「会社から解雇を命じられたけれど納得いかない」「理不尽な解雇を促されている」など思い当たる節があったら、まずは不当解雇の可能性を疑いましょう。

本記事では正当な解雇と不当解雇の違いや、不当解雇後の動き方などをまとめてみました。

  • 不当解雇とは法律の規定を無視した解雇のこと

    不当解雇の定義を覚えておきましょう

不当解雇とは法律の規定を無視した解雇のこと

不当解雇とは、労働基準法や労働契約法の規則を無視して、会社側の一方的な都合により解雇することを指します。 本来、解雇とは正当な理由がなければできないもの。解雇をする場合にはさまざまな事前の予告や相当の理由が必要になります。 しかし、これに該当しない理不尽な解雇の場合は不当解雇の扱いとなるので覚えておきましょう。

不当解雇の例

会社都合の理不尽な解雇以外にもさまざまな不当解雇の種類が存在します。

厚生労働省が明記している不当解雇の例としては下記のものが該当します。当てはまる例がある場合は不当解雇の可能性を疑ってみてください。

<労働基準法>

・業務上災害のため療養中の期間とその後の30日間の解雇

・産前産後の休業期間とその後の30日間の解雇

・労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇

<労働組合法>

・労働組合の組合員であることなどを理由とする解雇

<男女雇用機会均等法>

・労働者の性別を理由とする解雇

・女性労働者が結婚・妊娠・出産・産前産後の休業をしたこと などを理由とする解雇

厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」から抜粋

正当な解雇と不当解雇の違い

不当解雇は正当な理由のない会社都合の解雇を指しますが、一方正当な解雇にはいくつか条件が存在します。 まず解雇の定義は「企業側からの申し出によって一方的に労働契約が終了すること」です。これは正当な解雇にも不当な解雇にも該当する定義になります。

しかし、労働契約法第16条には「使用者がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできません」と記載があります。そのため、正当な理由がない場合は解雇することはできません。

さらに、正当な解雇の場合は2つの条件を満たす必要があります。

1つ目の条件は就業規則に解雇事由を記載することです。事前に就業規則に解雇に繋がる事例を記載することで、それに違反した場合に正当な解雇理由として提示することが可能となります。

2つ目の条件は、解雇する場合最低30日前に解雇の予告をしなければいけないことです。もしも予告を行わずに解雇する場合は30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければいけません。

これは労働基準法第20条で決まっているため、会社側は必ず把握しておきましょう。例えば解雇日の10日前に予告した場合は残りの20日分の平均賃金を支払う必要があります。 しかし試用期間中や日雇い、2ヶ月以内の期間を定めて雇用される場合には労働基準法第20条の「30日分以上の平均賃金の支払い」は適用されない可能性があるため注意が必要です。

実際の事例をご紹介

「会社から解雇を命じられたけどこれは正当な解雇なのかわからない」「実際に不当解雇された人の状況を知りたい」という方に向けて、ここでは実際の不当解雇のエピソードをいくつかご紹介します。 あくまでも個人のエピソードのため参考程度にご覧ください。自分の状況が不当解雇かどうかハッキリさせたい方は、労働問題にくわしい弁護士に相談してみるのがベストです。

従業員の能力不足による不当解雇のエピソード

3年目の会社員のAさんは同僚よりもノルマの達成率が低いタイプでした。しかし月によってはノルマを達成できる場合もあり、Aさんは雇用関係を維持できないほど能力不足ではありません。ある日ノルマが達成できなかったタイミングで上司から「お前はクビ(解雇)だ!」と言われてしまったAさん。働き続けたいと考えていたAさんでしたが、会社側から不当な解雇通知を受けてしまいました。

妊娠を理由とした不当解雇のエピソード

女性の会社員Bさんは会社に妊娠したことを伝えると会社側から「妊娠したなら退職したほうがいい」と退職勧奨をされてしまいました。仕事を続けたかったBさんは、何度か話し合いの場を設けました。しかし会社側はBさんの意見を受け入れようとはせず、最終的には不当な解雇通知を出されてしまいました。

  • 不当解雇とは法律の規定を無視した解雇のこと

    普通解雇の場合は労働者に問題がある場合があります

正当な3つの解雇

本来、会社側が行うべき正当な解雇には3つの種類があります。 自分の状況がこれらに当てはまる場合は、正当な解雇として解雇通知を受け入れなければいけません。 しかし解雇される時の状況は人によって違うため、ここに正当な解雇と記載していても弁護士がくわしく状況を聞くと不当解雇だったという場合もあります。 まずは解雇通知を受け入れる前に弁護士などに相談してみましょう。

