シーズ(Seeds)という意味の言葉ですが、マーケティングでは「商品やサービス開発の基盤となる技術」などの意味で使われます。ニーズと同じく重視される考え方なので、その本質をしっかり理解しておきましょう。

本記事ではシーズの意味や、「シーズ志向」と「ニーズ志向」の違いなどについて、くわしくご紹介します。

  • シーズの意味とは?

    シーズの意味について解説します

シーズの意味とは?

シーズは、マーケティングでは「商品やサービス開発の基盤になる技術やノウハウ」を指す言葉です。ここでは、混同されやすいニーズとウォンツの違いについて解説します。

シーズとニーズとの違い

シーズは生産者視点の考え方です。技術やノウハウを駆使した商品は市場を大きく変える可能性もありますが、消費者に受け入れられるとは限りません。

一方、ニーズは「必要」や「需要」「要求」といった意味がある消費者視点の考え方です。ニーズは消費者の年齢や性別、商品の利用シーンなどによっても変化します。

ニーズとウォンツとの違い

ニーズと合わせてよく用いられる言葉「ウォンツ」は「具体的な商品やサービス」を指します。「休日は家でゆっくりしたい」という漠然とした欲求はニーズ、「マッサージ機能が付いたソファが欲しい」といった具体的な欲求はウォンツです。

ニーズ ウォンツ
・ときに無自覚
・抽象的な欲求
・ニーズを満たす商品やサービスがあるとは限らない
・購買行動から遠い
・常に自覚
・具体的な欲求
・既存の商品やサービスが前提
・購買行動に近い

消費者はウォンツで商品を決めるわけではありません。マッサージが付いたソファはさまざまですが、特定の商品を選ぶ際にはデザインや価格、サイズなどを比較したうえで、最終的に「〇〇社のマッサージ付きソファを購入する」と決めるはずです。これを「デマンド(需要)」と呼びます。

ニーズからデマンドまでの流れを知っておくと、シーズに対する理解も深まるでしょう。

  • シーズの意味とは?

    ニーズからデマンドまでの流れ

「シーズ志向」と「ニーズ志向」の違い

消費者視点で開発されるニーズ志向の製品は需要が高いため、すでに類似品があっても他社より高機能で価格が安ければ消費者に受け入れられます。例えば、衣類や車、スマートフォンなどはニーズ志向の商品です。

一方、シーズ志向の商品は生産者視点で新しさを提供します。シーズ志向の商品の代表的な例として「iPhone」が挙げられます。 Apple社の技術力で開発されたiPhoneは革新的な商品として世に送り出されただけではなく、活用シーンの提案を含めた新しい市場を創出。シーズ志向から結果として消費者のニーズを満たしたのです。

  • 「シーズ志向」と「ニーズ志向」の違い

    シーズ志向の製品は、新しい価値や市場を創出します

「シーズ志向」のメリット・デメリット

シーズ志向の商品やサービスには、それぞれメリットとデメリットがあります。くわしくみていきましょう。

シーズ志向のメリット

シーズ志向で開発された製品は独自の価値があるため、消費者のニーズに合致すれば市場を独占できる可能性があります。また参入企業が少なければ、価格競争に巻き込まれることもない点もメリットです。

シーズ志向のデメリット

新しい価値を提供できたとしても、消費者のニーズと合致しなければ市場に評価されません。結果として時間と開発費が無駄になるケースもあります。シーズ志向の製品は「ハイリスク・ハイリターンである」といえるでしょう。

「ニーズ志向」のメリットとデメリット

ニーズ志向のメリットとデメリットを確認していきましょう。

ニーズ志向のメリット

消費者の顕在欲求に応えるニーズ志向の製品には、一定の収益が見込めるというメリットがあります。類似の既存製品が発売されていても、その製品を超える機能や価格の安さをアピールできれば市場に受け入れられるでしょう。

ニーズ志向のデメリット

類似商品やサービスが多いため、市場の独占は困難です。成熟しきっている市場では他社との差別化だけではなく、アプローチする方法を変えるなどの工夫も求められます。

  • 「シーズ志向」と「ニーズ志向」のメリット・デメリット

    シーズ志向とニーズ志向には、それぞれメリットとデメリットがあります

ニーズ志向を意識したマーケティングが重要

多様化する消費者のニーズを満たすためには、シーズ志向で商品を開発する際にもニーズを意識したマーケティングを展開する必要があります。

過去の成功例でいえば、ソニーの「ウォークマン」が挙げられるでしょう。「気軽に外で音楽を聴きたい」という消費者のニーズとソニーの技術力が実現させた大ヒット商品です。

消費者のニーズを把握できても、それを実現できる技術力がなければ商品開発はできません。逆に、どんなに高い技術力があっても、ニーズと合致しなければヒットにはつながりないのです。

そのため、シーズ志向は「企業が持っている強みと、消費者のニーズをすり合わせていく考え方」と解釈することもできます。シーズ志向は起点が企業側にあるというだけで、商品開発段階における市場調査の重要性はニーズ志向と大差ないのです。

  • ニーズ志向を意識したマーケティングが重要

    ニーズ志向を意識したマーケティングが重要

シーズ志向よりもニーズ志向を意識する方が効率的

シーズとは、マーケティングにおいて「商品やサービス開発の素となる技術」などを指す言葉です。「シーズ志向」と「ニーズ志向」にはそれぞれにメリットとデメリットがあります。しかし、価値観が多様化している近年では、ニーズ志向を意識したマーケティングが重要です。

シーズ志向とニーズ志向の違いや意味をしっかり理解して、ビジネスシーンで役に立てていきましょう。