「折に触れて(おりにふれて)」という表現はビジネスでの会話や挨拶などでしばしば使われることがある慣用句のひとつです。古くから使われている表現で一般的に浸透している言い回しですが、辞書でどう説明されているのか、正確な意味を知らない人は多いでしょう。

この記事では、「折に触れて」の意味や使い方を解説。類語や英語表現なども紹介します。

  • 「折に触れて」とは

    「折に触れて」の意味や語源、使い方などを紹介します

折に触れて(おりにふれて)の意味

「折に触れて(おりにふれて)」とは、「機会が訪れるたびに」「ことあるごとに」という意味がある言葉です。敬語表現はとくにありません

「折」という漢字には「機会」という意味があり、「折に触れて」は「機会がやってくるたびに」という意味で使われるようになりました。

季節や時期が訪れるたびに行われることに対して使われる

「折に触れて」の「折」が示す機会とは、季節や時節を指しています。「季節や時節に触れる」から意味がふくらんで「機会があるごとに」という意味に変化していきました。

「○○の機会が訪れるたびに」「○○の機会があるたびに」など、何度も訪れることに対して、「折に触れて」は使われます。一度しかないことに対しては使われません。

古くから使われている表現

「折に触れて」は日本で古くから使われている、なじみのある表現です。少なくとも14世紀頃の『徒然草』という書物では「折に触れて」という表現が使われていました。

語源には諸説あり、有力な説のひとつに折り紙が語源となったという説があります。折り紙の折り目を「区切られた線」と表して、いつからか「区切られた時」と表現するようになりました。「区切られた時に触れ」から「いい時期を見計らって」という意味に変化したと理解されています。

  • 「折に触れて」とは

    「折に触れて」は「機会が訪れるたびに」という意味で使われる言葉です

「折に触れて」と「折を見て」との違い

「折を見て」には「適切な機会を見付けて」「いい時期を見計らって」などの意味があります。「自分からいい時期を見付けた上で」というニュアンスで用いられる表現です。

「折に触れて」の場合、「いい時期がやってきた時に」というニュアンスで用いられます。

「折を見て」は自発的な行動で時期を見付けるのに対して、「折に触れて」は時期が向こうからやってくるのを待つという、受け身な姿勢である点が対照的です。

「折に触れて」と「時に触れて」との違い

「折に触れて」とほとんど同じ意味で使われる表現に、「時に触れて」があります。「時に触れて」の「時」は「いい時期」や「いいタイミング」を意味しており、「機会」という意味がある「折」と同じような意味です。

そのため「時に触れて」と「折に触れて」が使われる状況は似ています。

「折に触れて」の使い方と例文

「折に触れて」は会話や挨拶、ビジネスメールなど、さまざまなシーンで使われる言葉です。そこで、「折に触れて」の具体的な使用例を見ていきましょう。

会話や挨拶での使い方

「折に触れて」はいつもお世話になっている相手への挨拶や会話でよく使われます。前後に敬語表現を組み合わせて使う点を覚えておきましょう。

・先日はありがとうございました。また折に触れてこちらからご挨拶にお伺いします。
・まだまだ不慣れですので、折に触れてご指導いただきますようお願いします。
・折に触れて連絡させていただきます。

人の行動や状況を指す表現としての使い方

「折に触れて」は下記のように、人が何かを行うタイミングなど、その人の行動や心情、状況を表す表現として使われることがあります。ビジネス以外でも使える表現ですので、うまく活用してみましょう。

・彼女は折に触れて絵手紙を出すのが趣味だ。
・部長は折に触れて部下一人ひとりに話しかけて、適切なアドバイスをしている。
・折に触れて、祖父のことを思い出す。
・先生はとても筆まめで、折に触れてお手紙をくださる。

ビジネスメールでの使い方

「折に触れて」は昔から使われている日本語の表現であり、ビジネスメールでも問題なく使えます。

・昨年は何かとお世話になりました。本年も折に触れて連絡させていただきます。
・折に触れてサービス向上のため努力してまいります。
・来月から担当者が○○に変わりますが、折に触れてご指導いただけましたら幸いです。
・担当者にミスがあった場合には折に触れて注意してまいります。

  • 「折に触れて」の使い方

    「折に触れて」は挨拶やビジネスメールなどで使える表現です

「折に触れて」の類語表現

「折に触れて」は「時に触れて」以外にも、似た意味で使われる表現がいくつかあります。どのような類語があるのか見ていきましょう。

ことあるごとに

「ことあるごとに」の意味は「その都度」「毎回」などの意味がある言葉です。「機会が訪れるたびに」という意味がある「折に触れて」と比べるとやや頻度が高いものの、機会が訪れるたびにという意味では共通しています。

・部長はことあるごとに部下一人ひとりに話しかけて、適切なアドバイスをしている。
・部長は折に触れて部下一人ひとりに話しかけて、適切なアドバイスをしている。

機会あるたび

「機会あるたび」は「その都度行う様子」という意味がある言葉です。自分から都合を付けるのではなく時期がやってきたら、というニュアンスで使われますので、「折に触れて」と似た状況で使えます。

・彼女は機会あるたび絵手紙を出すのが趣味だ。
・彼女は折に触れて絵手紙を出すのが趣味だ。

何かにつけて

「何かにつけて」には「その都度行う様子」という意味があります。ただし、「頻繁に繰り返す」という意味も含まれていることから、「折に触れて」に比べると、やや頻度が高い印象がある言葉です。

・何かにつけて、祖母のことを思い出す。
・折に触れて、祖母のことを思い出す。

  • 「折に触れて」の類語表現

    「折に触れて」の類語表現は「機会あるたび」などいくつかあります

「折に触れて」の英語表現

「折に触れて」の英語表現を例文とともに紹介します。

occasionally

・She writes a letter occasionally.(彼女は折に触れて手紙を書いている)
・I've been in touch with my mentor occasionally.(私は折に触れて恩師に連絡している)

「occasionally」には「時折」という意味があります。「折に触れて」の英語表現として使われることがありますので覚えておきましょう。

occasional

・She doesn't travel much apart from occasional business trips.(彼女は折に触れて出張することはあるが、旅行はあまりしない)

「occasional」も「時折」を表す表現で、「折に触れて」の英語表現に使われます。

from time to time

・We will strive to improve our services from time to time.(折に触れてサービス向上のため努力してまいります)

「from time to time」の意味は「ときどき」です。「折に触れて」の英語表現のひとつとして押さえておきましょう。

  • 「折に触れて」の英語表現

    「折に触れて」の英語表現にはいくつかの言い回しがあります

「折に触れて」は「機会があるたびに」を表す表現

「折に触れて」とは、「機会があるたびに」と似たような意味がある慣用句のひとつです。語源ははっきりとはわかってはいませんが、徒然草など昔の書物でも使われていました。

現代でもなじみのある表現で、「折に触れて連絡させていただきます」などビジネスでもよく使われます。できるだけスムーズに使えるよう、この記事で紹介した例文を参考に正しい意味や使い方を覚えておきましょう。