普通解雇とは労働者に問題がある場合の解雇

普通解雇とは懲戒解雇と整理解雇以外の解雇の総称になります。

例えば、解雇する従業員の勤務成績が著しく悪く、雇用関係を維持できないほど能力不足と判断した場合や、健康上の理由で長期間現場に復帰することが望めない場合(妊娠や出産を除く)は普通解雇の対象となります。また、協調性の無さから業務に支障を与え、改善を見込めない場合にも普通解雇に当てはまります。

しかし、業務上の病気や怪我により長期間現場に復帰が見込めない場合には労働基準法19条の「休業した際は休業期間中とその後の30日間は解雇することができない」という規定があり、また、業務上意外の病気や怪我で業務に復帰できない場合でも、会社よっては休職制度もあるため、すぐに普通解雇という流れにはなりません。

勤務態度や勤務成績の不良などは普通解雇の原因として多いものになりますが、実はこれだけでは直ちに解雇と判断することはできません。勤務態度や勤務成績の不良について注意や指導、教育などをしたうえで改善の見込みがなく、平均的な水準には及ばないというケースでないと普通解雇は難しいようです。

懲戒解雇とは企業の違反行為に対する解雇

懲戒解雇は会社の就業規則や労働契約書に記載している悪質な行為や非行を行ったときに適用する最も重い処分です。

整理解雇とは従業員数削減のための解雇

整理解雇とは会社の経営悪化や、新形態による人員整理を行う場合に適用される解雇になります。

整理解雇の場合は労働者への説明を行い慎重に進めて行く必要があります。この時に会社側はあくまでも経営上の理由で、解雇になった従業員には責める要因はないということを念頭に置きましょう。

整理解雇の判断材料となる次の4つの要件(要素)をご紹介します。


1. 人員削減の必要性
不況、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていること


2. 解雇回避の努力
配置転換や希望退職者の募集などによって解雇回避の努力をした後の整理解雇であること


3. 人選の合理性
対象者を決める基準が客観的かつ合理的で運用も公正であること


4. 解雇手続の妥当性
労働組合または労働者に対して解雇の必要性とその時期や規模、方法について納得を得るために説明を行うこと

  • 正当な3つの解雇

    正当な解雇は3種類存在します

不当解雇にあった場合の対処法

では実際に不当解雇の通告や退職勧奨を受けてしまった場合、どのような対応を取るのが望ましいのでしょうか。

まず、不当解雇かもしれないと思った場合には、すぐに解雇に了承せずに弁護士や労働組合に相談をしてみましょう。 退職届を提出したり、解雇から長期間空いたりしてしまうと不利に働く可能性があるため、自分の状況が分からない場合はすぐに専門的な知識がある人に頼ってみることがおすすめです。

弁護士に相談して撤回してもらう

「解雇に納得していない」「解雇を撤回してもらってもう1度会社で働きたい」という方は弁護士に相談して解雇の撤回を望むケースも多いようです。

その時に注意したいのが、「退職を認めるような言動をしないようにする」ということです。退職金や有給買い取りの申請など退職に近づくことをしてしまうと、解雇を撤回したいという自分の要望に矛盾が働いてしまいます。

会社側からの退職に対する手続きの依頼などは弁護士に相談してから対応するようにしましょう。

弁護士に相談して不当解雇以後の賃金を請求する

不当解雇に該当すると判断した場合は必ず確認してほしいのが、解雇後以降の会社からの解雇予告手当の提示や支払いです。 通常予告なしの解雇の場合は、30日分以上の平均賃金の支払いが労働基準法第20条で取り決められていますが、その解雇予告手当が正常に支払われない場合などには弁護士に相談してみましょう。

  • 不当解雇にあった場合の対処法

    まずは相談してみることが大切

不当解雇に困ったらまずは行政、弁護士や労働組合に相談しよう

不当解雇かもと思ったら、早い段階で行政、弁護士や労働組合などに自分の現状を相談してみましょう。弁護士などに相談する前に自分で対応してしまうと、場合によっては不当解雇を了承したと取られてしまう場合もあります。手遅れになる前に専門家の力を頼ってみてください。