――岡山天音さんや神尾楓珠さんとの共演はいかがでしたか?

お二人ともちょっと変な……あ、いや(笑)、独特なタイプの方なんです。天音さんとはこれまで何度もご一緒しているんですが、なぜか私に思いを寄せていただく役柄が多く(笑)、天音さん自ら「オレ、“松本穂香片思い俳優”じゃん!」とネタにされているくらいご縁のある方なんですよね。お二人とも若いのに妙にドシッとされているところがあって。至るところにアドリブを仕掛けてくるので、私もそこに引っ張ってもらう感じで楽しかったです。

――例えばどんなアドリブが……?

コピー機のメンテナンス担当者としてオフィスにやってきた元同級生の柴本(神尾さん)とあかねが久しぶりに再会するシーンがあるんですが、その様子を見ながら「この二人はいったいどんな関係なんだ?」と勘ぐって焦っているあかねの後輩の竹野(天音さん)を尻目に、神尾さんが去り際、あかねに向かってピースをして帰っていったんですよ。あえてやっているんだと思うんですけど、竹野にしてみればそんなことされたら絶妙に腹が立ちますよね(笑)。 それに対して天音さんも即座にリアクションされていて、監督もしっかりそれを押さえていたんです。咄嗟のアドリブが後から結構じわじわ効いてくるので、「すごいなぁ」と思って見ていました。台本で読んだときの倍以上、それぞれのキャラクター像が濃くなっていたのにも驚かされました。

  • (C)「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」製作委員会

――あかねの言動が、松本さんご自身とカブるところもありますか?

あかねに限らず、家でふと一人で思い出し笑いをしたり、あとから自分の発言が恥ずかしくなってジタバタ身悶えたりすることって、きっと誰もが経験していることだと思うんです。現実世界ではカメラが回っていないだけで、きっと家ではあかねみたいに、みんな無防備な恥ずかしい姿をいっぱい晒しているはず。もちろん、私自身にもそういう経験はありますよ。

――松本さんは「お笑い」がお好きだそうですが、いまハマっている芸人さんは?

最近は天音さんから教えてもらった「スクールゾーン」さんにハマっています。「あぁ、こういう人いるよなぁ」って思えるような、シチュエーションコントが結構好きなんですよね。

――テレビアニメで刃牙の父・範馬勇次郎を演じる大塚明夫さんが、ドラマに登場する『グラップラー刃牙』の原作者・板垣恵介先生の声を担当されているとか。

そうなんです! ドラマの中には、あかねの推しキャラとして2次元の克巳も登場するのですが、その声もアニメの愚地克巳役として知られる声優の川原慶久さんが担当されていて。完全なるコラボ作品なので、「刃牙」のファンの方々にも必ず喜んでいただけると思います。

  • (C)「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」製作委員会

――ちなみに、松本さんご自身が気になる『グラップラー刃牙』のキャラクターは?

あかね目線でみると克巳ですが、見た目的にはドイルが好みですかね。あかねのように二次元の世界に夢中になっている人からすると、現実世界の方がよっぽど闘わなければいけないことがたくさんあるんですよね。現実世界は漫画と違って自分の思い通りにいかないし、世の中には自分と合う人ばかりとは限らない。まさに闘いは、まだまだ続いていくんです。

――今回の作品や役柄を通じて新たに発見したことは?

みんなが一丸となって作り上げていく感覚が強い現場だったという印象があります。衣裳や美術に助けられる場面もたくさんありました。6ページぐらいあるセリフを延々と1人でしゃべり続けなきゃいけなかったりもして、かなりしんどい場面もあったのですが、誰もが楽しみながら撮っていた現場だったので、プレッシャーを感じすぎることもなく、すべてが絶妙な塩梅で進んでいきました。この作品のおかげで、かなり鍛えられたなぁと思いますね。

――今回のあかね役もそうですが、松本さんはCMやコントでコミカルなお芝居も披露されるなど、ますます表現の幅を広げられている印象があります。昨年は「2020年の銀杏BOYZ」で深夜の渋谷の街を峯田和伸さんと散策するなど、斬新な企画にも挑戦されていて驚きました。

コントは好きなので、挑戦させてもらえる機会があればぜひやりたいです。「2020年の銀杏BOYZ」は、私の事務所のマネージャーさんが日頃から面白いことが好きで実現した企画でもあるんです(笑)。私自身出演してすごく楽しかったですし、「こんな世界があるんだなぁ」といろんな発見がありました。峯田さんとはNHKの朝ドラ『ひよっこ』で共演して以来、「銀杏BOYZ」のグッズの撮影にお声掛けいただいたりもしていたので、普段の自分のままいれることができました。ドラマや映画の監督さんもそうですが、ゼロからものづくりをされている方たちは、みなさんすごく気持ちがアツいですし、しっかりした考えを持っていらっしゃる。そういう方たちと一緒にものづくりの現場を共有させてもらうたび、受け取れるものがすごく多いんです。これからもいろんなジャンルの方との繋がりを大切に、何ごとも楽しみながら取り組んでいけたらいいなと思っています。

――では、最後に改めてドラマの見どころをお願いします!

挌闘漫画の『グラップラー刃牙』がお好きな方も、全く知らないという方も、どちらの方にも楽しんでいただけるドラマになっていると思います。仕事で疲れて帰ってきた後に観るのにちょうどいい、頭を空っぽにした状態でも心地よく感じられるような、観終わったあとニヤッとできるドラマになっていると思うので、ぜひ楽しんでいただけたらうれしいです。