みなさんは資産運用を始めていますか? 金融庁の試算による「老後2000万円問題」が報道されて以降、人々の投資への関心は高まり、若いうちから投資を始める人が非常に増えてきています。

中でも初心者が取り組みやすい「つみたて投資」を軸に、ボーナスを上手に投資に活用する方法について解説したいと思います。

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つみたて投資のメリットとは

投資を始めるならまずはコツコツつみたて投資からと思う方も少なくないかもしれませんが、実際につみたて投資の利用実態はどうなっているのでしょうか。

  • 「2020年度投資信託に関するアンケート調査」より筆者作成

投資信託協会のデータを見ると、急速につみたて投資が伸びを見せていることがわかります。現在投資信託を保有している層を対象としたデータによれば、2019年と比べると2020年ではつみたて投資を行っている比率が全体で10.6%ポイントの増加、2018年と比べると18.1%ポイントの増加と大きく利用が進んでいます。

背景としては「老後2000万円問題」をきっかけに将来への投資の重要性を考えるようになった人が増えたこと、2018年から始まったつみたてNISA制度を促進する仕組みが業界全体で多く出てきていることが挙げられるでしょう。

また、投資信託保有者のつみたてNISA利用割合を年代別で見てみると、2019年と比較すると2020年では20代~40代を中心に高い伸び率を記録しており、若い世代を中心に節税メリットも意識したつみたて投資の活用が広がっていることがわかります。

  • 「2020年度投資信託に関するアンケート調査」より筆者作成

つみたて投資のメリットはなんといっても投資をする上でいつ投資をしたらいいかという悩みを解決できる点だと思います。月々いくら投資をすると決めてしまえば、自動的に毎月決められた日に投資信託など商品の買い付けが行われ、保有額を増やすことができます。

また定額で購入することで、相場が上がっている時は単価を高く量を少なく、相場が下がっている時は単価を安く量を多く買うことができます。その結果、リスク分散の効果が得られるのです。

このように、購入時のアクションを手軽に、そしてリスク抑制の効果も得られるつみたて投資は初心者にとって始めやすい手法といえるでしょう。

ボーナス時に運用額を増額すると、資産はどれくらい増える?

基本的には毎月定額を積み立てるつみたて投資ですが、ボーナスが支給された分、1年に2回、投資額を増やすという手法をとると30年後の資産はどれだけ増えていくのでしょうか。

今回は「毎月3万円を貯金する」「毎月3万円をつみたて投資する」「毎月3万円のつみたてに加え、年に2回ボーナス時に合計20万円を追加投資する」の3つのパターンを比較してみました(※ボーナス時は年間10万円ずつを2回で計20万円投資するとします。また年間の期待利回りは5%で算出)。

下記のシミュレーションを見てみると、投資と貯金の違いも去ることながら、ボーナス時に追加投資をした場合の効果の大きさが見て取れます。

  • 筆者が作成

あくまでシミュレーションではあるものの、まず長く続けるほど複利の効果で資産の上昇が加速していることがわかります。目標額を2,000万円と仮定すると、この試算では毎月3万円のつみたて投資の場合は約28年、ボーナス20万円分を上乗せた場合は約21年で目標を達成できる可能性があります。2,000万円の目標の観点ではボーナス投資を活用すれば約7年早く達成できることになります。

また30年投資した場合の最終的な資産額で比較すると、3万円貯金し続けた場合は1,080万円、3万円つみたてした場合は2,392万円、ボーナス投資を組み合わせた場合は3,721万円となり、つみたて投資と並行した定期的なボーナスによる追加運用は資産形成を大きくサポートすることがわかります、

20代は余剰資金を自己投資に回す選択肢も

シミュレーションによれば、社会人となる20代前半から毎月3万円のつみたて投資をすれば50代を迎えるタイミングで一般的に老後に必要とされる2,000万円を貯めることができる可能性があることがわかりました。

しかし裏を返せば、60代までに2000万円を用意すればいいと考えると、20代は自分のためにお金を使い、30代から本格的に資産形成を開始するというライフプランであっても、十分に間に合う可能性はあるのです。

早いうちから老後に備えることは大事であり、早く始めるほどより大きな資産額を備える可能性も高まりますが、一方で将来に備えてばかりではなく、消費にお金を回してその時にしかできないことを楽しむことも大事といえるでしょう。

また若いうちはスキルアップなど自分に投資をすることで、一時的には支出となっても総合的に見ると稼ぐ力が上がってリターンがコストを上回ることも十分に考えられます。

資産運用の重要性は頭に入れつつ、消費で生活を豊かにすること、自分へ投資をしてスキルを向上させることなど、さまざまな可能性を考慮していくことが最大の将来への備えとなるかもしれません。

Finatextグループ アナリスト 菅原良介

1997年生まれ、Z世代のアナリスト。早稲田大学 政治経済学部 経済学科に在学中は「株式投資サークルForward」の代表を務め、大学生対抗IRプレゼンコンテストで準優勝を獲得。2年間の長期インターンを経て、2020年Finatextに入社。現在はFinatextグループで展開される投資・証券サービスのディレクターを担当。コミュニティ型株取引アプリSTREAM内で開催されるイベントのモデレーターも務める。