獣リドリアスに異変が起きたと、ムサシの妻アヤノから連絡が入る。テレビシリーズ第43話「操り怪獣」ほかに登場した侵略者「ノワール星人」がスクリーンに現れ、リドリアスを超小型メカ(ナノマシン)で凶暴化させたというのだ。フブキとの通信を切ったムサシは、もう一度大切なものを守る力を!と決意して「輝石」を天空に掲げ、ふたたびウルトラマンコスモスに変身した。

凶暴化したリドリアス・メカレーターを鎮めるためウルトラマンコスモス ルナモードが登場すると、静かな朗読劇から一転、迫力満点のアクションがステージ上に展開した。相手にダメージを与えるのではなく、相手の攻撃を「かわす・止める」アクションが主体となるルナモードの活躍ぶりは、まさにあのときのコスモスのイメージそのまま。つめかけた大勢のファンはコスモスならではのアクションに感激し、「コロナモード」「エクリプスモード」へのチェンジ演出が入るたびに、大きな拍手によるリアクションを取った。

チームEYES、感動の再結集

今回のMCを務めるのは、当時、2人の弟と一緒に『ウルトラマンコスモス』オンエアを観ていたという下村梨乃と、『ウルトラマンコスモス』本編班の助監督として撮影現場を駆けまわり、杉浦もムサシ役で出演している2012年の映画『ウルトラマンサーガ』の監督を務めた岡秀樹(おかひでき)氏。2人は『コスモス』の作品世界に無くてはならない重要な言葉=「慈愛」と書かれたTシャツ姿で、あふれんばかりのコスモス愛をたぎらせつつイベントを進行させていった。先ほどの朗読劇&アクションショーを舞台袖で観ていた岡氏は「もう泣けてしようがなかった」と、『コスモス』世界のその後を描く後日談的ストーリーがファンの前で披露されたことに、いたく感動したようだった。

ステージには、ウルトラマンコスモスと一体化するチームEYESの春野ムサシ隊員を演じた杉浦太陽と、ムサシの先輩であり、よき相棒となるフブキ隊員を演じた市瀬秀和が登場。そしてヒロインのアヤノ隊員を演じた鈴木繭菓がリモート出演を果たし、さらには若い隊員たちを引っ張るよき兄貴分・チームEYESのヒウラキャップを演じた嶋大輔がかけつけ、20年ぶりにチームEYESの4人が結集を果たした。

チームEYESの制服を、撮影時以来久々に着用した市瀬は「サイズが変わってなくてよかった」と、20年を経ても体型の変化がなかったことに安堵し、凛々しいたたずまいは当時のままながら、大人の渋味や貫禄を感じさせる魅力的な笑顔をのぞかせた。

杉浦の衣装は映画『ウルトラマンサーガ』に登場したときのもので、この作品では『コスモス』世界とは別な宇宙に存在する地球の危機を救った。杉浦は「10年くらい前の衣装なんですけど、今では筋トレをしすぎて首までチャックがしまりません」と朗らかに笑いつつ「チームEYESの制服にも腕を通しましたが、キツくてはまりません。40歳・成長期です(笑)!」と20年前よりも肉体を鍛え上げたことで、当時の衣装がかなりキツくなっていると打ち明けた。

現在は家族とニュージーランドで暮らしている鈴木は、現在のコロナ禍での状況を問われると「いまはロックダウン中ですが、私も家族も元気です!」と、20年前とまったく変わらない明るさで元気よくコメントした。杉浦と鈴木は現在でも家族ぐるみのつきあいだという。どちらのファミリーも4人の子宝に恵まれていることに対し、杉浦は「ウルトラマンは子だくさんです!」と語って幸せそうに目を細めた。

『ウルトラマンコスモス』でお気に入りのエピソードは?という質問に、市瀬は第47話「空の魔女」を挙げ「原田昌樹監督が、まるで劇場映画のような撮り方をしてくれた。この回だけは、ウルトラマンに出演したという感覚がありません」と、惜しくも2008年に物故した原田監督の演出手腕を改めて称えた。このとき助監督だった岡氏は「撮影時はクリスマスイブで、横浜の公園で市瀬くんがすごくカッコいい“フブキ走り”をやってくれましたね!」と、すかさず市瀬に名シーン再現をリクエスト。市瀬は、当時岡氏と一緒に何回も特訓した「フブキ独特の走り方」を全力で披露し、客席からの大きな拍手を集めた。岡氏は「フブキの走りは手の振り方が独特で、まるで“俺を見ろ! 俺を見ろ!”という感じで走っていた」と懐かしそうにふりかえった。

