先ごろ、GPTWジャパンが、日本における「働きがいのある会社」若手ランキング(対象は34歳以下)、中規模部門(100~999人)ランキング1位企業のコンカーの取り組みなどを発表。本稿では、その内容の一部をお伝えします。
「仕事に行くことが楽しみ」という若手が突出している
まずは、同社の代表取締役社長 荒川陽子さんが「働きがいのある会社」(若手ランキング編)の特長について解説し、若手ランキングの上位ランクイン企業の若手には、次の「3つの傾向」があると指摘しました。
1.企業に「歓迎されている」という実感値が高く、「能力開発の機会」も豊富にあること。
2.「やりがい」の実感が高いこと。
3.「仕事へ行くことが楽しみだ」という実感が突出して高いこと。
特に、ランクイン企業の「若手の歓迎」では、内定者の頃から人事担当者とコミュニケーションが図れるように自社でSNSを開設していたり、「能力開発」では、朝(または晩)にトレーニングを行い、それを上司がサポートしながら、成果を振り返る時間を設けたりするなど、具体的な施策が紹介されました。
従業員の経営層への信頼を左右したのは「従業員への尊重」
続いて、2021年人的資本経営に関する調査結果では、コロナ禍で働く人々の会社への帰属意識や経営者への信頼などがどのように変わったのかについて、荒川さんから説明がありました。
その中で一番興味深かったのは、「従業員の『経営者への信頼』を最も左右したのが『従業員への尊重』」という点です。
荒川さんいわく、「経営層への信頼が上がった理由も下がった理由も、一番多かったのが『従業員への尊重』という項目でした。他の設問で、会社への帰属意識が高まった要因として最も多かったのが『テレワーク中でも働きやすい環境や制度の充実』とあったように、こうした従業員を『尊重』した支援が経営層への『信頼』につながっているのだと思います」。
コミュニケーション不足の職場に有効な「タコティー」「タコめぐり」とは?
最後に、荒川さんと、2021年版「働きがいのある会社」若手ランキングでの中規模部門1位のコンカー代表取締役社長の三村さんとの対談内容を紹介します。
4年間で「働きがいのある会社」ランキング、10部門のうち8部門で1位を受賞しているコンカー。「これは『働きがいこそ最大の経営戦略』と考え、従業員の働きがいに着目して経営してきたことが評価につながった結果だと思っています」と、三村さんは語ります。
そのうえで、同社の働きがいにつながる具体的な取り組みが紹介されました。
「『従業員への尊重』というテーマで御社が取り組んできたことはどんなことですか」という荒川さんからの質問を受け、三村さんが挙げたのは『情報の開示』と『権限移譲』でした。
「『情報の開示』では、単に経営情報を開示するだけでなく、今のビジョン実現に向けて、どのような戦略で、どんな課題や制約条件があるのかを詳細に共有しています。『権限移譲』では、上に立つものがそのポジションでしかできないことに専念し、その他の業務はメンバーに権限を与え、任せています」とのこと。
これによって、従業員は自律的に行動するだけでなく、企業へのロイヤリティが高まり、会社の競争力を上げることにもつながるようです。
また、荒川さんから「テレワークによるコミュニケーション不足や、従業員同士の連帯感の欠如への対策としてどのようなことに取り組んでいるのでしょうか」という質問に対して「『タコティー』『タコめぐり』と呼ばれる制度を行っています」と話す三村さん。
ユニークなネーミングですが、どのような制度なのでしょうか。
「『タコティー』は、人脈の少ない若手が他部門の管理職とつながりが持てるようにミーティングの機会を設けています。そこでは、職場の人間関係や今後のキャリアなど……直属の上司に相談できないようなことを自由に話せます」「『タコめぐり』は、『タコティー』のように他部門の管理職に直接声をかけられない引っ込み思案な新入社員のために、1時間に3人の管理職とローテーションで話ができる制度のことだと説明します。
「気の合う管理職がいれば、その後はその上司とじっくり深い相談も行えます」(三村さん)
従来の外資系のIT企業では10%で好業績と言われている日本の事業比率を、コンカーでは20%超のシェアを獲得。「これは、人(従業員)にコミットした経営にこだわっていた成果です」と、三村さんは最後に締めくくりました
働きやすさだけでなく、働きがいのある環境なのかどうかはビジネスパーソンにとっても、企業を選ぶ上で1つの選択基準になるのではないでしょうか。