■一般参加の「T-TRAKジオラマコンテスト」省スペースにさまざまな情景

「鉄道模型コンテスト2021 東京大会」では、一般参加部門として「T-TRAKジオラマコンテスト」「ミニジオラマサーカス」の作品展示も行われた。

「T-TRAKジオラマコンテスト」では、奥行き355mm以内×幅308mm(または618mm)のジオラマボードに情景を作り、出展する。18歳以上なら誰でも参加可能で、筆者が取材したところ、過去に全国高等学校鉄道模型コンテストに参加し、高校卒業後に「T-TRAK」へ移行した人もいた。

  • 一般向けの「T-TRAKジオラマコンテスト」。明かりが灯る町並みや懐かしの渋谷など、さまざまな作品が見られた

  • (写真左から)肥薩線イメージ、北海道の炭鉱、工業地帯。思い描く情景は人それぞれ。他の作品も多種多様

「T-TRAKジオラマコンテスト」の結果発表は2日目の午後、全国高等学校鉄道模型コンテストの後に発表され、ハナブサリョウさん制作「セピア色の記憶」が最優秀賞に選ばれた。ハナブサさんによると、どこかで見たことがあるかもしれない風景をイメージしたとのことで、「T-TRAK」既定の複線の下で小型の貨物編成が、線路沿いではバスが周回。奥の駅舎と醤油蔵が懐かしい雰囲気を醸し出し、建物・街灯ともに照明も組み込まれている。昭和時代が思い浮かびつつも生き生きとした情景に感じられた。

  • 貨物列車とバスが周回するギミック、高さの変化、懐かしの雰囲気が見事に調和していた

■「ミニジオラマサーカス」はジオラマ初挑戦の場にも

「ミニジオラマサーカス」は、KATOより発売中の「ミニジオラマベース」を利用した、てのひらサイズの小さなジオラマが集う部門。それぞれのレールをつなげて小型電車がミニジオラマ上を走行した。

  • 登録店ごとにA~Fのグループに分けて展示。1周つながったミニジオラマ上を小型車両が走った

小学生部門・中学生部門・大人部門の3部門に分かれているが、出展作品は「ミニジオラマサーカス」登録店を経由して申し込む形となり、会場では登録店ごとにグループを分け、テーブルごとに展示された。

  • リアルな情景からファンタジックな発想まで、「T-TRAK」より小さいスペースの自由な世界観が面白く、創作意欲も湧いてくる

出展者の中には、「ジオラマくん」(ミニジオラマキット)がきっかけで初めてジオラマ制作に挑戦した小学生たちもいた。話を聞いたところ、自らやってみたいと家族に相談した子や、工作好きが高じて親にジオラマキットをすすめられた子など、きっかけはさまざま。見本を参考に初めてのジオラマ制作を見事に成し遂げ、会場での作品出展に至った。

また、見本に従って作る途中でパーツの置き場所を間違えたという話も聞いたが、それはそれで、他の作品にはないアレンジとして前向きにとらえることができるのではないかと思う。参加したこどもたちの今後にも期待したい。

  • 小学生作品の一例。左の2点は「ジオラマくん」完成見本をベースにコンパクトにまとまり、右の作品は波をトンネルに見立てた発想が楽しい

「ミニジオラマサーカス」出展作品の投票は「鉄コンアプリ」によって行われ、投票者の選ぶ「ベストワン賞」と「いいね!賞」が部門ごとに選出された。受賞作品は「鉄コンアプリ」に公開されているので、そちらも合わせて確認していただきたい。

■KATO発売予定品試作品、ワンハンドルコントローラ-も開発中

最後に、KATOのブースに展示された内容を簡単に紹介。まずは発売予定品の試作品展示。発売予定品のサンプルが並ぶ中で、まず注目は2022年1月発売予定のN700S新幹線「のぞみ」。既存のN700Aとの外観の違いが鉄道模型にも反映されており、比べてみると意外と形状が異なっていることがわかる。

12月に発売予定の智頭急行HOT7000系では、客室窓のハーフミラーをNゲージでもしっかり再現。通常時は窓が鏡のようになっているが、室内灯を組み込むことで、車内が透けて見えるようになる。HOT7000系が振り子式車両である点も興味深い。KATOはこれまでにも振り子式車両の振り子機能を再現してきた実績があり、「スーパーはくと」もぜひ期待したい。

  • KATO発売予定品の試作品。HOT7000系「スーパーはくと」のハーフミラーやN700Sの「デュアルスプリームウィング」も形状を的確に落とし込んでいる

  • E257系2000番台・2500番台「踊り子」

  • 701系0番台秋田色。2両編成と3両編成で発売予定

  • マイトラム、BLUE・REDの2色

現在、開発が進められている企画として、スロットレスモーターも公開された。コギングと呼ばれるモーター回転時のカクつきを抑えることで、いままで以上の低速走行が可能となり、あわせてモーターの音もより静かになっている。外形寸法が既存のモーターにそろえられているので、スロットレスモーターの製品化後、従来車両のモーターと交換することも可能。ただし、交換非対応の製品もあるとのこと。続報を待ちたい。

もうひとつの企画はワンハンドルコントローラー(仮称)。最近の通勤電車の運転台をNゲージサイズで再現し、よりリアルな運転が可能になる。実車さながら、鍵を差すことでコントローラーの電源が入り、ボタンを押しながらハンドルを手前に引くことで加速し、奥に倒すことで減速するしくみだ。サウンドユニットとも連動するので、組み合わせれば実車の雰囲気をNゲージサイズで存分に体感できるだろう。

  • 開発中のスロットレスモーター

  • ワンハンドルコントローラー(写真左)の試作品。製品化の際はより本格的なデザインに

  • サウンドユニットとも連動。運転がますます楽しくなる

なお、九州大会で解禁された内容として、「キハ58系 JR九州一般色タイプ」の発売が決定している。白い車体に青い帯の入った、JR九州おなじみのカラーリングがホビーセンターカトーから11月に発売予定とのこと。JR九州のキハ58系の特徴でもあるスカートも再現される。

  • 九州大会の開催を記念し、「キハ58系 JR九州一般色タイプ」の発売が決定

その他、大レイアウトでの展示運転、STEAMで深まるシリーズ、埼玉県鶴ヶ島市のふるさと納税ではじめる鉄道模型に関するパネル展示などがKATOブースにて行われた。

  • STEAMで深まるシリーズを通じて、鉄道模型・ジオラマに親しみを

  • 会場では各キットの制作実演も

  • ナローゲージの「Small England(prince)(princess)」試作品

  • KATO大レイアウトでの展示走行。長編成ものびのび走る

繰返しの案内になるが、今回の出展作品はすべて鉄道模型コンテスト公式アプリ「鉄コンアプリ」に公開されている。アプリをダウンロードしていない場合はウェブブラウザ版でも閲覧可能。小学生から高校生、大人まで、あらゆる世代が精力的に取り組み、作り上げたジオラマは非常に見応えがあるので、ぜひ確認してほしい。

来年の開催予定日は鉄道模型コンテスト公式サイトですでに発表されており、九州大会は8月6・7日に福岡・天神のエルガーラホール、東京大会(全国大会)は8月中の3日間にわたり東京・新宿の新宿住友ビル三角広場で開催予定とのこと。もし今回展示された作品に触発されたなら、次回はぜひ、ジオラマ作品を作って出展してみてはいかがだろうか。