「折檻」とはあまり見慣れない漢字ですが、正しく読めるでしょうか。この記事では読み方や意味のほかに、「折檻」という言葉が生まれた故事や、織田信長が家臣に向けて書いたという折檻状などをご紹介します。類語や英語表現なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
「折檻」の意味とは
「折檻」の読み方は「せっかん」です。それではどんな意味があるのでしょうか。
折檻の意味は「厳しく叱ること・体罰を加えて懲らしめること」です。ほかにも「強くいさめること、厳しく諫言(かんげん)すること」という意味もあります。ここでいう「いさめる」や「諫言する」とは「主に目上の人に対して悪い点を指摘し、改めるよう忠告すること」という意味があります。
「折檻」の由来・語源
折檻という言葉は故事成語で、中国の『漢書』にある「朱雲電(しゅうんでん)」が成り立ちの由来だとされています。
時は紀元前一世紀の後半、前漢王朝の第11代皇帝の成帝(せいてい)は、自分の師である張禹(ちょうう)ばかりを重用していました。その状況を危惧した臣下の朱雲(しゅうん)は「主君に媚びへつらう張禹を切り捨ててほしい」と進言します。
この発言に激怒した成帝は朱雲に死罪を命じました。成帝に命じられた護衛が朱雲を連れ出そうとすると、朱雲は「私の命よりこの王朝の未来が心配です」と言いながら、近くにあった檻(手すり)をつかんで激しく抵抗。体格のよかった朱雲がつかんだことで、とうとう檻(手すり)は折れてしまいました。
自分の命を賭して諫言し、王朝の行く末を憂う姿に感銘を受けた臣下たちがとりなしたことで、成帝は怒りを収めました。そして忠告してくれた朱雲に対する感謝の証しとして、檻(手すり)をそのまま保存します。これが、「折檻」の由来です。
上記をみると、「折檻」は「強く諫めること・厳しく諫言すること」が本来の意味だということがわかりますね。
「折檻状」の意味
「折檻状」とは織田信長(おだのぶなが)が佐久間信盛(さくまのぶもり)に送った書状のことです。佐久間信盛は織田信長に長年仕えていた家臣で、信長軍の総司令官ともいえる人物です。
しかし、1572年の三方ヶ原(みかたがはら)の戦いでは、徳川軍の後援という役目を果たすどころか、ほとんど戦わずに撤退したといわれています。
1573年の小谷城の戦いや一乗谷の戦いでは、先陣の任を与えられ、敵である朝倉軍を逃さないように厳命されていました。しかし、朝倉軍が撤退した際、先陣の追撃が織田信長よりも出遅れたことで叱責されてしまいます。
1576年には、織田信長にとって大事な一戦であった石山本願寺攻めにて総大将を任されるも、これといった手柄を上げられませんでした。
上記の度重なる失態により、1580年にとうとう佐久間信盛は追放されてしまいます。そのとき織田信長が佐久間信盛に突きつけたのが19ヶ条にも及ぶ「折檻状」でした。その一部をみてみましょう。
佐久間信盛、信栄は(ふたりは親子)、天王寺城に5年間在城しながら、何も功績をあげていない。
戦いで期待通りに働けないなら、人を使って謀略(※1)し足りないところは信長に報告して意見を求めるべきだ。それさえもせず、5年間何もしないのは怠慢でけしからぬこと。
領地を増やしたにも関わらず、家臣を増やすどころか多くの家臣を解雇した。さらに、空いた土地を自分のものにして、そこからの収入を懐に入れたのは言語道断である。
刀根坂の戦い(※2)でのこと。戦機の見通しが悪いところ、恐縮せず自分の正当性を吹聴したほか、席を蹴って立った。これにより信長の顔を潰した。
追放された佐久間信盛は、最後は高野山に追われ亡くなりました。
※1人を欺くはかりごと
※2一乗谷城の戦いのこと
「折檻」の使い方・例文
折檻の意味を知ったところで、実際にどのように使うのか例文をみていきましょう。
- あの子は親から折檻を受けてもおかしくはない問題を起こした。
- 愛情のない折檻はただの暴力になる。
- 息子が友達に対して危険な行為をしたため、心を鬼にして折檻した。
- 日ごろから遅刻が多い社員に対して、ついに上司が折檻した。
- この事件の原因は、親からの折檻を恐れた子どもが家出したことによるものです。
「折檻」の類語
次に、折檻と似た意味の言葉をみていきましょう。
懲らしめ
「懲らしめ」の意味は、文字通り「懲らしめること」です。「いたずらをして困らせたので、懲らしめを与えた」などと使います。
仕置き/お仕置き
「仕置き/お仕置き」とは、「懲らしめのために罰すること」で特に子供に対して体罰を加えてしかることを指します。
鉄拳制裁
「鉄拳制裁(てっけんせいさい)」とは、「げんこつで殴り懲らしめること」という意味です。「鉄拳制裁を加える」などと使います。
「折檻」の英語表現
折檻を意味する英語は「chastisement」や「punish (by beating)」があります。これらの単語には体罰という意味もあります。
Because he didn’t change his attitude,the director finally chastised him.(彼が自分の態度を改めないので、ついに監督から折檻を受けた)
Chastisement without love is just violence, so you have to be careful.( 愛情のない折檻はただの暴力になるので気をつけなければならない)
He had a problem with his daily behavior,so it was no wonder that his boss punished him.(彼は日ごろの言動に問題があったので、上司が折檻するのも当然のことだ)
Oda Nobunaga, one of Japan's greatest men, sent a 19-word letter of chastisement to his vassal Sakuma Nobumori.(日本の偉人である織田信長は、家臣の佐久間信盛に対して19ヶ条の折檻状を送った)
「折檻」の意味とは「体罰を与えて懲らしめること」
「折檻」は「厳しく叱ること・懲らしめるために体罰を加えること」や「強く諫めること・厳しく諫言すること」という意味の言葉です。
「折檻」の由来は中国の故事からきており、自分の命をかけて皇帝を諫めた臣下がつかんだ檻(手すり)が折れたことが成り立ちだとされています。どのようにできたかを知れば、言葉への理解も高まりますね。