鈴木のお気に入りは、ヤマワラワ(第9話初登場)が再登場した第36話「妖怪の山」だという。鈴木は「ヤマワラワが可愛くて! アヤノの最初で最後の単独調査回でしたね。専用車『シェパード』も運転したんですけど、車体に初心者マークが貼られていて(笑)。ほんとうに原田監督はアヤノのキャラをすごく打ち出してくださり、楽しく撮影したのを覚えています」と、ここでも鈴木による原田監督の思い出が語られた。岡氏はヤマワラワが大勢のファンたちに支持されていたことを割れんばかりの拍手の音を聞いて確信し「原田監督はヤマワラワが大好きでしたから、天国で監督も喜んでいるでしょう」と言ってほほえんだ。

杉浦は好きなエピソードとして第30話「エクリプス」を挙げ「第28話のときエリガルの命を奪ってしまい、劇中のムサシと同じく、演じる僕自身も悩んでいましたから、そこを乗り越えることができた第30話はとても好きなエピソード。半透明のコスモスに光を与えるという、劇場版第1作『ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT』ともリンクするシーンがあるのもいいですし、アヤノとムサシで一緒に難関を乗り越えて、やっとつかんだ勇気のモード=エクリプスには思い入れがあります」と、放送中盤を迎えてムサシと共に自分自身も大きく飛躍・成長できたと晴れやかな表情で語った。

ヒウラキャップ登場!

トークが盛り上がっている杉浦、市瀬、鈴木の前に、ヒウラキャップの決めゼリフ「チームEYES、出動!」を発しながら嶋大輔が登場。これを聞いた杉浦は「キャップだ!」と叫んで感動に打ち震えていた。

さっそく嶋にもお気に入りエピソードは何?という質問が飛んだ。嶋は「ウルトラマンコスモスはテレビシリーズだけで65話もやってきましたから、1話1話にすごく思い出があります。タカヤス(杉浦)も市瀬も、そんなにお芝居をガンガンやってる時期じゃなかったですから、それぞれのエピソードで、監督や助監督が役者たちと一緒になってキャラクターを作り上げていった。繭菓なんてまさにそうですよ。第1話の台本を読むとアヤノが『ブツブツ』言うと書いてある。これって現場でどんな風に芝居するんだろうと思っていたら、繭菓は『ブツブーツ、ブツブーツ』って言っていたのがとても印象に残っています。なかなかやるなあ、みたいに思ってました(笑)」と、若い俳優たちが監督をはじめスタッフたちと力を合わせ、役を作っていく姿勢に感心したことを明かした。

また嶋は『コスモス』のゲスト出演者についてふりかえり「今から思えば若手から大ベテランまで、すごいゲスト俳優がたくさん出られていました。ベッキー(第25話)とか。高橋一生くんも出ていたね(第21、22話ほか)。ヒウラが一生くん演じるミツヤを背負って走るシーンを撮ったんだけど、テストやリハーサル含めて、何度もおんぶして大変だったのを覚えています。今じゃあんなに有名になっちゃって(笑)」と、現在も数々の映画やテレビドラマで主役を張り活躍している高橋一生がまだ20歳そこそこの時期、『コスモス』に出演していたことを懐かしんでいた。

高橋については市瀬も杉浦も強く印象に残っていると言い、市瀬の「当時から、この人(高橋)はえらい上手いねえ、なんてみんなで話していた」との言葉を受け、杉浦が「ミツヤ(高橋)が上手すぎて、ムサシが彼と一緒に星を見つめるシーンでは、演技のレベルが違ってて恥ずかしい!と思いました(笑)」と苦笑いを浮かべながら思い出を語った。

嶋はまた、印象に残っている出来事として「ムサシがクレバーゴンを抱えて喜んでいるシーン」を挙げ「撮影がすごく押していて、どこのシーンで時間食ってるんだよって思ってスタッフに聞いたら『杉浦さんのスキップ待ちです』って。スキップ待ちは初めての経験だった(笑)」と、第31話「ゴンを救え」の冒頭シーンでの思わぬ杉浦の苦戦ぶりを回想した。杉浦はこれについて「ゴンがめっちゃ重くて、持ち上げながら軽やかにスキップするのがうまく行かず、リハーサルの段階で予定より1時間も押してしまったんです」と打ち明け、客席からのあたたかな拍手を受けていた。

杉浦と市瀬は『コスモス』で嶋からもらった言葉を、20年経った今でも忘れないでいるという。それは「自分が出ていないシーンでも、ちゃんとカメラの後ろから芝居を見なさい」という教えだった。「今でも撮影現場に向かうと、その教えをしっかり守っています」と市瀬が語ると、杉浦も「芝居は相手とのキャッチボールだから、相手の言葉を受け止めて、自分で消化してから返すんだと、俳優として大切なことを嶋さんから教わりました」としみじみ話して、嶋を自身の「師匠」だと称えた。

明るい未来を信じて……!

