ビジネスシーンにおいて「重々承知」という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。 「重々承知」は「十分に理解している」という意味があり、目上の方にも目下の相手にも使うことができます。しかし使い方を間違えると、失礼な表現になってしまうこともあるので注意が必要です。

この記事では、「重々承知」の本来の意味や正しい使い方について、例文も交えて紹介します。

  • 「重々承知」の基本的な意味は?

    「重々承知」の意味や正しい使い方を紹介します

「重々承知」の意味とは?

「重々承知」の基本的な意味や言い換え表現、英語表現についてまとめました。「重々承知」を使うときの参考にしてみてください。

十分に理解しているという意味

「重々承知」は「じゅうじゅうしょうち」と読み、「十分に理解している」ことを意味します。「重々」は「十分」「よく」を、「承知」は「事情等を知っている」「理解している」をそれぞれ意味しており、2つの意味がそのまま組み合わさった言葉です。

「重々承知」の「重」を省略せずに「重重承知」と書くこともあり、どちらも表記方法としては問題ありません。

  • 「重々承知」の基本的な意味は?

    さまざまな表現方法を知っておきましょう

「重々承知」のビジネスメールでの使い方・例文

「重々承知」はビジネスメールでよく使われる言葉です。具体的にどのような場面で使われるのか紹介します。

お願いをするとき

「重々承知」はお願いをするとき、特に無理なお願いをするときに使われます。「迷惑なのはわかっているけれどお願いしたい」というときに「ご迷惑なお願いであることは重々承知の上ですが」と前置きすると、控えめにお願いする表現になり丁寧な印象を与えることができます。

そのため、無理なお願いだけでは難しいことも、「重々承知」を使えば「無理なことはわかっているのだけどそれでもお願いしたい」という思いが伝わりやすくなり、お願いを聞いてもらえる確率が上がるかもしれません。

謝罪をするとき

こちらに非があってお詫びしなければならないとき、「重々承知」を使って反省している気持ちを伝えることができます。使い方としては「ご迷惑をおかけしたことは重々承知しております」がよく聞かれる言い回しです。

もちろん言葉だけの反省にならないよう、そのあとの対応や態度にもきちんと気を配る必要があることは覚えておきましょう。

重要な依頼に対する確認

何かの依頼について確認されたとき、単に「承知しています」と伝えるだけよりは、「重々」を加えたほうがより丁寧な印象になります。「〇〇についてきちんと把握していますか?」というような質問がきたとき、「重々承知しております」と答えるといいでしょう。

依頼を断るとき

無理なお願いをするときと同様、断りにくい依頼を断るときに「重々承知」を使うと、角を立てずに依頼を断りやすくなります。ビジネスシーンにおいて何かを断る際は「お気持ちは重々承知しておりますが、今回はお断りさせてください」といった使い方ができます。

  • 「重々承知」の基本的な意味は?

    「重々承知」のビジネスシーンでの使い方

「重々承知」は目上の人に使える敬語表現?

「重々承知」は尊敬語、丁寧語、謙譲語のいずれにも該当しないため敬語ではありません。しかし、上司など目上の人に対しても使うことのできる言葉です。ただし、使い方を間違えると失礼になることがあります。「重々承知」の間違った使い方と、なぜ間違っているのかを解説します。

「重々承知しておりましたが、このような結果になるとは思いませんでした」

「重々承知」していたはずなのに「このような結果になるとは思わなかった」では矛盾してしまいます。わかっていたのにできなかった、やらなかったという言い訳に聞こえてしまうので注意しましょう。「重々承知しておりましたが、こちらの力不足でした」であれば問題ありません。

「お客様の言い分は重々承知しておりますが」

「お客様の言い分は重々承知しておりますが」はうっかり使ってしまいがちな言い回しですが、「お客様の言い分は十分わかりました」とそれ以上の理解を妨げているように聞こえます。こちらに非があるときに使うと失礼にあたるので注意しましょう。

「我々の現状を重々承知いただきたく存じます」

「重々承知」という言葉は主にこちら側に非がある場合に使います。この例文だと「自分たちに非があるけれど事情をわかって許してほしい」というような意味になり、非があるのにもかかわらず厚かましいお願いにみえてしまうでしょう。

「御社にとって容易であることは重々承知の上ですが」

前述したように「重々承知」は無理なお願いをするときに効果を発揮します。相手にとって容易であるなら無理なお願いではないはずですし、相手に対して「簡単ですよね」と決めつけているような失礼な表現です。「重々承知」を使用する際は注意しましょう。

  • 「重々承知」の間違った使い方に注意! 失礼にあたることも

    「重々承知」は失礼な印象を与えてしまうこともあるので使い方を注意しましょう

「重々承知」によく似た「◯◯承知」の使い分け

「重々承知」には似ている表現がいくつかあります。それぞれ意味もよく似ているので、使い分け方を知っておきましょう。

先刻承知(せんこくしょうち)

「先刻」は「すでに」「とうに」という意味があり、「先刻承知」は「ずいぶん前から知っている」という意味になります。とっくの昔に知っている、と自慢を含むニュアンスが強いため、目上の人に対して使わないように気をつけましょう。

委細承知(いさいしょうち)

「委細」には「くわしい事情、詳細」の意味があり、「委細承知」の場合は「細かいところまですべて」「万事」の意味でくわしい事情をすべて理解していることを言います。「重々承知」よりも強いニュアンスがあるため、ビジネスシーンで使ってしまうと少々重たい印象になるかもしれません。

合点承知(がってんしょうち)

「合点(がてん)」はそのままでも「承知すること」「理解すること」の意味があります。「ひとり合点」という言葉もあるように、自分1人が理解・納得しているというニュアンスが強く、謙譲表現でもありません。どちらかといえば立場の近い相手に使われることが多いので、上司など目上の人には使わないほうがいいでしょう。

幅広く使える「重々」

「重々」は「重ね重ね」が省略されたもので、「幾重にもわたり」「十分すぎる程に」という意味があります。単体でも「重々理解している」「重々の不始末をお許しください」というように幅広く使うことができるので、活用してみましょう。

  • 「重々承知」によく似た「◯◯承知」の使い分け

    「承知」にもいろいろな意味があります

「重々承知」の類語・言い換え表現

「重々承知」を別の言い方にしたいときは「百も承知」が使えます。意味に大きな違いはありませんが、「重々承知」のほうが謙虚な印象を与えることができるでしょう。シーンや相手に応じて上手く使い分けましょう。

「重々承知」の英語表現

「重々承知」は英語では「I am very aware about it」と表現します。「aware」は「気づいて」「認識のある」「理解のある」を意味する英単語で、直訳すると「私はそれについてよく理解した」という文になります。

「重々承知」は使う場面と相手に注意して使おう

「重々承知」の意味や正しい使い方についてまとめました。「重々承知」はこちらに非があるときに使われる傾向がありますが、敬語表現ではないので基本的には立場に関係なく使うことができます。しかし使い方によっては失礼にあたることもあるので、意味をしっかりと理解して使い分けできるようにしておきましょう。