依願退職は、退職届を出し、企業も承諾した上で進められる退職方法です。一般的な退職方法に分類され、多くの人は依願退職で退職しているといえるでしょう。今回は、依願退職についてわかりやすく解説し、実際に退職するときは、どのように申請したらいいのか、また退職金や失業保険はどうなるのかをご紹介します。いざ「退職をするぞ! 」と決めたときでも焦らずに手続きを進められるように、仕組みや流れを理解しておきましょう。

  • 依願退職とはどういう意味?

    依願退職について解説します

依願退職とはどういう意味?

「依願退職」は、会社を去る方法の一つです。言葉から読み解くと、依願は「強制でなく、本人からの願いによること」を指すため、強制でない退職方法であるということがわかります。

実際にはどのような退職方法なのかを解説していきます。

退職願を出し、会社が承諾することで成立する

依願退職とは、自らが会社に退職を願い出てそれを会社が承諾することをいいます。転職や結婚、病気や介護など、個人的な理由により会社を辞めることであり、いわゆる「一般的な」退職の意味を持ちます。依願退職に関する具体的な法律はなく、会社へ退職の意向を伝えるとともに「退職願」を提出し、会社の承認が下りた後は会社の就業規則にそって手続きを進めます。

依願退職は自己都合退職と同じ?

自己都合退職とは、以下の退職方法を表します。

  1. 従業員が退職を申し入れ、会社側の承諾を得て行う退職

  2. 従業員が退職を申し入れ、会社側の承諾を得ないまま行う退職

依願退職の場合は、上記の2が当てはまり、自己都合退職の中でも会社側の承諾を得てから退職手続きを進める方法です。自己都合で退職する方法の中でも、会社と本人の関係が比較的円満な退職方法です。

  •  依願退職とはどういう意味?

    依願退職は会社をやめる方法のひとつ

辞職や会社都合退職との違い

依願退職は自己都合退職の一つですが、他にも仕事を辞める際の言葉があります。 退職方法は「依願退職」や「自己都合退職」以外に、「辞職」や「会社都合退職」というものもあります。

それぞれの言葉にどのような意味があり、依願退職とはどのような違いがあるのかについて気になる人もいるのではないでしょうか。「辞職」は「今まで就いていた職を、自らの意思で辞めること」をいいます。そのため、依願退職や自己都合退職と近い意味合いがあるといえるでしょう。

また、「会社都合退職」は言葉どおり、「会社都合によって退職をすること」をいいます。従業員側の希望ではなく、会社の業績悪化や倒産、リストラなどによって「会社を辞めさせられてしまう」意味を含みます。

そのため、「辞職」や「会社都合退職」は、依願退職とは全く異なる退職方法となります。

  • 辞職や会社都合退職との違い

    依願退職と会社都合退職は全く違います

依願退職の際の流れは?

個人的な理由によって会社を辞める依願退職ですが、実際依願退職をするにはどのような手順で進めたらいいかご存知でしょうか。「会社を辞めよう! 」と決心したときでは、新生活の準備と退職準備であたふたしてしまう可能性もあるため、できるだけ早めに知っておいた方がいいでしょう。

次に、依願退職をする際の手順について、ご紹介していきます。

退職日の決定

まずは退職する日を決めましょう。会社と円満な関係でいながら手続きを進めるなら、1~2ヵ月以上前には一度会社側へ退職の意を伝えておくとスムーズです。また、会社によって異なりますが、最低でも1ヵ月前には会社へ伝える規則となっていることも多くあります。

1ヵ月程度あれば、会社側も比較的余裕をもって退職手続きを進められるため、より円満な退職を望むのであれば早めに伝えるようにしましょう。

退職願を提出

退職日を決めたら、「退職願」を会社へ提出します。退職願とは、「会社に退職を願い出るための書類」です。会社側が受け入れれば退職の手続きが開始されますが事前に退職の意思を会社に話さずに退職願を提出してしまうと、すぐには受け入れてもらえないこともあります。

しかし、民法上、会社の承認がなくとも退職の申し出をした日から起算して14日経てば退職ができるため、あくまでも退職願は「会社との意思確認」程度のものになります。会社から退職を却下されても退職する意思が変わらないのであれば、退職願ではなく「退職届」を提出すれば退職を一方的に通知することができます。

退職願の内容を確認してもらい、引き継ぎをする

退職願を提出し、会社での承認が下りたら退職日にむけての準備を進めましょう。退職が決定してから実際に退職するまでの期間には、会社から提出を依頼された書類に目を通すことや、サインをするなどの対応が必要な場合があります。

加えて、退職まで受け持っていた業務を他の人へ引き継ぎしなければいけなくなることもあるでしょう。引き継ぎの内容にもよりますが、準備をしっかりしなければ引き継ぎできないものや、大量の時間を必要とするケースもありますので、よく確認するようにしましょう。

必要書類を作成し、返却物をリストアップする

退職をする前は新生活の準備で忙しく、退職準備がおろそかになる場合があります。会社を円満に退社するためにも、退職までにやるべきことはリストアップして対応するといいでしょう。

さらに会社によってはPCや携帯電話、ユニフォームなどを返却しなければなりません。PCや携帯電話であればデータの完全消去、ユニフォームであればクリーニングをしなければならないケースもあります。「いつまでに、何をしなければいけないのか」を可視化しておくと、スムーズに退職できる助けとなるでしょう。

  • 依願退職の際の流れは?

    依願退職の流れを把握しましょう

退職金や失業保険はどうなる?

退職金や失業保険は、一般的に自己都合退職扱いの場合となります。

会社都合退職の場合と、自己都合退職の場合では、扱いが大きく変わることもあるため、よく確認しておくようにしましょう。

退職金は会社都合退職に比べて低くなることがある

退職金は、会社都合に比べて低くなることがほとんどです。会社によって制度は異なりますが、一般的に自己都合の退職では会社都合に比べて少なかったり、退職金が出なかったりすることもあります。

「思っていたよりも退職金や失業保険がかなり低くて生活ができない! 」ということにならないように、会社の退職金の制度がどのようになっているのか、一度規定を確認してみましょう。

失業保険は支給開始まで2ヶ月ほどかかることも

失業保険は会社都合退職と自己都合の依願退職では大きく異なります。会社都合退職は最短1週間程度で支払われることがありますが、依願退職の場合には最低でも2ヶ月ほど給付期限が掛かります。

また、支給額は会社都合であると最大約272万円であるのに対し、依願退職の場合は最大約124万円と大きく差が出ています。あくまでも依願退職は自己都合であるため、上記のように支給までの日数や最大支給額に差が出てしまうのです。

  • 退職金や失業保険はどうなる?

    依願退職は会社都合よりも退職金や失業保険金の受け取りが低くなります

依願退職についてしっかり理解すれば、退職時の対応は簡単

今回は、依願退職について解説しました。依願退職とは転職や結婚を機に退職するなど、一般的な退職方法です。似ている言葉では自己都合退職というものがありますが、依願退職は自己都合退職の中の一つで、従業員が企業に願い出て、承認されることで退職が決定する退職方法となります。

依願退職よりも会社都合で退職する方が、失業給付金の支給が早まったり、給付期間が長くなったりするなど、退職後に得をする面もあります。会社を辞めてから生活が苦しくなったり、お金が足りなくなったりするなどで困らないように、依願退職の際の会社の規定や生活費の確保には注意しましょう。


参考文献
厚生労働省「(『知って役立つ労働法 働くときに必要な基礎知識』p.44-p.47)」より抜粋
厚生労働省「「給付制限期間」が2か月に短縮されます