キャスト陣の思い出話を懐かしそうに聞いていた岡氏は「『コスモス』を作っていた当時は、怪獣を積極的に倒すことのない『異色のウルトラマン』だとよく言われていました。毎回、ほんとうにこれでウルトラマンとして成立するんだろうかという気持ちは常にありました。最初のころは『あの台本はこういう展開なんだけど、本当にこれでいいのだろうか』と言い合って、みんな手探りで作り始めていた印象でした」と、特に立ち上げの段階では怪獣保護・慈愛の心を主軸に置いたドラマ作りについての葛藤があったことを打ち明けた。嶋もまた「テーマ的にすごく難しいものを扱っている作品だと思いました。よくチームEYESのメンバーを集めて『ここはみんなが、どういう気持ちでこのセリフを言えばいいんだろうか』とか、よく話し合ってから撮影に臨んでました」と、スタッフもキャストも『コスモス』ならではのドラマ作りについて真剣に考えながら取り組んでいたと打ち明けた。そして岡氏は「放送が始まって半年くらいして、お母さま方のファンレターを読ませていただいたとき、僕たちが伝えたかったメッセージが、どうやら届いているっぽいぞと感じられました」と、作り手が作品に込めた思いを視聴者がしっかり受け止めてくれたのを実感するようになった経緯を説明した。

強さだけではなく、優しさや勇気が大切だという『コスモス』のヒーロー像について岡氏は「20年たった現在、コスモスの姿勢は世の中的にスタンダードなものになっているんじゃないでしょうか」と、ことさら殺伐さに走らず「優しさ」を大事にする『コスモス』の先見性を強くアピールした。

『コスモス』キャスト、スタッフ、ファンがひとつになって盛り上がったコスモスナイトも、あっという間に最後の挨拶を残すのみとなった。杉浦の「コスモース!」というかけ声に応えて、ウルトラマンコスモス ルナモードがステージにふたたび登場し、ファンの前で得意のポーズを披露した。

市瀬は「現在大変な中、この劇場に足を運んでくださり、みなさんありがとうございます。僕からは一言だけ。『コスモス』のテーマでもある“信じれば夢は叶う”という言葉をお贈りします。明るい未来が来ることを信じて、これからも頑張っていきましょう」と、いまだコロナ禍で世界的に厳しい状況の中にあっても、希望を信じて頑張っていく『コスモス』の精神を忘れないようにしようとファンに呼びかけた。

鈴木は「楽しい時間をありがとうございました。まるで同窓会のようにチームEYESのみんなや『コスモス』を愛してくれているファンの方たちとお会いできて、嬉しかったです! まだまだ通常どおりの世界にはなりませんが、こんな時代だからこそコスモスのように、ひとりひとりが心優しいヒーローになって、希望の光を持ち続けていきましょう。また10年後とか20年後にみなさんとお会いできたらいいなと思います!」と、『コスモス』ファンに向けて最高のメッセージを発信した。

嶋は「こうしてみなさんがずっと応援してくれるからこそ、『コスモス』の20周年を祝うイベントができるんだと思います。改めて『コスモス』を作り上げたプロデューサーをはじめ、スタッフのみなさんに感謝します。繭菓も言っていましたが、10年後、20年後、また同じ顔でみなさんに会えると信じて、今日のところはお別れしたいと思います」と熱っぽく語り、会場に集まったファンたち、そしてオンライン配信を視聴しているファンたちに向け、未来での再会を約束するかのような頼もしい言葉をかけてくれた。

杉浦は「もうコスモスナイト、終わっちゃうんですね……」と寂しそうな表情で声をつまらせながら「コロナ禍の今だからこそ、コスモスを通じてみんなに勇気と希望と慈愛の精神を届けたかったんです。実は、20周年のイベントができるかどうかわからなかったのですが、実現のためにたくさんの人たちが動いてくださり、ここにいるみんなも協力してくれて、無事開催することが叶いました。この20年、みんなに『ウルトラマンコスモス』という作品を忘れてほしくなかったですし、コスモスだから届けられる思いというのもあるから、僕自身もいろんなところで応援してきました。会場に来てくれたみなさん、そしてオンラインで観てくれたみなさんと、今日の時間を一緒に過ごすことができて、よかったです。ほんとうに、ありがとうございました!」と、最後は『コスモス』を愛するファンへの感謝がこみ上げ、涙声になりながらもしっかりと自身の思いを伝えて、『コスモス』らしく誰もが優しい気持ちになれるイベント・コスモスナイトを締めくくった。

なお、今回のイベントは、オンライン上のエンターテインメントスペース「SPWN」で「見逃し配信」を視聴することが可能。配信期間は9月2日12:00から9月20日23:59が予定されている。また、『ウルトラマンコスモス』テレビシリーズ全65話と3作ある劇場版は、円谷プロ公式定額制デジタル・プラットフォーム・サービス「TSUBURAYA IMAGINATION」にて配信中である。

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